【芸能人の公表情報】網膜色素変性症の噂と事実はどう違う?
「網膜色素変性症の芸能人」と検索すると、歌手や俳優、テレビ出演者などの名前が関連して表示されることがあります。しかし、目の病気には似た名称のものが複数あり、本人が公表した病名と検索上の関連情報が一致しないケースもあります。
大切なのは、視覚障害があることと、網膜色素変性症と診断されていることを同じ意味で扱わないことです。
森仁志|白杖ダンサーとして活動するパフォーマー

芸能・表現活動に関連する人物としては、
森さんは網膜色素変性症を公表している白杖ダンサーです。普段は薬剤師として働きながら、白杖を使ったブレイクダンスを通じて障害への理解を広げる活動をしています。
主な出演歴には、東京2020パラリンピック閉会式や2021年のNHK紅白歌合戦「マツケンサンバII」への出演などがあります。俳優や歌手とは異なる立場ですが、視覚障害と表現活動を結びつけた著名な実践者です。
和田アキ子の目の病気は網膜色素変性症なのか?

病名の取り違えに注意したい例が、歌手・タレントの
2023年12月、和田さんはテレビ番組で右目の視力が大きく低下していることや、治療を受けていることを明かしました。その際に報じられた病名は網膜色素上皮裂孔です。
また、2020年には黄斑変性症の手術を受けたことを公表し、2021年のテレビ出演でも同じ病気について説明しています。これらは網膜色素変性症とは異なる病気です。
「網膜色素上皮裂孔」と「網膜色素変性症」は、名称に共通する言葉があるため混同されやすいものの、同一の疾患ではありません。和田さんを網膜色素変性症の公表者として紹介するのは正確ではありません。
噂と確認できる事実の比較

| 名前・情報 | 確認できる内容 | 判定 |
|---|---|---|
| 富田宇宙 | 本人プロフィールやインタビューで診断歴を公表 | 公表あり |
| 嶋津雄大 | 本人の挑戦表明と所属先・報道による病名の紹介 | 公表・報道あり |
| 落合啓士 | 選手プロフィールや引退関連報道で発症歴を紹介 | 公表・報道あり |
| 濵ノ上文哉 | 本人公式プロフィールで診断歴を紹介 | 公表あり |
| 森仁志 | 白杖ダンサーとして病気を公表 | 公表あり |
| 和田アキ子 | 網膜色素上皮裂孔、黄斑変性症について公表 | 網膜色素変性症とは別 |
このように、本人の発信や信頼できる報道に基づく情報と、病名が似ているだけの情報は分けて考える必要があります。視覚障害がある著名人を一律に網膜色素変性症と結びつけることはできません。
【発症原因と遺伝】網膜色素変性症はなぜ起こる?
網膜色素変性症は、目の奥にある網膜の視細胞などが徐々に障害される遺伝性の疾患群です。英語ではRetinitis Pigmentosaと呼ばれ、略称はRPです。
網膜は、目に入った光を電気信号に変えて脳に伝える役割を担っています。その網膜の機能が徐々に低下することで、暗い場所での見えにくさや視野の狭まり、視力低下などが生じます。
2026年2月19日には、日本眼科学会から「網膜色素変性診療ガイドライン2026」が公表されました。病態や診断、治療に関する最新の医学的知見を確認する際の重要な資料です。
原因は遺伝子の変異
網膜色素変性症の原因は、視細胞や網膜色素上皮細胞などで働く遺伝子の変異です。
原因となる遺伝子は一つではありません。代表的なものとして、EYS、RHO、PRPH2、RPGR、RP2などが知られています。どの遺伝子に変異があるかによって、発症時期や症状、進行の特徴が異なります。
遺伝形式には、主に次の3種類があります。
- 常染色体顕性遺伝(優性遺伝): 親から受け継いだ変異遺伝子の一方によって発症する形式。
- 常染色体潜性遺伝(劣性遺伝): 原則として両方の遺伝子に変異がある場合に発症する形式。
- X連鎖性遺伝: X染色体上の遺伝子変異によって発症する形式。
難病情報センターによると、明らかな家族内の遺伝が確認されている患者は全体の約50%です。内訳は、常染色体潜性遺伝が約35%、常染色体顕性遺伝が約10%、X連鎖性遺伝が約5%とされています。
ただし、親や兄弟に同じ病気の人がいないからといって、遺伝性疾患ではないとは限りません。家族歴が確認できない患者にも遺伝子変異が関係している場合があります。
子どもにも遺伝する?発症確率は一律ではない
網膜色素変性症の遺伝について、すべての患者に共通する遺伝確率はありません。
例えば、常染色体顕性遺伝と常染色体潜性遺伝では、子どもに変異が伝わる仕組みも発症する条件も異なります。原因遺伝子が特定できているか、両親のどちらに変異があるかなども判断材料になります。
そのため、将来の妊娠や出産、子どもへの遺伝について心配がある場合は、眼科専門医や遺伝カウンセリングを実施している医療機関で相談することが大切です。家族歴だけで子どもの発症リスクを決めつけることはできません。
【初期症状と進行速度】夜盲・視野狭窄から失明に至るのか?
