吉沢亮主演『国宝』を徹底解説!役作り・演技評価・2026年の受賞と見どころ

目次

2026年現在、吉沢亮の代表作として大きな存在感を放っているのが、映画『国宝』です。2025年6月6日に公開された本作は、李相日監督が吉田修一の同名小説を映画化した作品。吉沢亮が稀代の女形・立花喜久雄を演じ、横浜流星、渡辺謙ら実力派俳優とともに、歌舞伎の世界に生きる人々の50年にわたる人生を描いています。

注目すべきは、吉沢亮が撮影前から約1年半にわたって歌舞伎の稽古を重ねたことです。本人が「役者人生の集大成」と語ったほど思い入れの深い作品であり、2026年3月には第49回日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞も受賞しました。興行面でも国内実写邦画の歴史を塗り替える記録を残しています。ここでは、本人のインタビュー、公式発表、共演者や監督の証言をもとに、役作りの実態から映画化の背景、演技の評価、作品の見どころまで詳しく整理します。

📌 【この記事の重要ポイントまとめ】 - 主演・吉沢亮の役柄: 任侠の家に生まれ、歌舞伎の世界で頂点を目指す女形・立花喜久雄。 - 役作りの期間: 2023年1月から歌舞伎の稽古を始め、撮影期間を含めて約1年半を費やした。 - 共演者: 横浜流星、渡辺謙、高畑充希、寺島しのぶ、田中泯など豪華俳優陣が集結。 - 公開日: 2025年6月6日。李相日監督と吉田修一の3度目の映画化タッグ。 - 2026年の評価: 第49回日本アカデミー賞で吉沢亮が最優秀主演男優賞を受賞。 - 興行成績: 2026年2月15日時点で興行収入200億851万9000円を記録。

【作品の全貌】吉沢亮が演じた立花喜久雄とは?映画『国宝』のあらすじ

吉沢亮国宝

映画『国宝』は、歌舞伎という伝統芸能を背景に、才能、血筋、嫉妬、友情、愛情、そして芸に人生を捧げることの意味を描いた壮大な人間ドラマです。

原作は吉田修一の小説『国宝』。監督は『悪人』『怒り』などを手がけた李相日、脚本は奥寺佐渡子が担当しています。上映時間は175分、PG12指定。単純な成功物語ではなく、芸の世界で生きる人間の光と影を描いた作品です。映画公式サイトと映画.comの作品情報でも、主人公の50年にわたる歩みが本作の中心として紹介されています。

立花喜久雄の生い立ちと歌舞伎の世界への転身

吉沢亮国宝

物語の主人公は、吉沢亮演じる立花喜久雄。長崎の任侠の一門に生まれ、この世ならざる美貌と芸の才能を持った少年です。

15歳のとき、抗争によって父親を亡くした喜久雄は、上方歌舞伎の名門を率いる花井半二郎に才能を見いだされ、歌舞伎の世界へ入ります。

そこで出会うのが、横浜流星演じる大垣俊介です。俊介は歌舞伎の名門に生まれた御曹司であり、父親は半二郎。生まれながらに歌舞伎役者としての将来を期待されています。

喜久雄には血筋がない一方、俊介には名門の血筋があります。反対に、喜久雄には天性の才能があり、俊介はその才能に複雑な感情を抱くようになります。

二人は兄弟のように育ち、親友でありライバルでもある関係を築きます。しかし、歌舞伎界での立場、周囲の期待、舞台に立つ機会をめぐる出来事によって、その関係は少しずつ変化していきます。

本作が描くのは、単なる二人の競争ではありません。生まれによって定められた運命と、自らの才能で切り開こうとする人生が交差する、長い芸道の物語です。

立花喜久雄はどんな人物なのか

吉沢亮国宝

喜久雄の最大の特徴は、歌舞伎役者としての才能と、それを支える強烈な執念です。

彼は歌舞伎界の名門に生まれたわけではありません。むしろ、外部から入ってきた存在として、周囲の視線や自分の立場と向き合いながら芸を磨いていきます。

そのため、喜久雄の人生には、成功の喜びだけでなく、孤独や嫉妬、挫折、執着といった感情が複雑に入り交じります。

吉沢亮が演じる喜久雄の魅力は、舞台上の美しさと、舞台を降りた人間としての不安定さを同時に表現している点です。女形として完成された姿だけでなく、その姿にたどり着くまでの苦悩を描いているところに、本作の人間ドラマとしての深みがあります。

