【意味と正体】「他人の不幸は蜜の味」は心理学でどう説明される?

目次

この言葉に対応する心理学用語が、ドイツ語のシャーデンフロイデ(Schadenfreude)だ。

「Schaden」は損害や災難、「Freude」は喜びを意味する。つまり、他人に起きた不幸や失敗を見て、第三者である自分が喜びを感じる心理を指している。

日本語では、次のような表現が近い。

- いい気味:相手の失敗を当然の報いだと感じる。
- ざまあみろ:相手の不幸を積極的に喜ぶ。
- メシウマ:他人の不幸によって自分の気分がよくなることを表すネットスラング。
- 幸災楽禍:他人の災難を喜び、他人の不幸を楽しむことを意味する四字熟語。

ただし、これらは完全に同じ意味ではない。シャーデンフロイデは、必ずしも相手を嫌っている場合だけに発生するわけではなく、本人が意識していない段階でも生じることがある。

嫌いな相手だけに感じる感情ではない

他人の不幸は蜜の味

例えば、次のような場面を考えてみたい。

- いつも自慢していた同僚が仕事で失敗した。
- 成績のよかった同級生が試験で不合格になった。
- SNSで華やかな生活を見せていた人がトラブルに遭った。
- 他人を見下していた有名人が、自分の発言によって批判された。

こうした出来事に対して、同情する一方で、少しだけ安心したり、満足したりすることがある。

ここで重要なのは、相手の不幸そのものよりも、自分と相手の立場の変化に喜びを感じている場合があるという点だ。

2008年に『感情心理学研究』に掲載された澤田匡人氏の研究では、日本人大学生201人を対象に、他者の不幸に対するシャーデンフロイデと共感の関係が検討された。対象者より優位に見える人物が不幸になる場面では、この感情が強まる傾向も報告されている。

【心理学で解明】なぜ人は他人の不幸を喜んでしまうのか?

他人の不幸は蜜の味

他人の不幸を喜ぶ心理には、大きく分けて3つの仕組みがある。

1. 嫉妬や劣等感が一時的に解消される

他人の不幸は蜜の味

最も分かりやすいのが、嫉妬に由来する心理だ。

自分より成功している人、容姿や能力に恵まれている人、周囲から高く評価されている人を見ると、無意識に自分と比較してしまうことがある。

相手の成功が自分の劣等感を刺激している場合、その人が失敗すると比較による心理的な負担が小さくなる。

例えば、同じ職場で働く同僚が昇進し続けていると、自分だけが取り残されたような感覚になることがある。その同僚が仕事で失敗したとき、安心感や満足感を覚えるのは、相手の不幸によって自分の立場が相対的に改善したように感じるためだ。

ただし、相手の実際の立場が改善したわけではない。変化したのは自分の心理的な評価である。

2. 「自業自得」という正義感が働く

もう一つの重要な要素が、公平性に対する意識だ。

他人の失敗を見て喜ぶ場合、必ずしも嫉妬しているとは限らない。

例えば、他人を傷つけてきた人物が、自分の行動によって信用を失った場合、「当然の結果だ」と感じることがある。

このとき、喜びの背景にあるのは、社会的な不公平が解消されたという感覚だ。

2026年8月29日に公開されたSpringer Natureの研究レビューでは、シャーデンフロイデを生み出す認知的な評価として、次の3つが整理されている。

1. 正義に基づく評価: 相手はその結果を受けるに値すると考える。
2. 社会的比較に基づく評価: 自分より優位だった相手との格差が縮まったと感じる。
3. 集団アイデンティティーに基づく評価: 自分とは異なる集団に属する相手の不幸を喜ぶ。

