【意味と歌詞の仕組み】なぜ神様に選んでもらうのか?

目次

「天の神様の言う通り」という言葉には、選択を自分だけで決めず、運や偶然に委ねるという遊びの仕組みが込められています。

「どちらにしようかな」と「どれにしようかな」の違い

天の神様の言う通り

実は、歌い出しにも複数のパターンがあります。

- どちらにしようかな
- どれにしようかな
- どっちにしようかな
- どっちがいいかな
- どっちどっち

「どちら」は基本的に二者択一を連想させますが、「どれ」は三つ以上の選択肢にも使いやすい表現です。

山陰中央新報の取材でも、北海道では「どれにしようかな」という歌い出しを使い、三つ以上の候補から選ぶことが多かったという事例が紹介されています。

また、神様の呼び方も一つではありません。「天神様」「天の神様」「神様」のほか、地域の寺社や神仏に関係する名称が登場することもあります。

「なのなのな」や「柿の種」に深い意味はある?

天の神様の言う通り

歌詞を一つひとつ意味の面から解釈しようとすると、少し不思議な表現が多いことに気づきます。

例えば「あべべのべ」「なのなのな」「ぷっとこいて」などは、文章として読むと意味が分かりにくいものです。

しかし、この歌の目的は物語を伝えることではありません。

選択肢を順番に指し示すため、言葉を一定のテンポで発することが重要です。そのため、意味の明確さよりも、発音のしやすさや音の面白さが優先されます。

「柿の種」については、民話研究者の酒井董美氏が、柿が昔の人々にとって身近で楽しみのある食べ物だったことや、『さるかに合戦』との関係を指摘しています。

ただし、柿の種が歌詞に採用された最初の理由まで確定しているわけではありません。音の響き、食文化、子どもにとっての身近さなど、複数の要素が考えられます。

数え歌に共通するリズムの秘密

天の神様の言う通り

この歌の面白さを理解するには、2014年の森薫氏の研究が参考になります。

研究では、歌い始めの部分と後半部分で、リズムの特徴が変化することが分析されています。


歌詞のリズムが変わる仕組み


前半
どれにしようかな、天の神様の言う通り

拍子やテンポが一定になりにくく、言葉のイントネーションに合わせて進む部分。


中盤
鉄砲撃ってバンバンバン

4拍子を基盤にしたリズムが現れ、テンポが安定しやすくなる部分。


後半
あのねのね、柿の種、玉手箱

短い言葉を組み合わせ、休みを挟みながら自由に歌詞を増やせる部分。

森薫氏「わらべうたの多様性をうみだす諸要因についての一試論」(2014年)の分析をもとに整理。

特に重要なのは、歌のリズムが安定してくるほど、歌詞の自由度も高くなるという点です。

決まったリズムがあるからこそ、子どもたちは新しい言葉を付け足せます。

この構造こそが、650件以上もの続きの言葉が集まる背景を理解する鍵になります。

【遊び方を解説】天の神様の言う通りはどうやって使う?

基本的な遊び方は簡単です。特別な道具も必要ありません。

基本の遊び方

1. 選びたいものを二つ以上並べる。
2. 最初の候補から順番に指を向ける。
3. 「どちらにしようかな、天の神様の言う通り」と唱える。
4. 一音または一拍ごとに、指す対象を交互に移動させる。
5. 最後の音で指していたものを選ぶ。

例えば、赤いお菓子と青いお菓子のどちらにするか迷った場合、歌いながら交互に指を動かし、最後に指していた方を選びます。

三つ以上の候補でも遊べる?

もちろん可能です。

二つの場合は左右に交互に指を動かしますが、三つ以上なら左から右へ順番に移動させ、最後まで来たら最初に戻る方法などがあります。

この場合、最後に指された候補が選ばれます。

気に入らない結果が出たら?