【吉沢亮の役作り】歌舞伎の稽古に約1年半!女形を演じるための壮絶な準備

『国宝』を語るうえで欠かせないのが、吉沢亮と横浜流星が取り組んだ歌舞伎の稽古です。

二人は歌舞伎役者を演じるにあたり、撮影前から本格的な準備を開始しました。特に吉沢亮は、これまでの俳優活動で経験してきた役作りとは異なる、身体そのものを変えていくような挑戦に向き合っています。

2023年1月から始まった歌舞伎の稽古

GQ JAPANの2025年6月のインタビューによると、吉沢亮の歌舞伎の稽古は2023年1月にスタートしました。2024年3月から6月までの撮影期間を含め、約1年半にわたって役作りを続けています。

本人はインタビューで、稽古を重ねるほど、歌舞伎役者が子どもの頃から何十年もかけて身につけてきた技術との距離を実感したと振り返っています。

「1年半では足りないなって」 吉沢亮のGQ JAPANインタビューより。歌舞伎の稽古を通じて感じた率直な思い。

この言葉には、単に難しい動きを覚えるという以上の意味があります。歌舞伎は、姿勢、歩き方、視線、手の動き、身体の重心など、細かな身体表現が積み重なって成立する伝統芸能です。

映画のために短期間で動きを覚えることと、長年の修練によって芸を身につけることは同じではありません。吉沢自身も、その違いを理解したうえで撮影に臨んでいました。

最初に取り組んだのは基本のすり足

特に興味深いのが、稽古の初期段階です。

吉沢亮と李相日監督のインタビューを掲載したFan's Voiceによると、最初の3〜4カ月は、歌舞伎の基本動作であるすり足を中心に練習しました。

浴衣を着て歩くところから始め、身体の使い方を徹底的に身につけていく。派手な舞踊や見せ場を覚える前に、基礎となる所作を繰り返したのです。

歌舞伎指導を担当したのは四代目中村鴈治郎。舞踊の振付・指導には谷口裕和が参加しました。吉沢は歌舞伎の舞台を実際に観劇し、映像資料も研究しながら、演目への理解を深めていきました。

また、2025年6月の東宝の舞台挨拶レポートでは、もともと身体が非常に柔らかかったわけではなく、後ろに反る動きも繰り返し練習し、撮影直前になってようやくできるようになったと本人が説明しています。

技術を再現するだけでは終わらなかった演技への挑戦

吉沢亮の役作りでさらに重要なのが、歌舞伎の動きを正確に再現することだけを目標にしなかった点です。

映画.comのインタビューによると、吉沢は稽古で積み重ねた技術をもとに撮影へ臨みましたが、李相日監督からは、技術的に上手に演じるだけでなく、喜久雄という人物の感情を前面に出すよう求められたといいます。

「もうちょっと喜久雄でやって」 映画.com掲載の吉沢亮・横浜流星インタビューで紹介された、李相日監督の演出。

この演出は、本作の演技を理解する重要なポイントです。

歌舞伎の様式美を正確に見せることと、映画の登場人物として感情を表現することは、必ずしも同じではありません。監督は、舞台上の動きに人物の人生や感情を重ねることで、映画ならではの歌舞伎表現を追求しました。

吉沢も、台本上の答えを探すだけでなく、喜久雄が置かれた状況を身体で感じながら演じる方法を模索したと語っています。

吉沢亮本人が語った「役者人生の集大成」

2025年4月23日に開催された完成報告会で、吉沢亮は本作に対する強い思いを明かしました。

撮影期間を含めて約1年半、これまでの仕事を調整しながら歌舞伎の稽古に取り組んだことについて、費やした時間とエネルギーは桁違いだったと説明しています。

「確実に役者人生の集大成」 2025年4月23日の映画『国宝』完成報告会での吉沢亮の発言。映画.comの報道より。

さらに、自分の代表作になればうれしいという期待も語りました。

この発言は、単に主演映画への宣伝上のコメントとして片づけられるものではありません。歌舞伎という長い歴史を持つ芸能に向き合い、自身の俳優としての経験を総動員した作品だったことがうかがえます。

【共演者・キャスト一覧】横浜流星と渡辺謙が支えた『国宝』の人間関係

『国宝』の完成度を支えているのは、吉沢亮の主演演技だけではありません。

横浜流星、渡辺謙、寺島しのぶ、高畑充希、田中泯ら、幅広い世代の俳優が歌舞伎の世界に生きる人物を演じています。それぞれの役柄が喜久雄の人生に影響を与え、物語に厚みをもたらしています。

