いじめ動画拡散が起きたら何を優先?2026年通知で読む学校・保護者の対応と対策
2026年、児童生徒間の暴力行為やいじめを撮影した動画がSNSに投稿され、短時間で拡散する問題に対し、文部科学省が学校や教育委員会に緊急対応を求めています。動画の投稿によって被害が明らかになる一方、被害生徒の顔や学校名、個人情報が広まり、誹謗中傷や特定行為などの二次被害に発展するケースも懸念されています。
大きな転換点となったのが、2026年1月30日付けの文部科学省初等中等教育局長通知「SNS上における暴力行為等の動画の投稿・拡散を受けた緊急の対応等について」です。この通知は、被害生徒の安全確保、心身のケア、警察との連携、SNS投稿への削除要請、情報モラル教育など、学校と設置者が取り組むべき対応を具体的に示しました。
いじめ動画が拡散した際に優先すべきなのは、動画を見つけて削除することだけではありません。まず被害生徒の安全を守り、必要な証拠を残し、学校・教育委員会・警察・専門相談機関が連携して被害の拡大を防ぐことです。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- いじめ動画が拡散したら、投稿の削除より先に被害生徒の安全確保と心身のケアを優先する。
- 文部科学省は2026年1月30日、学校・教育委員会に対して警察との連携や組織的な事実確認、SNS上の削除要請への対応を通知した。
- 動画や投稿の証拠を保存し、再投稿・転載・個人特定・誹謗中傷を避けながら、適切な相談窓口につなぐことが重要である。
【背景と経緯】いじめ動画拡散はなぜ問題になり、2026年に何が変わったのか

いじめ動画拡散の問題は、学校内で発生した暴力や嫌がらせが、SNSを通じて学校外にも広がる点にあります。
従来、いじめの把握は被害生徒や保護者からの相談、教職員による観察、アンケートなどが中心でした。しかし、動画が投稿されると、学校が認知していなかった暴力行為まで外部から明らかになる可能性があります。
文部科学省も2026年1月30日の通知で、SNS上に投稿・拡散された複数の事案について、動画が広まるまで学校が把握していなかったケースが含まれていると指摘しました。
ここには、学校の認知体制とSNSの情報拡散速度との間にある大きな隔たりが表れています。
いじめ動画が拡散する主な原因と背景

拡散には、複数の要因が関係します。
1.短い動画だけでは前後関係が伝わらない
数秒から数十秒の動画は、撮影前後の経緯や当事者間の関係が省かれた状態で共有されることがあります。
映像だけで事件の全体像を判断すると、誤った認識や無関係な人物への批判につながる危険があります。
2.転載や引用によって情報が複製される
最初の投稿が削除されても、別のアカウントによる転載やスクリーンショットが残れば、情報の流通は止まりません。
一つのSNSから別のSNS、動画共有サービス、掲示板などへ移動することもあり、削除対応が複雑になります。
3.正義感による拡散が二次被害を生む
いじめを批判する目的であっても、動画を公開したり、関係者の名前や学校を特定したりする行為は、被害生徒のプライバシーを侵害する可能性があります。
加害行為への批判と、個人情報をさらす行為は別の問題です。
4.学校が把握できていない被害が存在する
被害生徒が教師や保護者に相談できない場合、いじめが長期間見過ごされることがあります。
周囲の生徒が動画を撮影していても、学校に知らせなければ、被害の実態が共有されないままになる可能性があります。
2026年の主な政策対応と時系列

今回の対応は、1月30日の通知だけで完結しているわけではありません。関連する会議や教材の公表、学校の対応状況を確認する調査も進められています。
- 2026年1月14日: 文部科学省が緊急都道府県・指定都市教育委員会教育長会議を開催。児童生徒の安全・安心の確保を第一とする緊急対応を要請。
- 2026年1月16日: いじめ防止対策に関する関係省庁連絡会議を開催。関係機関の連携や広報啓発など、緊急に対応すべき事項を整理。
- 2026年1月30日: 文部科学省が「SNS上における暴力行為等の動画の投稿・拡散を受けた緊急の対応等について」を通知。通知番号は7文科初第2109号。
- 2026年3月3日: SNS上の投稿・拡散による誹謗中傷や人権侵害を題材とした情報モラル教育用の動画教材等を周知。
- 2026年3月19日: 重大事態調査ガイドラインのチェックリストを活用した、学校・設置者の平時からの備えに関する点検結果と対応方針を通知。
