【法律の基礎知識】脅迫罪の成立要件と殺害予告の刑罰
殺害予告が犯罪になるかどうかを理解するには、刑法上の脅迫罪を知っておく必要があります。
刑法222条で定められている脅迫罪

刑法第222条では、生命、身体、自由、名誉または財産に害を加える旨を告知して人を脅迫する行為を処罰対象としています。
本人だけでなく、親族に対する危害を告知する行為も対象です。
脅迫罪の法定刑2年以下

拘禁刑
30万円以下

罰金
刑法第222条。2025年6月1日施行の拘禁刑制度に基づく現行表記。
脅迫罪が成立するか判断するポイント
殺害予告という言葉が含まれていれば、あらゆるケースで自動的に脅迫罪が成立するわけではありません。個別の事情を踏まえた法的判断が必要です。
主な判断材料は次のとおりです。
1. 害悪の告知があるか: 生命や身体などに危害を加える旨が伝えられているか。
2. 誰に向けられた内容か: 被害者本人または親族などに対する告知か。
3. 告知の内容と程度: 一般的に人を畏怖させるに足りる内容か。
4. 前後の経緯: 当事者間の関係、過去のトラブル、繰り返しの連絡などがどう関係するか。
5. 証拠があるか: メッセージ、メール、投稿記録などから事実関係を確認できるか。
実際の該当性は、個別の証拠に基づいて判断されます。被害者が恐怖を感じたかどうかだけでなく、告知の内容や状況も重要です。
脅迫罪以外に適用される可能性がある犯罪
インターネット上の殺害予告は、内容や対象によって複数の犯罪に関係する場合があります。
| 犯罪名 | 主な対象・行為 |
|---|---|
| 脅迫罪 | 特定の人や親族への危害の告知 |
| 強要罪 | 脅迫や暴行によって義務のない行為を強制する行為 |
| 威力業務妨害罪 | 威力によって店舗や施設、イベントなどの業務を妨害する行為 |
| 偽計業務妨害罪 | 虚偽の情報などによって業務を妨害する行為 |
例えば、施設やイベントへの犯行予告によって業務が妨害された場合には、脅迫罪以外の犯罪が問題になることもあります。
2026年10月の神戸市の事件は、警察への虚偽の殺害予告電話による偽計業務妨害容疑で逮捕された事例です。
警察庁も、犯行予告について「いたずら」や「冗談」という理由で正当化できるものではないと注意を促しています。
【匿名投稿の仕組み】殺害予告の発信者は特定できる?
「匿名アカウントだから身元は分からない」「アカウントを削除すれば証拠がなくなる」と考える人もいます。しかし、インターネット上の匿名性と、発信者の特定が不可能であることは同じではありません。
匿名投稿でも情報が残る仕組み
SNSや掲示板では、利用者が本名ではなくハンドルネームやアカウント名を使って投稿できます。プロフィールに実名を登録していなくても、サービス運営会社が利用者に関する情報を保有している場合があります。
発信者情報の開示制度で対象となる情報には、氏名や住所だけでなく、IPアドレスや通信日時など、発信者の特定につながる情報も含まれます。
発信者情報を確認する制度の基本的な関係
SNS・掲示板の投稿
匿名アカウントによる情報発信
プラットフォーム事業者
保有する投稿・発信者関連情報
適法な開示・捜査手続
裁判所の開示命令や法令に基づく捜査
発信者の特定につながる可能性
取得できる情報や証拠によって結果は異なる
2025年4月1日には、旧プロバイダ責任制限法を改正した「情報流通プラットフォーム対処法」が施行されました。発信者情報の開示命令など、権利侵害を受けた人が発信者情報を求めるための制度が整備されています。
ただし、これは主に権利侵害を受けた人が民事上の手続で情報開示を求める制度です。警察による刑事事件の捜査とは手続が異なります。また、すべての投稿について必ず身元を特定できるわけではありません。
発信者特定で注意したいこと
投稿者の身元を知りたいからといって、一般利用者が独自に個人情報を探し出し、SNSで公開することは避けるべきです。
誤った人物を投稿者と決め付ければ、別人への誹謗中傷やプライバシー侵害につながる可能性があります。捜査にも悪影響を与えかねません。
上坂すみれさんの事務所も、2026年9月の脅迫事案について、対象者やアカウントの特定を試みたり、情報を拡散したりしないよう呼びかけています。
【被害に遭ったら】SNSの殺害予告を通報・相談する方法
自分や家族、知人に対する殺害予告を発見したときは、投稿の真偽を自分だけで判断せず、警察への連絡を優先してください。
まず証拠を保存する
投稿が削除されたり、アカウントの表示内容が変わったりする可能性があります。警察に相談する前に、可能な範囲で次の情報を保存しておきましょう。
- 投稿内容やメッセージのスクリーンショット
- 投稿されたSNSや掲示板の名称
- 投稿ページのURL
- 投稿者のアカウント名やID
- 投稿日時・受信日時
- 関連するメールやメッセージの履歴
- 繰り返し連絡があった場合は、その経緯
スクリーンショットは投稿内容だけを切り取るのではなく、投稿者のアカウントや日時なども確認できる状態で保存することが望ましいでしょう。