主要キャストと役柄の関係性

映画公式サイトのキャスト・キャラクター情報をもとに、主要人物を整理しました。

役柄 出演者 人物・物語上の役割
立花喜久雄 吉沢亮 任侠の家に生まれ、歌舞伎の世界で女形として才能を開花させる主人公
大垣俊介 横浜流星 歌舞伎名門の御曹司。喜久雄の親友であり、生涯のライバル
花井半二郎 渡辺謙 上方歌舞伎の名門を率いる当主。喜久雄を歌舞伎の世界へ導く
大垣幸子 寺島しのぶ 半二郎の妻で、俊介の母親
福田春江 高畑充希 喜久雄の人生に関わる女性
彰子 森七菜 喜久雄たちの人生に関わる人物
藤駒 見上愛 物語を彩る重要人物
小野川万菊 田中泯 歌舞伎界の重鎮
少年喜久雄 黒川想矢 喜久雄の少年時代
少年俊介 越山敬達 俊介の少年時代
吾妻千五郎 中村鴈治郎 歌舞伎界の人物。本作の歌舞伎指導も担当

出典:映画『国宝』公式サイトのキャスト・キャラクター情報。

横浜流星が演じた大垣俊介の重要性

本作において、横浜流星の存在は非常に重要です。

俊介は歌舞伎の名門に生まれた御曹司で、父親の跡を継ぐことを期待されてきた人物です。一方、喜久雄は血筋に恵まれないながらも、圧倒的な才能で歌舞伎界に食い込んでいきます。

二人の関係は、単純な勝ち負けでは説明できません。喜久雄には俊介が持っている血筋がなく、俊介には喜久雄が持つ才能への複雑な思いがあります。互いを認めながらも、相手の存在によって自分の価値を問い続ける関係です。

横浜流星も、吉沢と同じく長期間の歌舞伎の稽古に取り組みました。映画.comのインタビューでは、歌舞伎の世界に敬意を払いながら、知らないことを学び、無我夢中で役を生きたと振り返っています。

2026年3月の日本アカデミー賞授賞式では、吉沢亮が最優秀主演男優賞を受賞した際、プレゼンターを務めた横浜流星からトロフィーを受け取りました。吉沢は受賞スピーチで、横浜がいなければ喜久雄にはなれなかったと感謝を伝えています。

渡辺謙が演じる花井半二郎と歌舞伎界の重み

渡辺謙が演じる花井半二郎は、喜久雄の人生を大きく変える人物です。

歌舞伎の名門を率いる立場にあり、喜久雄の才能を見いだして歌舞伎の世界へ迎え入れます。同時に、実の息子である俊介との関係も背負っており、家の伝統と個人の才能という本作の中心テーマに深く関わっています。

また、寺島しのぶ演じる幸子は、名門の家を支える女性として、喜久雄と俊介の関係に影響を与えます。高畑充希や森七菜らが演じる人物も、芸だけでは語れない主人公たちの人生を形づくります。

若い世代の吉沢亮・横浜流星と、渡辺謙・田中泯ら経験豊富な俳優陣の共演も、本作の大きな魅力です。

【映画化の経緯】吉田修一の原作小説と李相日監督のこだわり

映画『国宝』の魅力をさらに深く理解するには、原作小説が生まれた背景と、李相日監督が映画化を実現するまでの経緯を知ることが大切です。

吉田修一は3年間、歌舞伎の黒衣として舞台裏を取材

原作者の吉田修一は、歌舞伎の世界を描くために、実際の舞台裏へ足を運びました。

朝日新聞出版の特集記事によると、吉田は歌舞伎役者の四代目中村鴈治郎との出会いをきっかけに、黒衣の衣装を用意してもらい、舞台裏を見学する機会を得ています。

黒衣とは、舞台上で役者の補助や舞台進行を担う黒装束の人々です。吉田は鴈治郎に付き添い、歌舞伎座をはじめ全国の劇場を訪れ、楽屋や舞台裏の様子を取材しました。

その経験は、小説の描写に大きく生かされています。舞台上の華やかな姿だけではなく、役者の汗、楽屋での生活、舞台を支える人々の仕事まで視野に入れた作品になっているのです。