特に重要なのは、1月30日の通知によって、動画の拡散への対応だけでなく、学校内で見過ごされているいじめを改めて確認することも求められた点です。
【2026年1月30日通知を徹底解説】学校・教育委員会・警察の役割と責任
2026年1月30日の通知は、国立・公立・私立の各学校とその設置者に対し、組織的な対応を求めています。
重要なのは、SNS上で動画が拡散した場合、学校だけで問題を抱え込まないことです。
文部科学省が示した5つの対応方針
通知の内容は、大きく次の5つに整理できます。
① 見過ごされている暴力行為やいじめの緊急確認
学校は、児童生徒へのアンケート、1人1台端末を活用した心の健康観察、担任やスクールカウンセラーによる面談などを通じ、認知されていない被害がないか確認することを求められました。
また、こうした確認は一度きりではなく、次年度以降も日常的に続ける必要があります。
② 暴力やいじめを許容しない学校環境の整備
暴力行為やいじめ、加担・幇助する行為について、犯罪に該当し得ることを児童生徒に指導します。
学校は警察と連携する方針を明確にし、保護者や地域にも周知することが求められています。
③ 被害生徒の安全確保と心身のケア
被害の事実が明らかになった場合、SNSへの投稿の有無にかかわらず、安全確保を最優先にします。
スクールカウンセラーなどを活用し、被害生徒の状態に応じた支援を直ちに行うことも明記されています。
④ 加害生徒への毅然とした対応
事案の内容に応じて厳正な指導を行い、犯罪行為に該当する場合は警察などの関係機関と連携します。
学校教育法に基づく懲戒や出席停止なども、必要に応じて検討する方針です。
⑤ SNS投稿・拡散への組織的対応
学校と設置者は、警察などと連携して事実関係を確認し、個人情報や学校名が拡散された場合には、児童生徒の安全な学習環境を守るために対応します。
削除要請の方法を理解し、保護者にも周知することが求められています。
関係者の役割と連携関係
| 主体・関係機関 | 主な役割 | 連携・対応のポイント |
|---|---|---|
| 被害児童生徒・保護者 | 被害状況の共有、安全確保の希望の伝達 | 学校や専門機関に相談 |
| 学校・校長 | 事実確認、被害者支援、校内の安全確保 | 学校いじめ対策組織を中心に対応 |
| 教育委員会・学校設置者 | 学校への指導・助言、調査体制の整備 | 警察、福祉、医療機関と連携 |
| 警察 | 犯罪の捜査、被害相談、安全確保 | 学校と情報を共有し必要な対応 |
| SNS運営事業者 | 利用規約や法令に基づく投稿の審査・削除対応 | 利用者からの通報や削除申請を受け付ける |
| 法務局・相談機関 | 人権侵害や削除手続きに関する支援 | 被害内容に応じて助言・削除要請等を実施 |
この関係から分かるのは、学校が動画の削除だけを目的に対応してはならないということです。
被害生徒の保護、学校生活の安全、証拠の管理、関係機関との連携を並行して進める必要があります。
【最優先の初動対応】いじめ動画が拡散したら何をすべきか
実際に被害が発生した場合、保護者や学校関係者が最初に迷いやすいのが対応の順番です。
優先順位を間違えると、動画の削除に気を取られて被害生徒のケアが遅れたり、証拠を残さないまま投稿が消えたりする可能性があります。
最初に行うべき5つの対応
1.被害生徒の安全を確保する
最初に確認するのは、現在も暴力や嫌がらせが続いていないかという点です。
- 加害行為を行った生徒との接触を避ける。
- 登下校や校内での安全を確認する。
- 必要に応じて医療機関を受診する。
- 本人の希望を聞き、安心して学習できる環境を整える。
- 心理的な負担が強い場合はスクールカウンセラーなどにつなぐ。
学校生活を続けるために被害生徒だけが我慢したり、無理に登校したりすることを前提にしてはいけません。
別室での学習や登校方法の変更などを検討する場合も、本人と保護者の意向を確認する必要があります。
2.動画や投稿の証拠を保存する
投稿を削除する前に、必要な記録を残します。
具体的な保存方法は後述しますが、投稿日時、アカウント名、URL、投稿内容などが重要です。
3.学校と教育委員会に報告する
担任だけに伝えて終わらせず、校長や学校いじめ対策組織にも共有します。
相談した日時、対応した担当者、学校側の説明、今後の対応予定を記録しておくと、その後の確認がしやすくなります。
4.必要に応じて警察に相談する
