B型肝炎給付金は誰が対象?金額・請求期限と2032年延長法案の最新状況を徹底解説
2026年11月現在、B型肝炎給付金は、過去の集団予防接種などで注射器が連続使用されたことによってB型肝炎ウイルスに持続感染した人や、その人から母子感染した人などを対象とする国の救済制度です。対象となる病態によって、50万円から最高3,600万円の給付金が設定されています。症状のない無症候性キャリアも、所定の要件を満たせば対象になります。
現在の大きな焦点は請求期限です。現行法では2027年3月31日が期限ですが、2026年10月には2032年3月31日まで延長する改正法案が国会に提出され、衆議院厚生労働委員会で可決されました。ただし、11月2日時点では法案成立には至っていません。対象者の条件、病態別の給付金額、必要書類、和解手続き、そして延長法案の審議状況を厚生労働省などの公的資料から整理します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 対象者: 1948年7月1日から1988年1月27日までの集団予防接種等で、7歳になるまでに感染した人と、その母子感染者などが対象。
- 給付金額: 病態に応じて50万円~3,600万円。無症候性キャリアや慢性肝炎も対象になり得る。
- 請求期限: 現行法は2027年3月31日。2032年3月31日への延長法案は2026年10月30日に衆議院厚生労働委員会で可決されたものの、成立は未確定。
【対象者を確認】B型肝炎給付金はどんな人が受け取れる?

B型肝炎給付金の対象者を判断するうえで、最初に確認したいのが感染した時期と感染経路です。
単にB型肝炎ウイルスの陽性反応が出たというだけでは、給付金の支給は認められません。国が定めた救済要件に該当し、集団予防接種等と感染との因果関係が認められる必要があります。
1. 集団予防接種による一次感染者

一次感染者とは、幼少期に受けた集団予防接種等の際、注射器の連続使用によって直接B型肝炎ウイルスに持続感染した人を指します。
対象となる期間は次のとおりです。
- 対象期間:1948年7月1日~1988年1月27日
- 接種年齢:満7歳になるまで
- 対象となる行為:集団予防接種またはツベルクリン反応検査
- 感染状態:B型肝炎ウイルスの持続感染
当時は、予防接種などで注射針や注射筒を一人ずつ交換する取り扱いが徹底されておらず、同じ器具を複数の人に連続使用することがありました。
その結果、先に接種を受けた人の血液に含まれるウイルスが、次の人に感染する危険性が生じていました。
厚生労働省の訴訟の手引きでは、昭和23年7月1日から昭和63年1月27日までを国の責任が認定された期間として整理しています。
2. 母子感染・父子感染による二次感染者

本人が集団予防接種を受けていなくても、対象となる可能性があります。
それが母子感染などによる二次感染者です。
例えば、次のような関係が考えられます。
- 母親が幼少期の集団予防接種で感染した。
- 母親がB型肝炎ウイルスの持続感染者となった。
- その母親から子どもにウイルスが感染した。
- 子どもも持続感染者となった。
この場合、母親が一次感染者の救済要件を満たし、子どもにも持続感染が認められるなど、所定の条件を満たせば子どもも対象になります。
また、父子感染や二次感染者からの三次感染などについても、一定の条件のもとで救済対象となる場合があります。
ただし、感染経路によって認定要件が異なるため、母子感染以外のケースは厚生労働省の相談窓口で個別に確認する必要があります。
3. B型肝炎給付金の対象になる可能性がある人
対象者の考え方を整理すると、次のようになります。
| 対象者の区分 | 主な確認事項 |
|---|---|
| 一次感染者 | 7歳までの集団予防接種等による持続感染 |
| 母子感染者 | 一次感染者である母親からの持続感染 |
| 父子感染者 | 一次感染者である父親などからの感染について個別要件を確認 |
| 三次感染者 | 二次感染者からの感染について所定の要件を確認 |
| 相続人 | 対象となる感染者が死亡している場合など、相続関係を確認 |
なお、集団予防接種とは別の原因で感染したことが明らかな場合は、原則としてこの制度の対象になりません。
輸血、家庭内感染、性交渉など、ほかの感染経路の可能性についても確認が行われます。
【給付金額一覧】病態別50万円~3,600万円の内訳
B型肝炎給付金の金額は、感染した事実だけで一律に決まるものではありません。
B型肝炎ウイルスによって生じた病態と、20年の除斥期間が経過しているかどうかによって区分されます。
厚生労働省の2026年版訴訟の手引きと特措法に基づく金額は以下のとおりです。
出典:厚生労働省「B型肝炎訴訟の手引き」第8版、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法。軽度の肝硬変・慢性肝炎の20年経過後の金額は、現在の病態や治療歴などによって異なります。
無症候性キャリアでも600万円を受け取れる?