警視庁も、犯行予告を発見した際には、投稿内容、URL、投稿者のアカウント情報などを保存して警察に提出するよう案内しています。
警察への相談先はどこ?
緊急性が高い場合110番
具体的な危害が迫っている、対象者や場所が指定されている、直ちに警察の対応が必要な場合。
緊急ではない警察相談
#9110
今すぐの出動を要しない不安や困りごとについて、警察に相談するための全国共通電話番号です。
サイバー事案の通報・相談
警察庁のオンライン受付窓口
具体的な被害の通報、アドバイスを求める相談、情報提供を受け付けています。居住地の都道府県警察本部や管轄警察署を選択します。
特に殺害予告や爆破予告など、人命に関係する事案について、警察庁は最寄りの警察署への通報を案内しています。緊急性がある場合は110番です。オンライン受付の回答を待って緊急通報を遅らせないでください。
インターネット・ホットラインセンターへの通報
警察庁が運用するインターネット・ホットラインセンター(IHC)は、インターネット上の違法情報や重要犯罪密接関連情報などの通報を受け付けています。
通報された情報について、内容に応じて警察への情報提供や、サイト管理者・プロバイダへの削除依頼などを行います。
ただし、IHCは警察相談窓口ではありません。電話やメールによる相談も受け付けておらず、殺人・爆破などの緊急の犯行予告については110番通報が必要です。
つまり、目的によって窓口を使い分けることが大切です。
- 身の危険が迫っている:110番
- 緊急性のない警察相談:#9110または最寄りの警察署
- サイバー事案の通報・相談:警察庁のオンライン受付
- インターネット上の違法・有害情報の通報:IHC
【プロの結論】殺害予告ランキングより重視すべき情報とは
殺害予告ランキングを調べる読者が本当に知りたいのは、単なる順位ではなく、どれほどの危険があるのか、実際に逮捕された事例はあるのか、被害に遭ったらどうすればよいのかという点ではないでしょうか。
2026年の公表統計と報道事例から、特に押さえておきたい判断基準は3つあります。
1.統計の数字と個別事件を混同しない
2025年の脅迫認知件数は5,170件、2026年1~9月は4,432件です。しかし、これらは殺害予告だけの数字ではありません。数字の大きさを正しく理解するには、罪名と集計対象を確認する必要があります。
2.逮捕報道だけで危険性を判断しない
2026年の報道事例には、SNSでの反復的な脅迫、著名人へのメール、警察への虚偽通報など、異なる性質の事件がありました。逮捕の有無だけでは、被害の深刻さや実際の危険性を測れません。
3.被害を受けた場合は早期に相談する
匿名アカウントでも、発信者情報の確認につながる制度や捜査手続があります。ただし、情報の保存状況などによって特定の可否は変わります。投稿の記録を残し、警察に早めに相談することが大切です。
ランキングの順位よりも、情報の出所、事件の具体性、警察への相談状況、被害を防ぐための対応に注目すること。 これが、殺害予告という深刻な問題を正しく理解するための基本的な視点です。
【殺害予告ランキング】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:殺害予告が多い人や芸能人の公式ランキングはありますか?
A1:警察庁が発表する、殺害予告を受けた人物や芸能人の全国ランキングは確認できません。ネット上の順位は、検索トレンドや報道件数、独自調査などを基にしたものと考えられるため、集計根拠の確認が必要です。
Q2:2026年の殺害予告は4,432件ということですか?
A2:いいえ。4,432件は2026年1~9月の脅迫全体の認知件数です。殺害予告だけを集計した数字ではありません。前年同期比では17.0%増加していますが、脅迫全体の統計として理解する必要があります。
Q3:SNSで殺害予告を受けたら、どこに相談すればよいですか?
A3:身の危険が迫っている場合は110番、緊急性がない場合は最寄りの警察署や#9110に相談してください。投稿のスクリーンショット、URL、アカウント情報、日時なども保存しておきましょう。
まとめ:殺害予告ランキングの正しい見方と2026年以降の注目点
「殺害予告ランキング」という言葉には、公的な犯罪統計とネット上の話題ランキングが混在しています。警察庁の統計で確認できるのは、殺害予告だけではなく、より広い範囲の「脅迫」という犯罪分類です。
2025年の脅迫認知件数は5,170件。2026年1~9月も4,432件に達し、前年同期比で17.0%増加しました。数字の推移を追うことは重要ですが、そのすべてを殺害予告と解釈してはいけません。
また、2026年にはSNSでの脅迫や著名人への脅迫メールなど、実際の報道事例も相次ぎました。被害の拡大を防ぐには、投稿の証拠を保存し、警察や適切な相談窓口につなげることが欠かせません。
今後も警察庁の犯罪統計、サイバー事案への対応、情報流通プラットフォーム対処法の運用状況を確認しながら、数字の裏側にある被害の実態を見極める姿勢が求められます。