【まず結論】しゃけとさけは別の魚ではない!どっちの読み方も正しい
「しゃけ」と「さけ」の違いを一言で説明するなら、同じ魚を指す、異なる読み方です。
魚の分類、生物学的な種類、基本的な意味に違いはありません。たとえば、北海道で水揚げされたシロザケを「サケ」と呼んでも「シャケ」と呼んでも、別の魚になるわけではありません。
この点は、北海道の水産研究を担う北海道立総合研究機構も明確に説明しています。同機構の2015年8月28日公開の「第48回 サケ・マス」では、サケとシャケについて、鮭の読み方の違いであり、同じ意味だとしています。
では、なぜ2種類の呼び方が定着したのでしょうか。そこには、日本語の発音の変化、地域ごとの言葉の習慣、食文化の違いが関係しています。
辞書ではどちらが正しい?

小学館の「デジタル大辞泉」では、「さけ」を鮭の見出し語として掲載し、「しゃけ」については「さけ(鮭)に同じ」と説明しています。
つまり、辞書上は「さけ」が基本的な読み方であり、「しゃけ」も認められている読み方です。
新聞や放送などの公的な文章では「サケ」が一般的ですが、日常会話で「シャケ」と言っても間違いではありません。
読み方の使い分け
さけ(サケ)
辞書の基本見出し、学術的な説明、新聞・報道などで使われる。
しゃけ(シャケ)
日常会話や食卓、おにぎりの具材などで広く使われる。
したがって、「シャケは間違った日本語」「サケだけが正解」という理解は正確ではありません。標準的な読み方と、日常的に定着した読み方の違いとして捉えるのが適切です。
【語源と歴史を検証】さけは平安時代、しゃけは江戸時代から確認できる

2つの呼び方の歴史を比較すると、興味深い事実が浮かび上がります。「さけ」という呼び方は非常に古く、「しゃけ」の確実な用例は、それより後の時代に確認されています。
「さけ」の歴史は898~901年ごろまでさかのぼる
「さけ」という読み方の古い記録として知られるのが、平安初期に編纂された漢和辞書『新撰字鏡』です。
小学館の「精選版 日本国語大辞典」には、同書の898~901年ごろの記録が掲載されています。「鮭」の字に「佐介」という読みが示されており、現在の「さけ」に相当します。
さらに、鎌倉時代初期の説話集『宇治拾遺物語』(1221年ごろ)にも、鮭を京都へ運ぶ記述があります。鮭が当時すでに流通し、食文化に深く関わっていたことがうかがえます。
「しゃけ」の確実な用例は1833~1844年ごろ
一方、「しゃけ」という読み方については、『日本国語大辞典』が江戸後期の『喰物生類むり問答』(1833~1844年)を初出の実例として紹介しています。
同書に掲載されている表現は次のとおりです。
「寺にあらずして栗といふがいかに、宮にあらねど鮭(シャケ)といふがごとし」
これは「栗(くり)」と「庫裏(くり)」、「鮭(しゃけ)」と「社家(しゃけ)」を掛け合わせた言葉遊びです。
この用例から分かるのは、江戸後期にはすでに「しゃけ」という読み方が使われていたことです。ただし、初出の実例は現存する資料で確認できる古い用例であり、実際にその言葉が生まれた瞬間を示すものではありません。
歴史的な違いを時系列で整理
この歴史を整理したうえで注目したいのが、ジャパンナレッジの日本語解説「第330回『鮭』を何と呼ぶか?」です。同記事は『日本国語大辞典』の用例や国語審議会の記録を紹介し、シャケをサケのなまりとして扱う歴史的な考え方を説明しています。
ただし、現在の辞書がシャケを認めている以上、過去の標準語的な扱いだけを理由に、現代のシャケという言い方を誤用と判断することはできません。
【語源・由来の謎】シャケはアイヌ語から来た?サケが変化した?
「しゃけ」の語源を調べると、アイヌ語に由来するという説を目にすることがあります。一方、日本語の「さけ」が発音の変化によって「しゃけ」になったという説明もあります。
どちらが正しいのでしょうか。
アイヌ語由来説と日本語由来説
北海道立総合研究機構は、シャケとサケの語源について、次の2つの可能性を紹介しています。
- アイヌ語由来説:アイヌ語に由来する「シャケ」が「サケ」になったとする考え方。
- 日本語由来説:日本語の「サケ」が「シャケ」になったとする考え方。
同機構の解説では、どちらが正しいかは明らかになっていません。
ここで注意したいのは、北海道で鮭が重要な食料であり、アイヌ文化と深い関係を持ってきたことと、「シャケ」という言葉の語源がアイヌ語であることは、別の問題だという点です。
地域の食文化との関係だけで、言葉の起源まで断定することはできません。
「サケ」が「シャケ」に変化したという説は?
