【受給条件と支給額】外国人にも資産調査・就労要件は適用される?
外国人に対する生活保護の行政措置でも、基本的な審査の考え方は日本人と変わらない。
「外国人だから審査が免除される」「外国人には特別な支給額が設定されている」といった制度ではない。
資産・能力・扶養の活用が基本条件

厚生労働省が示す生活保護の基本的な要件は、次の4つである。
① 資産の活用
預貯金、生活に利用していない土地や建物など、保有する資産を生活費に充てることが原則となる。
外国人の場合も、日本国内の資産だけでなく、海外にある資産について確認が必要になる場合がある。
② 能力の活用
働くことが可能な人は、その能力に応じて就労することが求められる。
病気や障害、高齢などで働くことが難しい場合には、その事情を踏まえて判断される。
③ 他の社会保障制度の活用
年金や各種手当など、利用可能な制度があれば先に活用する。
④ 扶養義務者による援助
親族などから援助を受けられる場合には、その援助も考慮される。
ただし、親族からの援助がないことだけを理由に、生活保護の相談を諦める必要はない。
これらを踏まえ、世帯の収入が最低生活費を下回る場合に、その不足分が保護費として支給される。
外国人の生活保護費はいくら?日本人と金額は違う?

外国人専用の生活保護基準額が設定されているわけではない。
1954年通知に関する運用指針でも、保護の内容について日本人と外国人の間に別段の差を設けるべきではないとしている。
実際の金額は、次の要素によって変わる。
- 居住する地域の級地
- 世帯人数
- 世帯員の年齢
- 就労収入や年金収入
- 家賃などの住居費
- 障害や母子世帯などに関する加算
- 冬季加算などの地域的事情
基本的な計算方法は次のとおりだ。
生活保護費の基本的な計算最低生活費 − 世帯収入