この3つは独立しているとは限らず、複数が同時に作用することもある。

3. 自分が所属する集団を守ろうとする

スポーツや芸能、政治などの分野では、個人同士の比較だけでなく、集団同士の対立も関係する。

例えば、応援しているスポーツチームのライバルが敗北した場合、自分のチームが勝ったわけではなくても、うれしく感じることがある。

これは、相手の失敗を自分の所属集団の利益と結び付けて捉える心理に関係している。

重要なのは、相手が個人的に嫌いかどうかだけではない。自分がどの集団に属していると感じているかによっても、感情は変わる。

こうした仕組みは、ネット上のファン同士の対立や、特定の著名人をめぐる炎上にも関係してくる。

【2026年最新情報】シャーデンフロイデの研究と重要な発見を比較

2026年11月時点で注目したいのは、他人の不幸を喜ぶ心理が、単なる個人の感情としてだけでなく、SNS上の行動や職場の人間関係と結び付けて研究されていることだ。

特に2026年には、SNSの「いいね」機能の使われ方を検証した研究が公開されている。

主要な研究と発見の一覧

時期 研究・調査 主な内容と分かったこと
2008年 日本人大学生201人を対象とした研究 嫉妬や自尊感情と他人の不幸を喜ぶ心理の関係を検証
2022年 9つの心理実験 合計1,827人を対象に、社会的比較と嫉妬、同情、喜びの関係を分析
2024年 SNS上の顧客間コミュニケーション研究 他人の苦情に対する嘲笑的な反応が、周囲の人の同情や購買意向に影響することを検証
2026年7月 SNSの否定的な「いいね」に関する研究 ライバル集団の不幸を喜ぶ感情と、否定的な投稿への「いいね」の関係を4つの研究で検証
2026年8月 職場のシャーデンフロイデに関する研究レビュー 正義感、社会的比較、集団意識などから感情の発生過程を整理

2026年7月の研究で注目された「悪意のあるいいね」

2026年の研究で特に興味深いのが、Devin C. Lunt氏らによる論文だ。

研究タイトルは「Your pain, my gain: Schadenfreude as a driving mechanism of online 'liking' behavior」。2026年7月9日にオンライン公開され、学術誌『Acta Psychologica』の2026年8月号に掲載された。

この研究では、SNSの「いいね」が必ずしも投稿者への好意や応援を意味しないという現象に注目した。

具体的には、スポーツチームのライバルが不幸な結果に直面した投稿に対して、あえて「いいね」を押す行動が検証されている。

研究は4つの段階で構成されている。

- 研究1:スポーツチームの否定的な投稿に対する「いいね」の記録を分析。5年間にわたる行動の増加を示す初期的な証拠を提示した。
- 研究2:否定的な結果への「いいね」が、他人の不幸を喜ぶ感情によって動機付けられているかを調査した。
- 研究3:相手チームの不幸や負傷などに対するシャーデンフロイデと、否定的な「いいね」の関連を定量的に検証した。
- 研究4:相手から同じような「いいね」を受けて不快に感じた人が、自分も同様の行動を取る傾向などを検討した。

研究者らは、相手に不快感を与える意図で行動する人がいることも報告している。

この研究が示唆するのは、SNSの反応ボタンが、単なる好意の表明だけでなく、対立相手への心理的な攻撃手段としても使われる可能性だ。

ただし、対象は主にスポーツチームなどのライバル関係であり、日本のSNS利用者全体に同じ傾向が当てはまると証明したものではない。

2026年8月の研究レビューが示した職場の問題

もう一つ注目したいのが、D. M. Sachinthanee Dissanayake氏、Mario Fernando氏、Kumar Biswas氏による研究だ。

2026年8月29日に『Management Review Quarterly』で公開された論文は、職場におけるシャーデンフロイデを体系的に整理している。

職場では、同僚の昇進、評価、業績、上司との関係など、他者と自分を比較する機会が多い。

そのため、嫌いな同僚の失敗を喜ぶ心理には、個人的な嫉妬だけでなく、公平性への評価や集団内の立場などが関係する。

この論文は既存研究を統合した概念的なレビューであり、新たな大規模実験で因果関係を証明したものではない。しかし、職場の人間関係を理解するための整理として重要な意味を持つ。

【SNS炎上とネットの反応】なぜ他人の不幸は拡散されるのか?

「他人の不幸は蜜の味」という心理が目立つ場所の一つが、SNSだ。

芸能人の失言、企業の不祥事、スポーツ選手の失敗、インフルエンサーのトラブルなど、誰かの評判が急落する出来事が起きると、批判だけでなく、嘲笑や皮肉を含む反応が集まることがある。

ここには、いくつかの心理的な要因が存在する。

炎上の背景には正義感と娯楽性が混在する

炎上への参加者が全員、他人の不幸を楽しんでいるわけではない。

実際に不正を問題視し、被害者の救済や再発防止を求めている人もいる。

一方で、問題を起こした人物が社会的な信用を失う様子を楽しんだり、失敗を面白おかしく取り上げたりする人もいる。

この2つは、外見上は似た批判投稿でも、目的が異なる。

反応の種類 主な心理・目的
事実に基づく批判 問題の改善や説明責任を求める
被害者への共感 被害の回復や支援を望む
皮肉や嘲笑 相手の失敗そのものを楽しむ
集団的な攻撃 自分の所属集団を守り、対立相手を攻撃する
情報の検証 噂や誤情報の真偽を確かめる

ここで注意したいのが、批判の内容が正しいかどうかと、批判する側の感情が健全かどうかは別問題だということだ。

正当な問題提起の中にも、過剰な嘲笑が混ざることはある。

ネットの反応を研究した2024〜2025年の調査

Todd J. Bacile氏らによる研究「Schadenfreude and Sympathy: Observer Reactions to Malicious Joy During Social Media Service Recovery」も興味深い。