原作小説『国宝』の連載・刊行年表

原作は2017年から2018年にかけて朝日新聞で連載されました。その後、単行本として刊行され、2021年には文庫化されています。

時期 出来事 内容
2017年1月 新聞連載開始 朝日新聞朝刊で連載が始まる
2018年5月 連載終了 約1年5カ月にわたる連載が完結
2018年9月 単行本刊行 朝日新聞出版から上下巻として刊行
2019年 文学賞受賞 芸術選奨文部科学大臣賞、中央公論文芸賞を受賞
2021年9月 文庫化 朝日文庫から上下巻が刊行
2024年3月 映画化決定 吉沢亮主演、李相日監督による映画化が発表
2025年6月6日 映画公開 全国東宝系で公開

出典:朝日新聞出版の原作特集・映画化発表資料。

李相日監督が女形を映画にしたかった理由

李相日監督は、以前から歌舞伎の女形を中心にした映画を構想していました。

シネマトゥデイのインタビューによると、当初は実在する女形をモデルにした映画を考えていたものの、さまざまな条件が整わず、一度は企画を断念したといいます。

その後、吉田修一が歌舞伎を題材にした小説を執筆することを知り、作品の完成を待つことになりました。

李監督にとって吉田作品の映画化は、『悪人』(2010年)、『怒り』(2016年)に続く3作目。原作と監督の長年の関心が重なったことで、『国宝』の映画化が実現しました。

映画公式サイトに掲載された監督のコメントでも、喜久雄役の決め手として吉沢亮の存在が挙げられています。美しさと虚しさを併せ持つ存在感、そして俳優としての成長が、主人公を演じるうえで大きな理由になったと説明されています。

小説と映画では何が違うのか

原作小説は、歌舞伎を中心に芸能の世界を幅広く描いた大河小説です。一方、映画では175分という限られた時間の中で、喜久雄と俊介の関係や歌舞伎の舞台表現に焦点を絞っています。

映画.comの批評では、奥寺佐渡子の脚本が歌舞伎に焦点を当てることで、作品の主題をより明確にした点が評価されています。

つまり、映画版は原作をそのまま映像に置き換えたものではありません。小説の持つ大きな世界観を受け継ぎながら、映像と音楽、俳優の身体表現によって芸道の物語を再構築した作品です。

【演技の評判と2026年の実績】日本アカデミー賞受賞・興収200億円の意味

公開前から大きな期待を集めていた『国宝』ですが、2026年には国内映画賞と興行成績の両面で、さらに大きな実績を残しました。

吉沢亮が第49回日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞を受賞

2026年3月13日に開催された第49回日本アカデミー賞で、吉沢亮は『国宝』の演技により最優秀主演男優賞を受賞しました。

吉沢にとっては初めての最優秀主演男優賞です。日本アカデミー賞公式発表によると、『国宝』は最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞などを含め、最優秀賞を10部門で受賞しました。

主な受賞は次のとおりです。

- 最優秀作品賞:『国宝』
- 最優秀監督賞:李相日
- 最優秀脚本賞:奥寺佐渡子
- 最優秀主演男優賞:吉沢亮
- 最優秀撮影賞:ソフィアン・エル・ファニ
- 最優秀照明賞:中村裕樹
- 最優秀音楽賞:原摩利彦
- 最優秀美術賞:種田陽平・下山奈緒
- 最優秀録音賞:白取貢
- 最優秀編集賞:今井剛

吉沢は受賞スピーチで、横浜流星とともに厳しい稽古期間を乗り越えたことに触れ、共演者への感謝を伝えました。

この受賞は、吉沢亮の演技が作品の中心的な成果として評価されたことを示すものです。また、俳優個人だけでなく、監督、脚本、撮影、美術、音楽など、映画全体の制作力が高く評価された点も見逃せません。

興行収入200億円突破!実写邦画の歴史を更新

『国宝』の成功は、映画賞だけにとどまりません。

2025年11月には、2003年公開の『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』の興行収入173億5000万円を超え、実写邦画の歴代興行収入記録を更新しました。

さらに、日本アカデミー賞公式サイトが紹介した2026年2月15日時点の数字は、次のとおりです。



国内興行収入(2026年2月15日時点)

200億851万9000円




観客動員数

1,415万2409人




公開からの経過日数

255日間




出典:第49回日本アカデミー賞公式サイトの受賞紹介。

実写邦画の興行記録を22年ぶりに更新したことに加え、アニメーション映画を含む日本公開作品全体でも歴代10位に入る記録となりました。

3時間近い上映時間の作品が幅広い観客を集めたことは、歌舞伎という専門性の高い題材を、一般の映画ファンにも届くエンターテインメントへと昇華できたことを示しています。