無症候性キャリアとは、B型肝炎ウイルスに持続感染しているものの、肝炎などの明確な症状が現れていない状態を指します。
「症状がないから給付金を受け取れない」という認識は誤りです。
無症候性キャリアも、集団予防接種等との因果関係など所定の条件を満たせば、給付対象になります。
基本となる給付金額は次のとおりです。
- 20年の除斥期間が経過していない場合:600万円
- 20年の除斥期間が経過している場合:50万円
さらに、特定無症候性持続感染者には、給付金以外にも定期検査費、定期検査手当、母子感染防止や世帯内感染防止のための医療費などの支給制度があります。
慢性肝炎の場合はいくらになる?
慢性B型肝炎の場合、基本的な給付金額は1,250万円です。
ただし、発症から20年を経過した後に提訴する場合は、現在も慢性肝炎に罹患しているか、過去に治療を受けたことがあるかなどによって、300万円または150万円に分かれます。
ここで注意したいのが、20年の除斥期間の計算方法です。
無症候性キャリアの場合は、原則として集団予防接種を受けた日、二次感染者の場合は出生時などが起算点になります。一方、慢性肝炎では原則として発症日が起算点です。
さらに、慢性肝炎が再燃・再々燃した場合には、2026年1月15日に締結された基本合意書(その3)に基づく特別な取り扱いがあります。
そのため、単純に感染した年から20年を数えて判断するのは適切ではありません。
【必要書類を解説】B型肝炎訴訟で証拠になる資料とは?
B型肝炎訴訟で大きな壁になるのが、過去の感染経路を証明するための証拠資料です。
集団予防接種を受けたのが数十年前という人も多く、当時の記録が残っていないケースもあります。
しかし、母子健康手帳が見つからないからといって、直ちに対象外になるわけではありません。
厚生労働省の2026年1月改訂版「B型肝炎訴訟の手引き」では、複数の資料によって要件を確認する方法が示されています。
代表的な必要書類・証拠資料
1. 感染状況を証明する資料
- B型肝炎ウイルスの血液検査結果
- HBs抗原・HBc抗体などの検査記録
- 持続感染を確認できる医療記録
- 医師の診断書
2. 集団予防接種を証明する資料
- 母子健康手帳
- 予防接種台帳
- 接種歴に関する陳述書
- 接種痕意見書
- 戸籍などの出生年月日を確認できる資料
母子健康手帳や予防接種台帳が残っていない場合でも、出生時期などを確認したうえで、陳述書や接種痕意見書などを使って要件を立証できる場合があります。
3. 母子感染ではないことを証明する資料
一次感染者の場合、母子感染ではないことも確認する必要があります。
代表的な資料は、母親のHBs抗原やHBc抗体の検査結果です。
母親の検査記録が残っていない場合には、ほかの医療記録や医学的知見に基づく個別判断が行われる場合もあります。
4. その他の感染経路がないことを証明する資料
- 医療機関のカルテ
- 過去の診療録
- 入院時の記録
- 輸血歴などを確認できる資料
- 必要に応じたウイルスの塩基配列検査結果
厚生労働省の手引きでは、原則として直近1年分の医療記録、持続感染が判明した時点以降の1年分、発症者については最初の発症時以降の1年分、入院歴がある場合には入院中の記録などが提出資料として示されています。
実際に必要な範囲は、個別の事情によって変わります。
母子感染を証明する場合は何が必要?
母子感染による二次感染者の場合、母親が一次感染者の救済要件を満たしていることに加えて、本人も持続感染していること、母親から感染したことを確認する必要があります。
代表的な証拠は次の2つです。
- 出生直後から持続感染していたことを示す医療資料
- 母親と本人のウイルスの塩基配列を比較したHBV分子系統解析検査の結果
母子健康手帳だけで感染経路まで証明できるとは限りません。
また、父親が持続感染者である場合などは、父親と本人のウイルスの塩基配列を比較する検査が必要になることもあります。
このように、B型肝炎給付金の審査では、感染の事実だけでなく、誰から、どのような経路で感染したのかという医学的な裏付けが重視されます。
【訴訟から受給まで】B型肝炎訴訟の和解手続きと申請の流れ
B型肝炎給付金は、厚生労働省に申請書を送れば自動的に振り込まれる制度ではありません。
原則として、国を相手に国家賠償請求訴訟を提起し、裁判所を通じた和解手続きを経て、対象者として認定される必要があります。
手続きは大きく6段階に分かれます。
受給までの6つのステップ
対象要件の確認
感染時期、集団予防接種歴、持続感染の有無、感染経路などを確認します。
医療記録・証拠資料の収集
医療機関や関係機関から診療録、検査結果、予防接種記録などを集めます。
国を相手に国家賠償請求訴訟を提起
必要書類を準備し、管轄裁判所に訴訟を提起します。
裁判所を通じた和解協議
国との間で救済要件に合致するかを証拠に基づいて確認します。追加資料の提出を求められることもあります。
和解成立
救済要件が認められると、国との和解が成立し、和解調書が作成されます。
給付金の支給請求・受給
和解成立後、医療情報基盤・診療報酬審査支払機構に給付金等の支給を請求します。
弁護士に依頼すると費用はどうなる?