ここが、この遊びの特徴です。

最初に選ばれたものが気に入らない場合、地域によっては次のフレーズを追加します。

「鉄砲撃ってバンバンバン、もうひとつおまけにバンバンバン」

さらに歌を延長して、もう一度選ぶこともあります。

森氏の研究でも、希望するものに当たるまで追加のフレーズを繰り返す遊び方が確認されています。

ただし、これは地域や遊ぶ仲間によってルールが違います。最初の結果で必ず決定する遊び方もあれば、納得するまで続ける遊び方もあります。

【プロの結論】天の神様の言う通りは正解のない生きた文化

この数え歌を調べると、興味深い事実が浮かび上がります。

それは、全国で歌い継がれているにもかかわらず、誰もが同じ歌詞を使っているわけではないということです。

1911年頃に生まれた世代にまでさかのぼる採集記録があり、1999年から甲南女子大学の田中千晶氏が継続的に収集し、2025年には650件以上の続きの言葉が報道されました。

さらに、音楽研究では、リズムと身体の動き、即興的な言葉遊びの関係も明らかになっています。

知っておきたい3つのポイント

1. 正式な歌詞を探す必要はない

「柿の種」が正解で「なのなのな」が間違いという関係ではありません。どちらも伝承されてきた歌詞の一つです。

2. 地域差は都道府県だけでは説明できない

関東と関西で傾向は見られますが、学校、家庭、友人関係による違いも大きく、地域の境界線を明確に引くことはできません。

3. 歌詞が変わること自体に文化的な価値がある

子どもたちが身近な言葉を取り入れ、面白い響きを加え、遊びながら変化させていく。その過程そのものが、わらべうたの伝承です。

この歌は、昔の歌詞をそのまま保存するだけの文化ではありません。新しい世代が新しい言葉を加えることで、今も変化し続けています。

【よくある質問】天の神様の言う通りに関するFAQ

Q1:天の神様の言う通りの続きで一番有名なのは何ですか?

「なのなのな」「柿の種」「鉄砲撃ってバンバンバン」などが代表的です。ただし、全国共通の人気順位が確定しているわけではありません。

Q2:天の神様の言う通りはいつからある歌ですか?

明治44年(1911年)生まれの女性から採集された記録が、2014年の研究論文で紹介されています。少なくとも明治末期には伝承されていたことがうかがえますが、正確な成立年は分かっていません。

Q3:天の神様の言う通りは関東と関西で違いますか?

違いがあります。関東では「なのなのな」、関西では「柿の種」や「ぷっとこいて」などが報告されています。ただし、地域内でも複数のバリエーションがあります。

Q4:なぜ「柿の種」が歌詞に入っているのですか?

言葉の響きやリズムのよさ、食べ物としての親しみやすさなどが考えられます。5文字の言葉を当てはめる歌詞の構造も関係しています。

Q5:「天の神様の言う通り」と「神様の言う通り」は同じ歌ですか?

基本的には同じ選択遊びです。「どちら」「どれ」「どっち」などの歌い出しや、神様の呼び方が異なるバリエーションがあります。

Q6:続きの歌詞は650種類以上あるのですか?

2025年12月のTBS報道では650件以上の続きの言葉が紹介されています。ただし、これは収集された回答の件数であり、650種類の完全に異なる歌詞が確定したという意味ではありません。

まとめ:天の神様の言う通りは地域と世代を超えて変化するわらべうた

「どちらにしようかな、天の神様の言う通り」は、子どもたちが選択肢を決めるときに使う、日本の伝統的な数え歌です。

続きには「柿の種」「なのなのな」「鉄砲撃ってバンバンバン」「あのねのね」などがあり、地域や世代によって異なる表現が受け継がれています。

1911年頃にさかのぼる採集記録、甲南女子大学の田中千晶氏による650件以上の収集、そして2014年の音楽研究から見えてくるのは、歌詞が固定されていないからこそ長く伝わってきたという特徴です。

2026年現在も、この歌には全国共通の正解がありません。

北海道で覚えた人と大阪で覚えた人、親と子ども、隣り合う学校の友達同士でさえ、違う続きを口ずさむことがあります。

昔、自分が歌っていた続きを思い出したとき、それは単なる懐かしい記憶ではなく、自分が育った地域や時代の文化を映す小さな記録なのかもしれません。

「どちらにしようかな、天の神様の言う通り」。あなたが覚えている続きも、この歌を未来へ伝える大切な一つのバリエーションです。


主な参考資料:東京未来大学・森薫「わらべうたの多様性をうみだす諸要因についての一試論」(2014年)、まいどなニュース(2020年12月5日)、山陰放送(2022年12月13日)、山陰中央新報(2022年5月30日)、ラジオ関西(2024年11月1日)、TBSテレビ「Nスタ」(2025年12月5日)。