【出場回数】北朝鮮代表のワールドカップ本大会出場は通算2回
北朝鮮代表のワールドカップ出場歴を正確に理解するには、「本大会への出場回数」と「予選への参加回数」を区別する必要がある。
FIFAの加盟協会公式データによると、北朝鮮男子代表の本大会出場は1966年と2010年の2回。最高成績は1966年大会の準々決勝進出(ベスト8)だ。また、ワールドカップ予選への参加記録は2026年大会を含めて11回となっている。
つまり、北朝鮮は長年にわたりワールドカップ出場を目指してきたものの、本大会に進出できたのは2度だけということだ。
ここで注意したいのは、北朝鮮の女子代表とは記録が異なる点である。FIFAの記録では女子代表のワールドカップ出場は4回となっている。男子と女子の成績を混同すると、出場回数を誤って理解してしまう。この記事で扱うのは男子A代表の歴史だ。
【1966年イングランド大会】イタリア撃破で世界を驚かせたベスト8の快挙

北朝鮮サッカーの歴史を語るうえで、1966年イングランド大会は欠かせない。
初出場の北朝鮮はグループ4に入り、ソ連、チリ、イタリアと対戦した。当時のイタリアは世界的な強豪であり、北朝鮮にとっては厳しい相手だった。
ところが、最終節で歴史的な番狂わせが起こる。
イタリア戦1対0の衝撃

1966年7月19日、北朝鮮はイタリアを1対0で撃破した。
決勝点を決めたのは、FWの朴斗翼(パク・ドゥイク)。このゴールによって北朝鮮は勝利を収め、イタリアを大会から敗退させた。
AFCも、この勝利をアジア勢がワールドカップで残した歴史的な快挙として紹介している。
当時、北朝鮮はワールドカップ初出場のチームだった。対するイタリアは過去に世界王者となった実績を持つ強豪である。両国の実績を考えれば、北朝鮮の勝利がどれほど大きな衝撃だったかが分かる。
ポルトガル戦では3点リードから逆転負け

ベスト8に進出した北朝鮮は、準々決勝でポルトガルと対戦した。
試合開始後、北朝鮮は攻撃的なプレーを展開し、前半25分までに3点を奪う。ポルトガルを相手に3対0とリードし、再び世界を驚かせた。
しかし、ここから試合の流れが変わる。
ポルトガルのエウゼビオが圧倒的な得点力を発揮し、PKを含む4得点を記録。ポルトガルは最終的に5対3で逆転勝利を収めた。
北朝鮮は準々決勝で敗退したものの、初出場でベスト8という成果を残した。この大会での活躍は、現在もFIFAワールドカップ史に残る印象的な出来事として語られている。
1966年大会の北朝鮮代表の歩み
- グループリーグ初戦:ソ連に0対3で敗戦
- グループリーグ第2戦:チリと1対1で引き分け
- グループリーグ第3戦:イタリアに1対0で勝利
- 準々決勝:ポルトガルに3対5で敗戦
イタリア戦の勝利だけでなく、強豪ポルトガルを一時3点差まで追い詰めたことも、北朝鮮代表の攻撃力を示す象徴的な記録だ。
【2010年南アフリカ大会】44年ぶりの出場もグループリーグ敗退
1966年大会で世界を驚かせた北朝鮮だったが、その後は長い間ワールドカップ本大会から遠ざかった。
再び世界の舞台に戻ったのが、2010年南アフリカ大会である。
1966年から44年ぶり、男子代表にとって2度目のワールドカップ出場だった。
グループGでブラジル、ポルトガル、コートジボワールと対戦
北朝鮮が入ったグループGは、非常に厳しい組み合わせだった。
対戦相手はブラジル、ポルトガル、コートジボワール。いずれも国際舞台で実績のある強豪国だった。
| 試合 | 対戦相手 | 結果 |
|---|---|---|
| 第1戦 | ブラジル | 1対2で敗戦 |
| 第2戦 | ポルトガル | 0対7で敗戦 |
| 第3戦 | コートジボワール | 0対3で敗戦 |
3試合の合計は1得点12失点。勝ち点を獲得できず、グループリーグ最下位で大会を終えた。
ブラジル戦では強豪を相手に1得点
大会初戦の相手はブラジルだった。
北朝鮮は最終的に1対2で敗れたが、世界屈指の強豪から得点を奪った。1966年大会以来の本大会出場ということもあり、北朝鮮代表にとって大きな舞台となった。
一方、第2戦のポルトガル戦では0対7という大差で敗れた。44年前の1966年大会ではポルトガルを相手に3点を先行していたことを考えると、歴史的な対戦でありながら結果は対照的だった。
第3戦もコートジボワールに0対3で敗れ、北朝鮮の2010年大会は幕を閉じた。
歴代大会を比較すると何が分かる?