暴行や傷害などの犯罪に該当する可能性がある場合は、学校内の指導だけで終わらせず、警察への相談・通報を検討します。
身の危険が差し迫っている場合は110番、緊急ではない相談は警察相談専用電話「#9110」が窓口です。
5.SNS運営事業者に削除を申請する
証拠を確保した後、投稿内容に応じて各SNSの通報機能や削除申請窓口を利用します。
被害生徒の顔、氏名、学校名、住所などが掲載されている場合は、個人情報やプライバシーの侵害についても申請内容に含めます。
被害生徒の心のケアで注意したいこと
動画が拡散すると、被害生徒は実際の暴力だけでなく、見知らぬ人からの視線や批判、学校での人間関係の変化にもさらされます。
そのため、身体的なけががない場合でも、心理的な影響を軽視してはいけません。
保護者は次のような変化に注意してください。
- 学校に行くことを強く嫌がる。
- 睡眠や食事の状態が変わる。
- スマートフォンの通知やSNSを見ることを怖がる。
- 友人との交流を避けるようになる。
- 自分を責める発言や強い不安を示す。
無理に動画を見せたり、何度も同じ説明を求めたりすることは避けます。
本人が話せる範囲で気持ちを聞き、必要に応じて医療機関や心理専門職の支援につなぐことが大切です。
【証拠保存と削除要請】SNS動画の記録方法と二次被害を防ぐ対策
いじめ動画の拡散を止めるには、投稿の削除と証拠の保存を両立させる必要があります。
特に注意したいのは、削除を急ぐあまり、投稿者や投稿日時が分からなくなることです。
いじめ動画の証拠保存で記録する項目
警察庁は、インターネット上の誹謗中傷について、削除依頼や警察への相談に備え、掲載内容を記録するよう案内しています。
保存する情報は次のとおりです。
| 記録項目 | 保存する内容 |
|---|---|
| 投稿先 | SNS名、動画共有サービス名、掲示板名 |
| 投稿URL | 元投稿や転載先のページアドレス |
| 投稿者情報 | アカウント名、ユーザーIDなど |
| 投稿日時 | 投稿日時や確認した日時 |
| 投稿内容 | 動画、説明文、コメント、個人情報 |
| 拡散状況 | 確認できた転載先や関連投稿 |
| 削除対応 | 通報日時、申請内容、事業者からの回答 |
保存方法としては、投稿画面のスクリーンショット、画面の印刷、投稿URLの記録などがあります。
元の動画ファイルを保有している場合は、改変せず、アクセスを制限した場所に保管してください。
ただし、被害生徒の尊厳やプライバシーを守るため、必要以上に動画を複製したり、第三者に送信したりすることは避けます。
証拠の共有先は、学校、警察、弁護士など必要な関係者に限定することが原則です。
SNS動画の削除依頼・削除要請の進め方
削除申請は、基本的に投稿されたサービスの通報機能や問い合わせフォームから行います。
申請時には、次の情報を整理すると伝わりやすくなります。
- 問題となる投稿のURL
- 投稿者のアカウント情報
- 被害生徒の権利が侵害されている具体的な内容
- 未成年者の顔や個人情報が掲載されている事実
- 拡散によって生じている安全上の問題
- 速やかな削除を求める理由
削除申請を出しても、必ず即時削除されるとは限りません。投稿内容やサービスの判断基準によって対応が異なります。
2026年に活用したい主な削除・人権相談窓口
違法・有害情報相談センター(総務省委託事業)
インターネット上の誹謗中傷、名誉毀損、プライバシー侵害などについて、削除依頼の方法や発信者情報の特定方法などを助言する窓口です。
注意したいのは、相談センターが本人に代わって削除請求を行う機関ではないことです。相談者自身が対応できるよう、具体的な方法を案内します。
法務省の人権相談・法務局
インターネット上の人権侵害について相談でき、事案に応じて法務局がプロバイダなどに削除要請を行う場合もあります。
誹謗中傷ホットライン(セーファーインターネット協会)
ネット上の誹謗中傷について連絡を受け付け、一定の基準に該当する場合、国内外のプロバイダなどに利用規約に沿った対応を促します。
一般的な個別相談窓口とは異なるため、相談機関との役割の違いを理解して利用してください。
また、2025年4月に施行された情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)では、大規模プラットフォーム事業者に対する削除対応手続きの迅速化や運用状況の透明化などが定められています。
これは削除申請の環境を整える制度ですが、すべての投稿が自動的に削除されることを意味するものではありません。