アカデミー賞にもノミネート!ただし受賞とは異なる

国際的な評価という点でも、『国宝』は大きな成果を残しました。

第98回アカデミー賞では、メイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされました。日本映画として同部門へのノミネートは初めてのことです。

女形の白塗り、かつら、髪結い、舞台上の人物を形づくる繊細なメイクなど、作品の視覚表現が国際的な評価につながりました。

ただし、2026年3月15日に行われた授賞式では、『国宝』は受賞を逃しています。同部門の受賞作品は『フランケンシュタイン』でした。

したがって、2026年時点での正確な評価は、アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞ノミネート作品です。受賞したとする情報とは区別する必要があります。

吉沢亮の演技はなぜ評価されたのか

吉沢亮の演技に対する評価を考えるとき、注目したいのは三つの要素です。

一つ目は、女形としての身体表現です。顔の角度、首の動き、歩き方、指先まで意識された所作は、長期間の稽古によって身につけられたものです。

二つ目は、喜久雄の内面を表現する力です。舞台上では美しく完成された姿を見せながら、舞台を降りると嫉妬や孤独、野心に揺れる。その二面性を演じ分けています。

三つ目は、50年という長い時間を演じ切ることです。若い頃から成熟した役者へと変化する主人公の人生を、外見だけでなく、身体の使い方や表情の変化でも伝えています。

映画.comの批評でも、吉沢亮と横浜流星の二人が歌舞伎の所作を含めた難度の高い演技に挑み、李相日監督がその表現を作品全体としてまとめ上げた点が評価されています。

賞の受賞歴と批評の内容を合わせて見ると、『国宝』は吉沢亮の美貌だけに依存した作品ではなく、長期間の身体訓練と内面表現が結びついた主演作として評価されていることが分かります。

【映画『国宝』の見どころ】歌舞伎の美しさだけではない3つの魅力

本作の見どころは、華やかな歌舞伎の舞台だけではありません。映画という表現手段を使い、伝統芸能と人間ドラマを結びつけているところに大きな特徴があります。

1. 歌舞伎の代表的な演目と人物の人生が重なる

映画には『連獅子』『鷺娘』『二人藤娘』『二人道成寺』『曽根崎心中』など、歌舞伎の演目が登場します。

これらは単なる舞台上の見せ場ではありません。喜久雄や俊介が抱える感情、二人の関係、人生の転換点と重なるように構成されています。

Fan's Voiceの吉沢亮・李相日監督インタビューでは、監督自身が、歌舞伎の演目と通常の物語の場面を境界なくつなげることを意識したと説明しています。

つまり、舞台上で人物が演じる物語と、舞台裏で実際に生きている人物の人生が響き合う構成です。

2. 女形の美しさと人間としての苦悩の対比

女形は、男性の身体で女性を表現する歌舞伎独自の芸です。

映画では、白塗り、衣装、かつら、姿勢、指先の動きなどを通して、女形ならではの様式美を表現しています。

しかし、本作が描くのは美しい舞台姿だけではありません。その美しさを成立させるための鍛錬や、芸を極めようとする人間の執念も描かれています。

特に喜久雄の舞台上の姿と、私生活での葛藤の対比は印象的です。舞台では完璧な美しさを求められながら、一人の人間としては迷い、傷つき、他人を羨むこともある。そのギャップが作品の深みを生んでいます。

3. 衣装・美術・撮影によって再現された歌舞伎の世界

本作は俳優の演技だけでなく、映像を構成する技術面にも注目したい作品です。

撮影はソフィアン・エル・ファニ、美術監督は種田陽平が担当。衣装や装飾、舞台美術、メイクアップなど、歌舞伎の世界を映像として成立させるために多くの専門スタッフが参加しています。