1966年大会と2010年大会の違いは、単純な勝敗だけではない。
1966年は強豪国に対しても勝負できる勢いがあり、チームとして歴史的な結果を残した。一方、2010年は世界のトップクラスとの実力差が結果に表れた大会だった。
この2大会が、北朝鮮男子代表のワールドカップ本大会における全記録となっている。
【2026年大会】アジア最終予選A組6位・勝ち点3で敗退した経緯
2026年大会に向けた北朝鮮代表は、アジア予選の厳しい競争を勝ち抜く必要があった。
今回のアジア最終予選は3次予選に相当し、北朝鮮はグループAに入った。対戦相手はイラン、ウズベキスタン、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、キルギスだった。
最終的な結果は、6位・勝ち点3。2025年6月に全10試合を終え、本大会出場の可能性が消滅した。FIFAも北朝鮮を2026年大会の予選敗退国として掲載している。
グループAの最終成績
北朝鮮の成績を整理すると、次のようになる。
勝ち点 3
試合数
10試合
勝利
0勝
引き分け
3分け
敗戦
7敗
得点
9点
失点
21点
得失点差
-12
3引き分けは、カタール戦、UAE戦、キルギス戦で記録したものだ。10試合で一度も勝利できなかったことが、最終順位に大きく影響した。
敗退を決定づけた主な試合
特に注目したいのは、2025年3月以降の試合だ。
- 2025年3月20日:カタールに1対5で敗戦
- 2025年3月25日:UAEに1対2で敗戦
- 2025年6月5日:キルギスと2対2で引き分け
- 2025年6月10日:イランに0対3で敗戦
3月のカタール戦では大量失点を喫し、続くUAE戦でも勝ち点を獲得できなかった。
キルギス戦では引き分けに持ち込んだものの、最終戦のイラン戦で敗れたため、グループ最下位が確定した。
なぜ北朝鮮は最終予選を突破できなかったのか?
敗退の背景には、大きく3つの問題があった。
1. 勝ち切る力の不足
10試合で3引き分けを記録したものの、勝利はゼロだった。引き分けを勝利に変えられなかったことが、勝ち点を伸ばせなかった直接的な要因だ。
2. 強豪国との得点差
カタール戦の1対5、イラン戦の0対3など、上位を争うチームとの試合で失点が重なった。攻撃面でも、相手の守備を崩して試合を決める力が十分ではなかった。
3. グループ内の競争水準
グループAにはイラン、ウズベキスタン、カタール、UAEといった実績のある国が集まっていた。ウズベキスタンとイランは最終的に上位2位以内に入り、本大会出場を決めている。
北朝鮮にとっては、単にアジア予選を突破するだけでなく、アジアの中堅・強豪国と安定して競り合えるチーム力を築くことが課題となった。
【2022年大会】北朝鮮がカタール大会の予選を辞退した理由
北朝鮮のワールドカップ出場歴を調べると、2022年カタール大会に出場していないことに気づく。
ただし、これは通常の予選敗退とは異なる。
北朝鮮は2022年大会のアジア予選に参加していたが、途中で出場辞退を決定した。
2021年5月にAFCが辞退を正式確認
2021年5月16日、AFCは北朝鮮サッカー協会が2022年FIFAワールドカップ・カタール大会と2023年AFCアジアカップの予選から撤退することを正式に発表した。
当時、北朝鮮はアジア2次予選のグループHに所属していた。
辞退理由については、韓国の報道機関などが新型コロナウイルス感染への懸念を伝えていた。韓国で開催予定だった集中開催方式の試合への参加を避けたことも、背景として報じられている。
ただし、AFCの辞退発表自体には、北朝鮮側の正式な理由は記載されていない。
すでに行われた試合の結果も無効に
辞退後の2021年10月28日、AFCはFIFAワールドカップ予選の公平性を保つため、北朝鮮がそれまでに行った試合の結果をすべて無効とする決定を伝えた。
つまり、北朝鮮は2022年大会で本大会出場を逃したというよりも、予選参加を途中で取りやめたというのが正確な経緯だ。
ここは2026年大会との大きな違いである。
- 2022年大会: 予選参加を辞退。
- 2026年大会: 予選を最後まで戦い、グループA最下位で敗退。
両者を同じ「予選敗退」として扱うと、北朝鮮代表の近年の歩みを正確に理解できなくなる。
【現在の実力と今後】北朝鮮代表は2030年大会に戻れるのか?
2026年大会への出場を逃した北朝鮮代表だが、男子サッカーが完全に停滞しているわけではない。
現在の実力を評価するには、ワールドカップ予選の結果だけでなく、アジアカップなど他の国際大会への取り組みも見る必要がある。
2027年AFCアジアカップへの復帰が決定
注目すべき動きが、2027年サウジアラビア大会への出場だ。
AFCが2026年10月30日に公開した北朝鮮代表のチーム紹介によると、北朝鮮は2019年以来となるアジアカップ復帰を果たす。
大会のグループBでは、以下の3か国と対戦する予定だ。
- ウズベキスタン
- バーレーン
- ヨルダン
北朝鮮には1980年大会で4位に入った実績もある。ワールドカップ予選では苦戦したものの、アジアの主要大会に再び姿を見せることは、代表チームの活動を評価するうえで重要な材料になる。
現在の北朝鮮代表の実力をどう評価する?