誹謗中傷と二次被害を防ぐために避けるべき行動
動画を見た第三者が、正義感から投稿者や関係者を特定しようとするケースには注意が必要です。
特に避けるべき行動は次のとおりです。
- 動画を別のSNSに転載する。
- 被害生徒や関係者の氏名・住所を公開する。
- 学校名や制服から個人を特定する。
- 未確認情報を事実として投稿する。
- 加害者とされる人物への脅迫や攻撃を呼びかける。
- コメント欄で被害生徒を批判する。
動画の拡散を止めるために、さらに動画を拡散する必要はありません。
被害を告発することと、被害者の個人情報を公開することは明確に区別する必要があります。
【法的責任と重大事態調査】学校の対応義務・警察への相談・名誉毀損罪を整理
いじめ動画が拡散した場合、問題になるのは動画に映っている暴力行為だけではありません。
撮影、投稿、転載、個人情報の公開、誹謗中傷など、それぞれの行為について法的な責任が問われる可能性があります。
暴行罪・傷害罪といじめの関係
文部科学省の2026年1月30日通知は、暴力行為やいじめについて、事案によって暴行罪や傷害罪などの犯罪行為に該当し得ることを改めて指導するよう求めています。
例えば、身体に対する不法な有形力の行使は暴行罪、身体を傷つけた場合は傷害罪に該当する可能性があります。
重要なのは、動画が拡散されたかどうかによって、暴力行為の法的評価が変わるわけではないことです。
動画が存在しなくても、犯罪に該当する行為があれば警察への相談対象になります。
名誉毀損罪・侮辱罪は投稿者や転載者にも関係する
SNS上の投稿やコメントは、内容によって刑事責任を問われる場合があります。
| 法律上の区分 | 主な成立要件 | 刑法上の法定刑 |
|---|---|---|
| 名誉毀損罪 | 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損する | 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 侮辱罪 | 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱する | 1年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金、拘留または科料 |
名誉毀損罪は、摘示した事実が真実であっても、原則として直ちに成立を免れるわけではありません。
ただし、公共の利害に関する事実で、公益目的があり、真実であることが証明された場合などには、刑法上の特例が適用されることがあります。
また、動画を転載しただけで必ず名誉毀損罪や侮辱罪が成立するわけではありません。
投稿の内容、目的、表現、公開範囲などによって判断されます。
刑事責任とは別に、プライバシー侵害や名誉毀損などを理由とする民事上の損害賠償責任が問題になる場合もあります。
警察への相談と学校との連携方法
警察への相談は、学校の調査が終了するまで待つ必要はありません。
特に、身体的な暴力、けが、脅迫、継続的な嫌がらせ、個人情報の拡散などがある場合は、早い段階で相談することが大切です。
相談先は以下のように使い分けます。
- 110番: 現在進行中の暴力や差し迫った危険がある場合。
- #9110: 緊急ではない警察相談。
- 最寄りの警察署: 被害の申告や具体的な事件に関する相談。
- 都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口: SNS上の投稿やインターネット上の権利侵害に関する相談。
警察に相談する際は、保存した投稿画面、URL、投稿者情報、日時、被害の経緯などを整理して持参すると、状況を伝えやすくなります。
文部科学省も、学校だけでは対処が難しい場合、警察などの関係機関と連携して迅速に事実確認を行うよう求めています。
いじめ重大事態の調査ガイドラインとは
いじめによる被害が深刻化した場合は、いじめ防止対策推進法第28条に基づく重大事態調査が関係します。
文部科学省が2024年8月に改訂した「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」では、重大事態を次の2つに分類しています。
1号重大事態
いじめによって、児童生徒の生命、心身または財産に重大な被害が生じた疑いがある場合です。
2号重大事態
いじめによって、児童生徒が相当の期間、学校を欠席することを余儀なくされている疑いがある場合です。