B型肝炎訴訟では、弁護士に依頼して和解が成立し、給付金の支給が決定した場合、原則として給付金額の4%相当額が訴訟手当金として支給されます。
例えば、給付金が1,250万円の場合、4%相当額は50万円です。
ただし、これは弁護士費用が必ず全額無料になるという意味ではありません。弁護士事務所によって報酬体系が異なるため、契約前に着手金、成功報酬、実費、追加費用などを確認する必要があります。
2026年10月から申請先の名称が変更
手続きに関して、2026年に変更された重要な点があります。
これまで給付金の支給請求先として案内されていた社会保険診療報酬支払基金は、2026年10月1日から組織改組に伴い「医療情報基盤・診療報酬審査支払機構」に名称変更されました。
所在地も変更されているため、以前の書類や古い案内を参考にする場合は注意が必要です。
現在の主な相談窓口は次のとおりです。
| 相談内容 | 窓口 |
|---|---|
| 訴訟・対象要件 | 厚生労働省 |
| 給付金の支給請求 | 医療情報基盤・診療報酬審査支払機構 |
| 給付金等支給相談窓口 | 0120-918-027 |
| 受付時間 | 平日9時~17時(年末年始を除く) |
【2026年最新】請求期限は2027年3月31日?2032年延長法案の現在地
B型肝炎給付金を検討している人にとって、最も見逃せないのが請求期限です。
2026年11月2日時点では、現行法の期限と、国会に提出された改正法案の期限は異なります。
この2つを混同しないことが大切です。
現行法の請求期限は2027年3月31日
現在施行されている特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法では、給付金の請求期限は原則として2027年3月31日と定められています。
ただし、ここには重要な例外があります。
2027年3月31日までに訴訟提起や和解・調停の申立てを行った場合は、その後の判決確定日や和解・調停成立日から1か月を経過する日まで請求できる仕組みです。
つまり、訴訟を期限内に提起した場合、裁判所での和解が2027年3月31日以降になったとしても、一定の条件のもとで給付金の請求が可能です。
ただし、単に相談しただけでは期限を守ったことにはなりません。
2032年延長法案は何を変更する?
2026年10月9日、政府は第222回国会に「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法の一部を改正する法律案」を提出しました。
この改正案の中心は、給付金の請求期限を5年間延長することです。
変更案は次のとおりです。
| 項目 | 現行制度 | 改正法案 |
|---|---|---|
| 給付金請求期限 | 2027年3月31日 | 2032年3月31日 |
| 延長期間 | ― | 5年間 |
| 法律の施行 | 現行法が適用 | 公布日から施行する案 |
| 給付金額 | 病態別に設定 | 一律増額の改正ではない |
この延長案は、給付金を受け取る機会を確保するための措置です。
厚生労働省の提出理由では、給付金の請求状況などを踏まえて期限を延長する必要性が説明されています。
なお、改正案には医療情報基盤・診療報酬審査支払機構の長期借入金の借入れ可能期間を延長する内容も含まれています。
2026年10月30日に衆議院厚生労働委員会で可決
ここが2026年11月時点の重要な最新情報です。
改正法案の国会審議状況は次のようになっています。
| 日付 | 出来事 | 状況 |
|---|---|---|
| 2026年10月9日 | 政府が改正法案を提出 | 提出済み |
| 2026年10月27日 | 衆議院厚生労働委員会に付託 | 審査開始 |
| 2026年10月30日 | 衆議院厚生労働委員会で採決 | 可決 |
| 2026年11月2日 | 衆議院本会議・参議院の審議 | 成立・公布は未確認 |
衆議院の公式議案審議経過情報では、10月30日に厚生労働委員会で可決されたことが確認できます。
一方、衆議院本会議の審議結果や参議院の審査結果、公布年月日などは、11月2日時点で記載されていません。
したがって、2032年まで延長する方針を盛り込んだ法案は前進しているものの、成立済みの法律として扱うことはできません。
「2032年まで延長が決まった」という情報と「2032年への延長法案が審議されている」という情報は、明確に区別する必要があります。
【プロの結論】延長法案の成立を待たずに準備すべき理由
今回の延長法案が成立すれば、救済対象となる可能性のある人にとって、手続きを進める時間的な余裕が広がります。
しかし、現段階では現行法の期限が適用されています。
特に注意したいのは、過去の医療記録を集める作業です。
医療機関の統廃合やカルテの保存状況によっては、必要な資料をそろえるまでに時間がかかることがあります。母親がすでに亡くなっている場合や、予防接種を受けた時期を確認できる資料が残っていない場合は、さらに個別の検討が必要です。
したがって、延長法案の成立を待ってから動くのではなく、現行法の期限を基準に対象要件と証拠資料の確認を始めることが合理的です。
【よくある誤解を検証】B型肝炎給付金について知っておきたい判断基準
B型肝炎給付金については、制度の仕組みが複雑なため、対象者や受給条件について誤解されやすい部分があります。
特に重要なのは、感染していることと、国の救済制度で認定されることは別の問題だという点です。
症状がなければ給付金はもらえない?