2026年予選の結果から判断すると、北朝鮮はアジアのトップクラスと比較して、まだ大きな実力差を抱えている。
一方、カタールやUAE、キルギスから引き分けを獲得している点は見逃せない。
試合によっては競争力を発揮できるものの、10試合を通じて勝利を記録できなかったことから、安定した試合運びや決定力に課題が残っている。
現在の代表を評価する際には、次の3つの視点が重要だ。
| 評価項目 | 現状 | 今後の課題 |
|---|---|---|
| 攻撃力 | 最終予選10試合で9得点 | 得点機会を勝利につなげる |
| 守備力 | 同21失点 | 強豪国との対戦で失点を減らす |
| 国際競争力 | 2027年アジアカップ復帰 | 強豪国との実戦経験を積む |
特に国際試合の継続的な確保は重要になる。代表チームの強化には、選手個人の能力だけでなく、異なる戦術やプレースタイルを持つ相手との対戦経験が必要だからだ。
次回ワールドカップ出場の可能性は?
北朝鮮代表が次に目指す大きな目標は、2030年ワールドカップへの出場となる。
2026年大会のアジア予選では、勝ち点3で最下位という厳しい結果に終わった。しかし、2027年アジアカップへの復帰は、国際舞台で再び実力を示す機会となる。
今後、出場の可能性を左右するポイントは次のとおりだ。
① アジアカップでの成績
ウズベキスタン、バーレーン、ヨルダンという相手との試合は、北朝鮮の現在地を測る重要な機会になる。
② 国際試合の経験
長期的なチーム強化には、アジアの強豪国や異なる地域の代表との対戦を重ねる必要がある。
③ 得点力と守備の安定
2026年予選の得失点差はマイナス12だった。強豪国との対戦で大量失点を防ぎ、接戦を勝ち切る力が求められる。
1966年のベスト8は、北朝鮮にとって大きな歴史的財産だ。しかし、過去の実績だけで次のワールドカップ出場を予測することはできない。
2027年アジアカップでどのような戦いを見せるかが、次のサイクルを占う重要な判断材料になる。
【北朝鮮ワールドカップ】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:北朝鮮代表はワールドカップに何回出場していますか?
A1:男子代表の本大会出場は通算2回です。1966年イングランド大会と2010年南アフリカ大会に出場しています。最高成績は1966年大会のベスト8です。
Q2:北朝鮮は2026年ワールドカップに出場しますか?
A2:出場しません。アジア最終予選グループAで6位となり、勝ち点3で敗退しました。
Q3:北朝鮮が1966年にイタリアを破ったスコアは?
A3:1対0です。朴斗翼が決勝ゴールを決め、北朝鮮はイタリアを破って準々決勝に進みました。
Q4:北朝鮮は2010年ワールドカップでどんな成績でしたか?
A4:グループリーグでブラジル、ポルトガル、コートジボワールと対戦し、3戦全敗でした。1得点12失点でグループ最下位となっています。
Q5:北朝鮮が2022年ワールドカップに出場しなかったのはなぜですか?
A5:予選途中で参加を辞退したためです。新型コロナウイルス感染への懸念が背景として報じられましたが、AFCの公式発表では具体的な辞退理由は明示されていません。
Q6:北朝鮮代表が次にワールドカップに出場する可能性はありますか?
A6:次の目標は2030年大会です。2027年アジアカップへの復帰が決まっており、国際試合での経験や得点力、守備力の向上が今後の鍵になります。
まとめ:北朝鮮代表の歴史は1966年の栄光から次の挑戦へ
北朝鮮男子サッカー代表のワールドカップ史は、1966年の歴史的快挙と、その後の長い苦戦という2つの側面を持っている。
最後に重要な事実を整理しておこう。
- 本大会出場回数: 2回(1966年・2010年)
- 歴代最高成績: 1966年イングランド大会ベスト8
- 2010年大会: グループリーグ3戦全敗
- 2022年大会: 新型コロナウイルス感染への懸念が報じられるなか、予選参加を辞退
- 2026年大会: アジア最終予選A組6位、勝ち点3で敗退
- 次の注目大会: 2027年AFCアジアカップ
北朝鮮代表を評価するうえで忘れてはならないのは、1966年のベスト8が偶然の一試合だけで生まれたものではなく、当時のチーム全体が国際舞台で結果を残したことだ。
一方、2010年と2026年の結果は、アジアと世界のサッカー競争が激しくなるなかで、かつての実績だけでは勝ち抜けない現実を示している。
2027年アジアカップでの戦い、そして2030年ワールドカップに向けたチーム強化。北朝鮮サッカーが再び世界の舞台に立てるかどうかは、これからの国際試合で示す結果にかかっている。