第98回アカデミー賞のメイクアップ&ヘアスタイリング賞へのノミネートも、こうした視覚表現への国際的な評価を示しています。

舞台の華やかさと、その裏側にある緊張感を映像として見せることで、歌舞伎に詳しくない観客でも作品世界に入り込みやすくなっています。

『国宝』はどんな人におすすめ?鑑賞前に知っておきたいこと

本作は、歌舞伎ファンだけでなく、幅広い映画ファンに向けた人間ドラマです。ただし、上映時間は175分と長く、展開もじっくり描かれます。

鑑賞する人 おすすめできる理由・注意点
吉沢亮・横浜流星のファン 二人の長期間の稽古の成果と、これまでとは異なる演技を楽しめる
歌舞伎に興味がある人 女形の所作や舞台演目、伝統芸能の舞台裏に触れられる
重厚な人間ドラマが好きな人 血筋、才能、友情、嫉妬、人生をめぐる物語を堪能できる
映像美を重視する人 衣装、メイク、舞台美術、撮影の完成度に注目できる
短時間でテンポよく楽しみたい人 175分の長尺と、人物関係を丁寧に描く構成には注意が必要

特におすすめしたいのは、俳優の演技をじっくり味わいたい人です。喜久雄の舞台上の表情だけでなく、舞台を降りたときの視線や姿勢の変化にも注目すると、物語をより深く楽しめます。

また、鑑賞後に原作小説を読むのもおすすめです。映画では描き切れない人物の背景や、歌舞伎の世界をより広い視点から理解するきっかけになります。

2026年11月現在の配信・Blu-ray情報

2026年11月現在、映画『国宝』公式サイトでは、Prime Video、U-NEXT、J:COM STREAMでの配信が案内されています。

また、Blu-ray・DVDは2026年12月2日(水)発売予定です。豪華版には、メイキングや未公開シーン、舞台挨拶などの特典映像が収録されるほか、歌舞伎シーンの特別ロングバージョンも用意されています。

劇場公開時に見逃した人は配信で鑑賞でき、作品を繰り返し楽しみたい人はBlu-ray・DVDの発売も選択肢になります。配信プランや視聴条件は各サービスの案内で確認してください。

【吉沢亮主演『国宝』】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:映画『国宝』の公開日はいつですか?

2025年6月6日です。李相日監督が吉田修一の同名小説を映画化し、吉沢亮が主演を務めました。上映時間は175分、PG12指定の作品です。

Q2:吉沢亮は『国宝』の役作りにどれくらい時間をかけましたか?

撮影期間を含めて約1年半です。2023年1月に稽古を始め、初期の3〜4カ月はすり足などの基礎練習に取り組みました。歌舞伎指導は中村鴈治郎、舞踊の振付・指導は谷口裕和が担当しています。

Q3:吉沢亮は映画『国宝』で何か賞を受賞しましたか?

2026年3月13日の第49回日本アカデミー賞で、最優秀主演男優賞を受賞しました。また、作品自体も最優秀作品賞など10部門の最優秀賞を獲得しています。

Q4:映画『国宝』はアカデミー賞を受賞しましたか?

第98回アカデミー賞のメイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされましたが、受賞はしていません。授賞式では『フランケンシュタイン』が同賞を受賞しました。

Q5:映画『国宝』は現在どこで視聴できますか?

2026年11月現在、公式サイトではPrime Video、U-NEXT、J:COM STREAMでの配信が案内されています。また、Blu-ray・DVDは2026年12月2日に発売予定です。

まとめ:吉沢亮にとって『国宝』はなぜ特別な代表作になったのか

映画『国宝』は、吉沢亮の美貌や人気だけで成立した作品ではありません。

約1年半にわたる歌舞伎の稽古、女形としての身体表現、喜久雄という人物の複雑な内面へのアプローチ。そのすべてが重なり、俳優としての新たな可能性を示す主演作になりました。

さらに、横浜流星との緊張感のある共演、渡辺謙や田中泯ら実力派俳優の存在、吉田修一の原作が持つ奥深さ、李相日監督の演出が一つの作品として結実しています。

2026年には日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞し、国内興行収入も200億円を突破。アカデミー賞へのノミネートも果たしました。国内外で作品の存在感を示したことは、吉沢亮の俳優人生においても大きな転換点になったはずです。

そして、作品を評価するうえで忘れてはいけないのが、歌舞伎という伝統芸能への敬意です。吉沢亮自身が稽古を通して感じた、長年芸を磨いてきた歌舞伎役者への尊敬。それが演技の根底にあります。

『国宝』の本当の見どころは、誰が勝ち、誰が頂点に立つのかという結果だけではありません。血筋と才能、芸と人生、舞台上の美しさと人間の苦悩。そのすべてを背負って生きる喜久雄の姿にあります。

吉沢亮の代表作を知りたい人、横浜流星との共演を楽しみたい人、歌舞伎の世界を映画から知りたい人にとって、2026年に改めて鑑賞する価値のある一本です。