不登校重大事態では年間30日の欠席が目安とされていますが、連続した欠席など、いじめが原因と考えられる状況があれば、30日に達する前から対応を始める必要があります。
特に重要なのは、重大事態は、被害の全貌が確定してから認定するものではないという点です。
重大な被害が生じた疑いの段階から対応を開始することが、ガイドラインで示されています。
また、児童生徒や保護者から重大事態の申立てがあった場合、学校は重大事態が発生したものとして報告・調査などに当たることが求められています。
動画の拡散そのものが自動的に重大事態の認定条件になるわけではありません。しかし、拡散によって精神的な被害が深刻化したり、登校できなくなったりした場合には、重大事態に該当する可能性があります。
【保護者向け相談窓口と再発防止】家庭・学校でできる具体的な対応
いじめ動画の拡散に直面した保護者にとって、学校への相談だけでは不安が解消されない場合もあります。
そのような場合は、教育委員会や警察、法務局など、学校以外の機関を利用できます。
保護者が利用できる主な相談窓口
| 相談窓口 | 電話番号 | 主な相談内容 |
|---|---|---|
| 24時間子供SOSダイヤル | 0120-0-78310 | いじめや子どもの悩み全般 |
| 子どもの人権110番 | 0120-007-110 | いじめや子どもの人権侵害 |
| 警察相談専用電話 | #9110 | 犯罪や安全上の不安に関する相談 |
| 緊急通報 | 110 | 緊急の事件・事故 |
24時間子供SOSダイヤルは、夜間や休日を含めて24時間相談できます。原則として、電話をかけた所在地の教育委員会の相談機関につながります。
子どもの人権110番は、法務省の相談窓口で、原則として平日8時30分から17時15分まで受け付けています。
また、インターネット上の投稿による人権侵害については、法務局のインターネット人権相談も利用できます。
学校の対応に納得できない場合の手順
学校に相談しても十分な対応が得られない場合、次の順序で対応を進める方法があります。
1. 校長に対し、被害の状況と求める安全対策を文書で伝える。
2. 学校いじめ対策組織での対応状況を確認する。
3. 教育委員会や学校設置者に相談し、組織的な対応を求める。
4. 犯罪の可能性がある場合は警察に相談する。
5. 重大事態に該当する疑いがある場合は、法第28条に基づく調査を申し立てる。
私立学校の場合は、学校法人などの設置者や、都道府県の私立学校担当部局への相談も選択肢になります。
学校側には、保護者に対して説明し、必要に応じて設置者が直接調整する体制を整えることも求められています。
2026年3月19日の調査結果から見える学校側の課題
文部科学省は2026年3月19日、重大事態調査ガイドラインのチェックリストを活用した点検結果を公表しました。
その結果からは、学校と設置者の間で、対応体制に差があることが読み取れます。
特に注目したいのが、次の4項目です。
- 記録を統一的に管理する仕組みが整っていると回答した学校:90.6%
- 犯罪に相当するいじめについて警察への相談・通報を事前に保護者へ周知している学校:89.5%
- 関係機関と連携した支援体制を整えている学校設置者:77.6%
- 重大事態発生時の対応手順を明確化している学校設置者:86.6%
これらは、点検に対する学校・設置者の回答割合であり、実際にいじめが発生した際の解決率を示す数字ではありません。
それでも、関係機関との連携や対応手順の整備に改善の余地があることを示す重要な結果です。
特に、学校設置者における関係機関との連携体制は77.6%にとどまっています。
SNS上で動画が拡散した場合、学校だけでは削除要請や警察との調整、心理的支援を十分に進められない可能性があります。
そのため、教育委員会、医療機関、福祉機関、警察などが平時から連携できる仕組みを持つことが重要です。
SNS情報モラル教育と再発防止
再発防止では、加害行為を行った児童生徒への指導だけでなく、撮影・投稿・転載に関わる行為についても教育する必要があります。
文部科学省は2026年3月3日、SNS上の投稿や拡散によって発生する誹謗中傷などの人権侵害を題材とした動画教材等を周知しました。
学校では、次のような内容を情報モラル教育に取り入れることが考えられます。
- 暴力行為やいじめを撮影・投稿することの問題点。
- 他人の動画を無断で転載することの責任。