網膜色素変性症の特徴的な症状は、夜盲、視野狭窄、視力低下です。ただし、全員が同じ順序で症状を経験するわけではありません。
初期症状1:暗い場所で見えにくくなる夜盲
初期に気づきやすい症状の一つが夜盲です。
夜盲とは、暗い場所や薄暗い環境で物が見えにくくなる状態です。例えば、次のような場面で不便を感じることがあります。
- 夕方から夜にかけて歩きにくくなる。
- 明るい場所から暗い室内に入ると、周囲が見えるまで時間がかかる。
- 映画館や暗い階段で足元が見えにくい。
- 夜道で人や障害物に気づきにくい。
こうした症状は、暗い場所での見え方に関係する杆体細胞が障害されることで起こります。
初期症状2:視野狭窄によって周辺が見えにくくなる
病気が進行すると、視野が周辺から狭くなることがあります。
視野狭窄が進むと、正面を見ていても左右の物に気づきにくくなります。歩行中に人や家具にぶつかったり、足元の障害物を見落としたりすることもあります。
さらに進行すると、視野の中央部分を通して物を見る状態に近づくことがあります。こうした見え方は、一般に「トンネル視」と表現されます。
初期症状3:視力低下と中心視野への影響
網膜色素変性症では、周辺視野だけでなく、進行に伴って中心視力にも影響が及ぶことがあります。
文字を読む、細かな作業をする、人の表情を確認するといった日常動作が難しくなる場合もあります。一方、中心視野が長期間保たれ、比較的良好な視力を維持する患者もいます。
進行速度には大きな個人差がある
網膜色素変性症は基本的に進行性ですが、数年から数十年という長い時間をかけて変化することがあります。
同じ病名であっても、30代で視機能が大きく低下する人もいれば、70歳になっても良好な矯正視力を保つ人もいます。原因遺伝子や病型、個人ごとの病状によって違いがあるためです。
難病情報センターは、他の患者と症状を比較するのではなく、本人の視野と矯正視力の変化を継続的に確認することを勧めています。裸眼視力だけでは病気の進行を正確に判断できません。
網膜色素変性症になると必ず失明する?
「網膜色素変性症=完全に目が見えなくなる」と理解するのは正確ではありません。
医学的には、光をまったく感じられなくなる状態と、視力が低下して日常生活で文字を読むことなどが難しくなる状態は区別されます。
難病情報センターによると、網膜色素変性症では矯正視力がおよそ0.1以下になるような社会的失明に至る患者は多い一方、光をまったく感じない医学的失明になる患者は比較的少ないとされています。
また、矯正視力が0.1以下になった場合でも、拡大読書器や音声読み上げなどの補助技術を活用することで、読み書きを続けられる場合があります。
失明の可能性を考える際には、病名だけで将来を判断せず、定期的な視野検査や矯正視力の測定によって、自分自身の経過を把握することが大切です。
【指定難病90と最新治療】2026年の研究で何が変わった?
網膜色素変性症は、国が定める指定難病90に該当します。2015年1月1日から指定難病の一つとして扱われており、医療費助成制度などの公的支援の対象となる疾患です。
厚生労働省が公表している2026年4月時点の指定難病一覧にも、告示番号90として掲載されています。
指定難病90なら医療費が無料になる?
指定難病に認定されていることと、すべての患者が自動的に医療費助成を受けられることは同じではありません。
医療費助成を受けるには、診断基準や重症度などの条件を確認し、所定の申請手続きを行う必要があります。申請窓口は、居住する都道府県の保健所などです。
対象になるかどうか、必要な書類や自己負担上限額については、主治医と自治体の担当窓口に確認する必要があります。
2026年の治療法1:遺伝子治療
網膜色素変性症の治療研究で注目される分野の一つが遺伝子治療です。
原因となる遺伝子の働きを補うことなどによって、網膜の機能を維持・改善することを目指す技術です。
日本眼科学会によると、RPE65遺伝子の異常が原因となる一部の遺伝性網膜疾患では、国内で承認された遺伝子治療が存在します。ただし、対象となる患者は限られています。
つまり、網膜色素変性症と診断された人なら誰でも遺伝子治療を受けられるということではありません。原因遺伝子の特定や病状、治療適応の確認が必要です。
2026年の治療法2:iPS細胞を利用した再生医療
もう一つの研究分野が、iPS細胞などを活用した再生医療です。
網膜色素変性症では、光を受け取る視細胞が障害されます。そのため、失われた視細胞を細胞移植によって補い、視機能の回復を目指す研究が進められています。
ただし、細胞を移植するだけでは十分ではありません。移植した細胞が周囲の神経細胞とつながり、脳まで適切に信号を伝えられる必要があります。
日本眼科学会は、視細胞移植について研究段階の課題が残っていると説明しています。一般的な治療として確立されたわけではなく、研究成果を慎重に評価する必要があります。
2026年の治療法3:国内で進む新しい臨床試験
2026年には、網膜色素変性症の患者を対象とする新しい治験も公開されています。