この論文は2024年3月にオンライン公開され、『Journal of Interactive Marketing』第60巻第1号に掲載された。

企業のSNSアカウントに寄せられた苦情に対し、第三者が嘲笑的なコメントを投稿する状況を研究したものだ。

3つの研究を通じて、苦情を申し立てた人への嘲笑を周囲の観察者がどう受け止めるかを検証している。

特に注目されるのは、嘲笑する側が単なる荒らしなのか、それとも企業の熱心な支持者なのかによって、観察者の同情や購買意向に異なる影響が生じる点だ。

つまり、他人の不幸を喜ぶ側は気分がよくても、それを見ている第三者は必ずしも好意的に受け止めない。

ネットの反応を見るときに注意したい3つのこと

1. 投稿数と世論を混同しない。 目立つ批判が多数派の意見とは限らない。
2. 批判と嘲笑を区別する。 不正への指摘と、個人の不幸を娯楽として消費する行為は異なる。
3. 拡散された情報の出所を確認する。 切り抜きや伝聞だけでは、炎上の経緯を正確に理解できない。

炎上の規模が大きく見えるほど、社会全体がその人物を嫌っているように錯覚しやすい。しかし、SNS上の可視的な反応だけで世論全体を判断することはできない。

【言葉の由来と噂の真相】実は古くからある日本のことわざなのか?

「他人の不幸は蜜の味」は、昔から日本に伝わることわざだと思われがちだ。

しかし、言葉の歴史を調べると、少し異なる背景が見えてくる。

元になったとされる表現は「隣の貧乏鴨の味」

日本には、以前から「隣の貧乏鴨の味」や「隣の貧乏は雁の味」といった表現が存在する。

隣人の貧しさが、自分にとってはおいしいもののように感じられるという、人間の利己的な心理を表した言い回しだ。

ただし、これらの表現と現在の「他人の不幸は蜜の味」が、同じ歴史的な経路で生まれたと確定しているわけではない。

福岡大学の金山正道氏による日本とドイツのことわざに関する論考では、現在の表現が広く知られるようになった背景として、1994年のテレビドラマの影響が考察されている。

1994年のTBSドラマが認知度を高めた


TBS系列・1994年1月11日〜3月22日
全11話。神山由美子脚本。大竹しのぶ、清水美砂、相楽晴子、泉ピン子、高橋克典らが出演した作品。

TBSの公式番組カタログによると、このドラマは漫画家として再起を目指す女性を中心に、人間関係や社会的な制約を描いた作品だった。

他人の不幸を単純に喜ぶだけの物語ではなく、人間関係の複雑さや、他者の問題を通じて自分の境遇を見つめる要素も含んでいる。

福岡大学の論考では、このドラマのタイトルが一般に知られるようになった大きな要因の一つだと推察されている。

よくある噂と確認できる事実

よくある認識・噂 確認できる事実
昔から存在する日本の代表的なことわざ 古い類似表現はあるが、現在の表現の成立時期は明確ではない
ドイツ語から直接翻訳された言葉 シャーデンフロイデは心理的な意味が近いが、直接の翻訳経路は確認されていない
1994年のドラマが言葉を生み出した ドラマのタイトルとして使われたことは確認できる。発祥そのものと断定することはできない
他人の不幸を喜ぶ人は必ず性格が悪い 心理学的には嫉妬、社会的比較、公平性など複数の要因が関係する

国立国会図書館のレファレンス協同データベースにも、この表現の由来を調べた2014年の調査事例が掲載されている。そこでは、ことわざ辞典などを調べても確実な由来を特定できなかった経緯が記録されている。

したがって、シャーデンフロイデという心理学用語と、日本語表現の歴史的な起源は分けて理解する必要がある。

【プロの結論】他人の不幸を喜ぶ心理とどう向き合うべきか?