- SNS上の匿名投稿でも法的責任が生じる可能性。
- 個人情報や学校名を公開する危険性。
- 傍観者にならず、教職員や信頼できる大人に相談する方法。
- 拡散された動画を見つけても、転載せず通報する姿勢。
また、いじめを防ぐためには、被害生徒だけでなく、周囲で見ていた児童生徒が安心して声を上げられる環境づくりも欠かせません。
情報モラル教育は、SNSの使い方を教えるだけの授業ではありません。
他者の尊厳を守ること、拡散した情報が誰かの生活を変えてしまうこと、問題を見つけたときに適切な大人へつなぐことまで理解させる必要があります。
【プロの結論】いじめ動画拡散への対応で本当に優先すべき判断基準
いじめ動画の拡散が起きたとき、対応の成否を左右するのは、単純に動画を消せたかどうかではありません。
重要なのは、被害生徒の安全が守られ、学校生活を取り戻せる環境が整い、同じ被害が繰り返されない仕組みができたかどうかです。
2026年1月30日の文部科学省通知と、その後の3月3日の教材周知、3月19日の点検結果を合わせて見ると、今後の対応には3つの判断基準があります。
第一に、動画よりも被害生徒を優先すること。
動画は重要な証拠になり得ますが、被害生徒の安全や心身の状態より優先されるものではありません。
学校は、拡散の規模だけでなく、被害生徒が現在どのような状況に置かれているかを把握する必要があります。
第二に、学校だけで解決しようとしないこと。
暴力行為や深刻ないじめについては、警察、教育委員会、医療機関などとの連携が必要です。
重大事態に該当する疑いがある場合は、学校側の判断が遅れないよう、設置者への報告や調査体制の整備を進めることが求められます。
第三に、拡散を止めるために新たな人権侵害を生まないこと。
被害を告発する目的であっても、動画の転載や個人特定、関係者への攻撃は、別の被害を生み出す可能性があります。
証拠は適切に保存し、削除要請や警察への相談に活用する。公開の場で個人を追及しない。この区別が欠かせません。
2026年の対応で問われているのは、SNS上の炎上を収束させる技術だけではありません。学校がいじめを早期に把握し、被害生徒を守り、関係機関と連携して再発を防ぐ実行力です。
【いじめ動画拡散に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:いじめ動画がSNSで拡散したら、最初に何をすべきですか?
A1:最初に被害生徒の安全を確保してください。その後、投稿URL、アカウント名、日時、スクリーンショットなどを保存し、学校や教育委員会、必要に応じて警察とSNS運営事業者に相談します。
Q2:いじめ動画を見つけた場合、正義感から拡散してもよいですか?
A2:おすすめできません。転載によって被害生徒の顔や個人情報がさらに広まり、二次被害につながる可能性があります。動画を保存する場合も、公開せず、学校や警察など必要な関係者に限定して共有してください。
Q3:いじめ動画が拡散したら、必ず重大事態として調査されますか?
A3:動画が拡散しただけで自動的に重大事態になるわけではありません。生命・心身・財産への重大な被害が生じた疑い、またはいじめによって相当期間の欠席を余儀なくされている疑いなどが判断基準です。被害が深刻な場合は、確定を待たずに学校や設置者へ調査を申し立てることができます。
まとめ:2026年のいじめ動画拡散対策は被害者保護と組織的対応が鍵
2026年1月30日の文部科学省通知は、いじめ動画の投稿・拡散を単なるSNS上のトラブルとして扱わず、学校・教育委員会・警察などが連携して対応する必要性を明確にしました。
保護者が覚えておきたい対応の順番は、次のとおりです。
1. 被害生徒の安全確保と心身のケア。
2. 動画やSNS投稿の証拠保存。
3. 学校・教育委員会への報告。
4. 必要に応じた警察への相談。
5. SNS運営事業者への削除要請。
6. 重大事態調査の必要性の確認。
7. 再発防止と情報モラル教育の実施。
動画が削除されても、被害生徒の心の傷や学校生活への影響が消えるわけではありません。
学校には、動画の拡散を止めるだけでなく、被害を受けた児童生徒が安心して生活できる環境を取り戻す責任があります。
そして、SNSを利用する一人ひとりにも、無責任な転載や誹謗中傷によって被害を広げない姿勢が求められています。
いじめ動画拡散への本当の対策は、拡散後の削除だけではなく、いじめを見逃さず、被害者を守り、二度と同じことを起こさない学校環境をつくることです。