その一つが、RV-001を使用する第I/II相試験です。難病治験ウェブに掲載された2026年6月5日最終公表の情報によると、網膜色素変性症の患者を対象に、単回の硝子体内投与による安全性と忍容性を評価し、有効性についても探索的に検討する計画です。
RV-001の臨床試験概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験名 | 網膜色素変性患者を対象としたRV-001試験 |
| 試験段階 | 第I/II相 |
| 登録目標 | 45例 |
| 対象年齢 | 18歳以上 |
| 実施施設 | 慶應義塾大学病院、神戸アイセンター病院 |
| 実施目的 | 安全性・忍容性の評価、有効性の探索 |
| 実施期間 | 2028年6月30日までの予定 |
出典:難病治験ウェブ、jRCT2033240611。掲載情報は2026年6月5日公表時点。
この治験は初期段階にある研究です。安全性や有効性が確立した一般診療の治療法とは異なります。治験への参加を検討する場合は、対象条件やリスクを主治医と確認する必要があります。
現在の標準的な治療は症状への対応とロービジョンケア
2026年現在、すべての網膜色素変性症患者に適用できる根本的な治療法は確立されていません。
そのため、現在の診療では残っている視機能を活用し、生活上の不便を減らすことも大切な治療の柱になっています。
- 遮光眼鏡:まぶしさを軽減し、見やすさを補助する。
- 拡大読書器:文字や資料を拡大して読みやすくする。
- ルーペ:細かい文字や物を確認する。
- 音声読み上げ:スマートフォンやパソコンの情報を音声で確認する。
- 白杖:歩行時の安全確保や周囲への視覚障害の伝達に役立てる。
- 歩行訓練:安全に移動するための技術を身につける。
なお、従来使用されてきたビタミンAやヘレニエンなどの内服については、網膜色素変性症の進行を抑える効果が十分に証明されていません。自己判断でサプリメントや薬を使用するのではなく、眼科専門医に相談することが重要です。
【網膜色素変性症の有名人】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:網膜色素変性症を公表している有名人は誰ですか?
富田宇宙さん、嶋津雄大さん、落合啓士さん、濵ノ上文哉さんなどがいます。また、白杖ダンサーとして活動する森仁志さんも公表者の一人です。
Q2:網膜色素変性症を発症すると必ず失明しますか?
必ず完全に失明するわけではありません。社会的失明と医学的失明は異なり、病気の進行速度にも個人差があります。長期間にわたって良好な視力を維持する人もいます。
Q3:網膜色素変性症は遺伝する病気ですか?
はい。遺伝子変異が原因となる遺伝性疾患です。ただし遺伝形式は複数あり、家族に患者がいない場合でも発症することがあります。遺伝の可能性を詳しく知りたい場合は遺伝カウンセリングが役立ちます。
Q4:2026年現在、網膜色素変性症を完治させる治療法はありますか?
すべての患者に適用できる根本的な治療法は確立されていません。一部の遺伝子異常を対象とする遺伝子治療や、iPS細胞を利用した再生医療などの研究が進んでいます。
Q5:網膜色素変性症は指定難病90ですか?
はい。網膜色素変性症は指定難病90です。ただし、医療費助成には診断基準や重症度などの条件があるため、自治体への確認と申請が必要です。
Q6:富田宇宙さんや嶋津雄大さんは2026年現在も競技を続けていますか?
はい。富田宇宙さんは2026年10月のアジアパラ競技大会で3つのメダルを獲得。嶋津雄大さんも実業団陸上とパラ陸上の両立を目指し、同大会の男子5000mで優勝しています。
まとめ:網膜色素変性症の有名人から知る病気の実態と2026年の展望
網膜色素変性症を公表している著名人として、富田宇宙さん、嶋津雄大さん、落合啓士さん、濵ノ上文哉さんらがいます。彼らはそれぞれ異なる競技で実績を残し、視覚障害とともに歩む人生を発信してきました。
2026年は、富田さんのアジアパラ大会でのメダル獲得、嶋津さんのパラ陸上での世界記録、濵ノ上さんの国際大会での表彰台など、競技面での新しい成果が相次ぎました。一方、落合さんは現役引退後もブラインドサッカーの歴史を語るうえで重要な存在です。
病気そのものについては、網膜色素変性症は指定難病90に該当する遺伝性疾患であり、夜盲や視野狭窄から視力低下へと進行する場合があります。ただし、進行速度や将来の視力には大きな個人差があり、病名だけで失明時期を判断することはできません。
2026年には診療ガイドラインの公表や新たな治験など、研究・医療面でも動きがあります。遺伝子治療や再生医療の進展には期待が寄せられていますが、現時点では対象者や研究段階を正しく理解することが必要です。
著名人の活動を知ることは、病気への理解を深めるきっかけになります。同時に、患者一人ひとりの見え方や生活環境は異なります。正しい医学情報と本人が発信した事実を基に、網膜色素変性症への理解を広げていくことが大切です。