これは誤解です。
無症候性キャリアも対象になり得ます。症状の有無ではなく、持続感染や感染経路などの救済要件を満たすかどうかが判断されます。
母子感染なら全員が対象?
母子感染という事実だけでは認定されません。
母親が一次感染者の要件を満たすこと、本人にも持続感染があること、母子感染であることなどを証拠によって確認する必要があります。
予防接種の記録がなければ申請できない?
必ずしもそうではありません。
母子健康手帳や予防接種台帳以外にも、陳述書、接種痕意見書、戸籍などを利用できる場合があります。
ただし、資料の代替が認められるかどうかは個別の条件によります。
すでに慢性肝炎から肝硬変に進行している場合は?
病態が進行した場合、追加給付金を請求できる制度があります。
最初の和解時に無症候性キャリアや慢性肝炎として認定され、その後に肝硬変や肝がんなどへ進行した場合でも、所定の要件を満たせば差額の追加給付を受けられる可能性があります。
最初に受け取った金額だけで、その後の救済が終了するわけではありません。
【B型肝炎給付金】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:B型肝炎給付金は現在も申請できますか?
2026年11月2日時点では申請可能です。ただし、現行法では2027年3月31日までに訴訟提起等を行う必要があります。2032年への延長法案は成立していません。
Q2:無症候性キャリアでも給付金を受け取れますか?
受け取れる可能性があります。所定の感染要件を満たせば、20年の除斥期間が経過していない場合は600万円、経過している場合は50万円が基本となります。
Q3:B型肝炎給付金の最高額はいくらですか?
最高額は3,600万円です。B型肝炎ウイルスに起因する死亡、肝がん、重度の肝硬変などが対象です。
Q4:母子感染した人も給付金の対象ですか?
対象になる場合があります。母親が一次感染者の要件を満たし、本人の持続感染と母子感染の事実が認められる必要があります。
Q5:弁護士に依頼しないと給付金は受け取れませんか?
本人による訴訟提起も可能です。厚生労働省は自分で提訴する人向けの説明資料や提出資料も公開しています。ただし、証拠収集や法的手続きが複雑なため、専門家への相談も選択肢になります。
Q6:2032年まで請求期限が延長されたのですか?
2026年11月2日時点では、まだ成立していません。10月30日に衆議院厚生労働委員会で改正法案が可決されましたが、その後の国会手続きが残っています。
Q7:すでに給付金を受け取った人も追加請求できますか?
病態が進行した場合、所定の要件を満たせば追加給付金を請求できる可能性があります。医師の診断書などで新たな病態を証明する必要があります。
まとめ:B型肝炎給付金は対象要件・証拠・期限の3点を確認
B型肝炎給付金は、過去の集団予防接種等における注射器の連続使用によって生じた感染被害を救済する制度です。
対象となるのは一次感染者だけではありません。母子感染などによる二次感染者や、所定の条件を満たす相続人も救済対象になり得ます。
給付金額は病態に応じて50万円から3,600万円まで設定され、無症候性キャリアや慢性肝炎も対象です。
2026年11月現在、最も注目すべき動きは2032年3月31日への請求期限延長法案です。衆議院厚生労働委員会では可決されましたが、法律として成立したわけではありません。
読者が今確認すべきポイントは、次の3つです。
1. 感染経路と対象要件: 集団予防接種等や母子感染との関係を確認する。
2. 証拠資料: 医療記録、予防接種記録、母子関係を証明する資料を収集する。
3. 請求期限: 現行法の2027年3月31日を基準に、早めに訴訟準備を進める。
制度の延長が成立するかどうかにかかわらず、対象となる可能性がある人にとって、早期の情報収集は大きな意味を持ちます。
まずは厚生労働省の「B型肝炎訴訟の手引き」第8版(2026年1月改訂)を確認し、自身の感染歴や家族の感染歴、医療記録の有無を整理することが、救済への第一歩です。