他人の不幸を見て、一瞬うれしいと感じてしまうこと自体は、人間の心理として研究されている現象だ。

問題になるのは、その感情をどう扱うかである。

ここでは、心理学的な知見から、日常生活で意識したい判断基準を整理する。

1. 自分が何に反応しているのかを見極める

他人の失敗がうれしいと感じたとき、次の点を考えてみたい。

- 相手が以前から自分より優れていると感じていたのか。
- 相手の行動が不公平だと思っていたのか。
- 自分が所属する集団のライバルだったのか。
- 自分自身の不満や不安が強くなっていたのか。

こうした背景を理解すると、他人の不幸そのものではなく、自分の内側にある不満や比較意識が感情を生み出していたことに気付く場合がある。

2. 正義感を理由に過剰な攻撃をしない

悪いことをした人物が批判されるのは、社会的な責任を問ううえで必要な場合もある。

しかし、責任を追及することと、相手の生活や人格を徹底的に攻撃することは違う。

例えば、企業の不祥事であれば、問題の内容、被害の規模、企業の説明、再発防止策などを検証することに意味がある。

一方、関係者の家族や無関係な人々まで巻き込んで嘲笑する行為は、問題解決から遠ざかってしまう。

3. SNSでは感情的な反応をすぐに拡散しない

炎上を目にしたとき、誰かを批判する投稿に共感して、勢いで拡散したくなることもある。

その際には、次の判断基準が役立つ。

- 情報の発信元は信頼できるか。
- 投稿日時や前後の文脈は確認できるか。
- 本人や企業の公式説明はあるか。
- 批判の対象となっている人物に直接関係する情報か。
- 拡散することで無関係な人に被害が及ばないか。

この5点を確認するだけでも、根拠のない噂や過剰な炎上への加担を減らせる。

4. 他人との比較から自分の価値を判断しない

最も大切なのは、他人が失敗したからといって、自分が成功したわけではないという事実だ。

他人の転落によって安心感を得ることはできても、それは自分自身の能力や生活の改善とは異なる。

2022年の9つの実験、合計1,827人を対象とした研究でも、社会的比較によって嫉妬やシャーデンフロイデが変化し、それらの感情が他者への協力的な行動とも関連することが示されている。

他人の成功を自分の敗北と考えず、他人の失敗を自分の勝利と考えないこと。それが、この心理に振り回されないための基本的な考え方だ。

【他人の不幸は蜜の味】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:他人の不幸は蜜の味とはどういう意味ですか?

他人の失敗や不幸を見て、喜びや満足感を覚える心理を表す言葉だ。心理学ではシャーデンフロイデと呼ばれ、嫉妬や社会的比較、公平性への意識などが関係している。

Q2:他人の不幸は蜜の味はドイツ語が由来ですか?

心理学的に対応する言葉はドイツ語のシャーデンフロイデだが、日本語表現がドイツ語から直接翻訳されたという確実な証拠はない。日本には「隣の貧乏鴨の味」という類似表現も存在する。

Q3:他人の不幸を喜ぶ人は性格が悪いのでしょうか?

必ずしもそうとは限らない。嫉妬や劣等感、公平性への意識など、人間に共通する心理的な仕組みが関係する。ただし、その感情を理由に他人を傷つけたり、嫌がらせをしたりする行動は別の問題だ。

Q4:他人の不幸は蜜の味とSNSの炎上には関係がありますか?

関係がある。2026年の研究では、ライバル集団の不幸を喜ぶ心理と、否定的なSNS投稿への「いいね」の関連が検証されている。ただし、すべての批判や炎上がシャーデンフロイデによるものではない。

Q5:シャーデンフロイデを感じなくなる方法はありますか?

感情を無理に否定するより、自分がなぜその相手と比較しているのか、何を不公平だと感じているのかを考えることが有効だ。SNSでの過剰な反応を控え、自分自身の目標に意識を向けることも役立つ。

まとめ:他人の不幸は蜜の味の正体と2026年以降の注目点

「他人の不幸は蜜の味」は、人間の嫉妬や比較意識、公平性への欲求、集団心理などが絡み合って生まれる感情を表現している。

心理学ではシャーデンフロイデとして研究されており、2026年にはSNS上の否定的な「いいね」や職場の人間関係に関する新しい研究成果も公表された。

今回の詳細まとめで押さえておきたいのは、次の3点だ。

- 他人の不幸を喜ぶ感情は、人間の社会的比較や心理的な自己評価と深く関係している。
- SNSの炎上では、正当な批判と他人の失敗を楽しむ感情が混在することがある。
- 感情が生まれることと、その感情を理由に他人を攻撃することは明確に区別すべきだ。

今後もSNSの利用形態やオンラインコミュニティーの変化に伴い、シャーデンフロイデに関する研究は重要なテーマになっていくと考えられる。

他人の不幸に目を奪われるより、自分の生活や目標に目を向ける。そんな視点を持つことが、この心理と健全に付き合うための第一歩になる。


主な参考資料:TBS公式番組カタログ、国立国会図書館レファレンス協同データベース、福岡大学研究論文『日本とドイツのことわざに関する諸種のはたらきについて』、感情心理学研究、Journal of Personality and Social Psychology、Acta Psychologica(2026年)、Management Review Quarterly(2026年)、Journal of Interactive Marketing。