最低生活費を世帯収入が下回る場合、その差額が原則として支給対象となる。収入には給与、年金、社会保障給付、親族からの援助などが含まれる。
そのため、外国人だから一律に月額何万円という決まりはない。
同じ在留資格でも、単身者と複数人世帯、都市部と地方では支給額が異なる。
生活扶助・住宅扶助・医療扶助の仕組み
外国人に対する行政措置では、生活保護に準じた各種扶助が実施される。
| 扶助の種類 | 主な内容 |
|---|---|
| 生活扶助 | 食費、衣服、光熱水費など |
| 住宅扶助 | 家賃などを定められた限度内で支給 |
| 教育扶助 | 義務教育に必要な学用品費など |
| 医療扶助 | 必要な医療サービスの費用 |
| 介護扶助 | 必要な介護サービスの費用 |
| 出産扶助 | 出産に必要な費用 |
| 生業扶助 | 就労技能の習得や高校就学などに必要な費用 |
| 葬祭扶助 | 葬祭に必要な費用 |
医療扶助は、原則として医療機関に費用が直接支払われ、本人負担はない。住宅扶助も、無制限に家賃が支給されるわけではなく、地域や世帯状況に応じた上限がある。
外国人世帯の医療扶助はいくら使われている?
医療費に関しては、厚生労働省が2025年8月に公表した「世帯主が日本の国籍を有しない被保護世帯における医療扶助額等調査」が参考になる。
2023年7月の1か月間について、全国の福祉事務所を対象に調査した結果は次のとおりだ。
約37億6,992万円
医療扶助の受給者数
40,018人
調査対象期間
1か月間
調査対象
全国の福祉事務所
この調査も、外国人だけを対象としたものではない。外国籍の世帯主がいる被保護世帯を対象にしているため、日本人の配偶者や子どもが含まれる場合がある。
また、37億円という数字は医療扶助の総額であり、個人に現金で支給された金額ではない。
医療費の実態を検証する際には、生活扶助などの生活費と、医療機関に支払われる医療扶助を混同しないことが大切だ。
自治体によって外国人への対応は違う?
生活保護に準じた行政措置の実施窓口は、原則として現在の住居地を管轄する福祉事務所である。
1954年通知では、在留カードまたは特別永住者証明書による本人確認、住居地の確認、生活状況の調査などが定められている。
自治体の福祉事務所は、個別の世帯状況を調べて保護の必要性を判断する。
ただし、自治体が独自に外国人の受給資格を自由に拡大できるという意味ではない。国の通知に沿った運用が基本となる。
実際に相談する際には、次の資料を準備しておくとよい。
- 在留カードまたは特別永住者証明書
- 預貯金や収入が分かる資料
- 家賃や住居費が分かる資料
- 年金や各種給付の受給状況
- 病気や障害などを証明する資料(該当する場合)
- 世帯構成や親族からの援助状況が分かる資料
緊急に保護が必要な場合については、1954年通知にも、通常の手続を行う時間がないときには先に必要な保護を実施できる旨が記されている。
生活に困窮している人が、書類の準備だけを理由に相談を先延ばしにする必要はない。
【2026年最新動向】外国人の生活保護制度は今後どう変わる?
2026年は、外国人の社会保障制度の適正な運用や、行政機関同士の情報連携が政策課題になっている。
ただし、制度の管理方法が変わることと、外国人の受給資格そのものが変わることは別問題だ。
2026年1月23日:外国人の受け入れに関する総合的対応策
政府は2026年1月23日、「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を決定した。
その中では、外国人が利用する社会保障制度についても適正な運用を進める方向性が示された。
生活保護制度に関しては、国籍や在留資格などの情報を把握し、入管行政との連携を進めることが検討事項となった。
2026年8月5日:在留資格を把握するためのシステム改修を検討
さらに重要なのが、2026年8月5日に開催された第3回生活保護システム等標準化検討会の事務局資料である。
厚生労働省の検討資料によると、現在の生活保護制度では、在留資格別の外国籍人数などを十分に把握できないという課題がある。
この問題への対応として、2027年6月から、マイナンバーによる情報連携を活用し、福祉事務所が国籍や在留資格などの情報を取得できるようにする方針が示されている。
その実現に向けて、生活保護システムの標準仕様書を改定する予定だ。
この変更が実現すれば、これまで十分に把握できなかった外国籍世帯の在留資格別の状況について、より詳細な統計を作成できる可能性がある。
例えば、次のような情報の把握が期待される。
- 永住者の受給状況
- 特別永住者の受給状況
- 定住者の受給状況
- 日本人の配偶者等の受給状況
- 在留資格別の被保護世帯の状況
ただし、これは現段階では情報把握の仕組みを整える取り組みであり、外国人の受給資格を新たに認めたり、対象者を一律に排除したりする法改正ではない。
2026年11月現在、外国人の受給条件は変わったのか
現行制度の基本的な枠組みは、次のように整理できる。
- 生活保護法第1条・第2条の対象は日本国民。
- 外国人への保護は1954年通知に基づく行政措置。
- 永住者、定住者、特別永住者、日本人の配偶者等などが対象の中心。
- 2014年最高裁判決による法的な位置付けは維持されている。
- 2027年6月を目標に、国籍・在留資格の情報連携を進める計画がある。
つまり、2026年の重要な変化は、受給資格の全面的な変更ではなく、制度運用の透明性や統計の精度を高める方向にある。
【よくある質問】外国人の生活保護に関するFAQ
Q1:外国人は永住者でなくても生活保護を受けられますか?
A1:可能性はある。定住者、特別永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、認定難民なども対象となり得る。ただし、在留資格や活動制限、生活困窮の状況などについて個別の確認が必要となる。
Q2:外国人の生活保護費は日本人より高いのですか?
A2:外国人専用の高額な支給基準はない。生活保護に準じた行政措置では、基本的に日本人と同様の保護内容が適用される。支給額は地域、世帯人数、年齢、収入などによって決まる。
Q3:外国人は生活保護を受けても日本に住み続けられますか?
A3:生活保護の受給だけで在留資格が自動的に取り消されるわけではない。ただし、生活保護の受給と在留資格の維持は別の制度であり、在留期間の更新や在留資格の変更については入管法上の要件に従う必要がある。
Q4:外国人の生活保護申請は自治体に断られることがありますか?
A4:在留資格が対象外である場合や、資産・収入などの調査結果から保護の必要性が認められない場合などは、保護されないことがある。また、必要な本人確認や調査に協力せず、生活実態を確認できない場合も問題となる。
Q5:外国人への生活保護は違法ではないのですか?
A5:違法ではない。外国人は生活保護法上の受給権を持たないが、1954年の厚生省通知に基づく行政措置として、一定の外国人に生活保護に準じた保護が行われている。
まとめ:外国人の生活保護は法律上の権利と行政措置を区別することが重要
2026年11月現在、外国人の生活保護は、生活保護法上の受給権と行政措置による保護という2つの仕組みを区別して理解する必要がある。
生活保護法第1条・第2条の対象は日本国民だが、1954年5月8日の厚生省通知に基づき、永住者、定住者、特別永住者、日本人の配偶者等など、一定の在留資格を持つ外国人には生活保護に準じた保護が実施されている。
2014年7月18日の最高裁判決は、外国人に生活保護法上の受給権がないことを明確にした。一方、行政措置による保護そのものを禁止したわけではない。
統計面では、2024年度の外国籍世帯主の被保護世帯に属する人員は64,993人で、全被保護人員の約3.2%だった。ただし、この数字は外国人だけの受給者数ではなく、日本人の家族も含む集計である。
今後の注目点は、2027年6月を目標とするマイナンバーによる国籍・在留資格の情報連携だ。これによって外国人の生活保護の実態が、現在よりも正確に把握できるようになる可能性がある。
外国人への生活保護を考える際には、国籍だけで判断するのではなく、法的根拠、在留資格、世帯単位の審査、支給実態を分けて検証することが欠かせない。制度の透明性を高めながら、生活に困窮する人への人道的な対応と、公平な社会保障制度の運用を両立できるかが、今後の大きな課題となる。