日本語の発音には、時代や地域によって異なる形が生まれる現象があります。「サ行」と「シャ行」の発音の違いも、その一例として考えられてきました。
ジャパンナレッジが紹介する第5期国語審議会の記録では、「サケ(シャケ)」が発音上のなまりの例として取り上げられています。
この考え方に基づけば、シャケはサケから派生した発音の一つと理解できます。ただし、北海道立総合研究機構が指摘するように、語源そのものには未解明の部分があります。
つまり、現時点で確実に説明できるのは、両者が同じ鮭を指すことと、サケのほうが古い文献で確認できることです。語源の方向性については、断定できる段階にはありません。
【地域差・方言を比較】東京や関東だけでなく各地でシャケが使われる
「自分はシャケと呼ぶけれど、家族はサケと呼ぶ」「北海道出身の人がシャケと言っていた」など、呼び方に違いを感じた経験はないでしょうか。
こうした違いには、地域ごとの言葉の習慣が関係しています。
日本国語大辞典に掲載された地域差
ジャパンナレッジの日本語解説では、『日本国語大辞典』の方言資料に基づき、「シャケ」「シヤケ」の使用地域が紹介されています。
掲載されている地域には、次のような場所があります。
- 埼玉県
- 千葉県
- 神奈川県
- 山梨県
- 静岡県
- 兵庫県神戸地域
- 紀州・和歌山県
- 広島県
- 茨城県(シヤケという表記)
これらは辞書に収録された方言資料に見られる分布であり、現在の各地域の住民全員が同じ呼び方をするという意味ではありません。
国立国語研究所も「鮭」の読み方の地域差を紹介
国立国語研究所の「ことば研究館」に掲載された2018年10月9日の解説では、漢字の地域差を取り上げています。
その中で「鮭」は、地域によって「さけ」「しゃけ」と読み方が変わる例として紹介されています。
つまり、シャケという読み方は単なる個人の言い間違いではなく、日本語の地域差として捉えられるものです。
なぜ同じ日本でも呼び方が違うのか
言葉は辞書だけで統一されるわけではありません。家庭で使われる言葉、地域の食文化、世代間の会話などを通じて、自然に定着していきます。
たとえば、食卓で焼いた鮭を「シャケ」と呼ぶ家庭で育った人は、大人になってからもその呼び方を使う可能性があります。一方、魚市場や水産関係の仕事で「サケ」という名称に日常的に触れている人は、サケという呼び方が自然に感じられるかもしれません。
このような違いは、正誤の問題ではなく、言葉が使われる環境の違いです。
【加工品説の真相】生はサケ、塩鮭やおにぎりはシャケという説は本当?
「生きている魚はサケ、焼いたり塩漬けにしたりするとシャケになる」という説は、鮭の呼び方をめぐる代表的な疑問です。
たしかに、スーパーでは「生鮭」と表示され、おにぎりの具材には「しゃけ」と書かれていることがあります。この違いを見ると、加工状態によって名前が変わるように感じるのも無理はありません。
しかし、言語学的な根拠は確認されていません。
生鮭と塩鮭は食品としての区別
まず、食品売り場における「生鮭」と「塩鮭」の違いを整理しましょう。
生鮭(なまざけ)
塩を加えていない鮭。料理する前の切り身として販売されることが多い。焼き物、鍋、ムニエルなどに使われる。
塩鮭(しおざけ・しおじゃけ)
塩を加えて加工した鮭。塩焼きやお弁当のおかずなどに使われる。
しゃけのおにぎり
焼いた鮭やほぐし身を具材にした食品。日常的な商品名として「しゃけ」がよく使われる。
ここで大切なのは、「生鮭」と「塩鮭」は加工状態を表す食品上の区分であり、「サケ」と「シャケ」は読み方の違いだということです。
生鮭を焼いても、塩鮭をほぐしても、魚そのものの種類が読み方によって変わるわけではありません。
なぜ加工品はシャケと呼ばれやすいのか
考えられる理由の一つは、日常生活における言葉の定着です。
鮭は、切り身、塩焼き、焼き鮭、お弁当、おにぎりなど、加工・調理された状態で食卓に登場する機会が多い魚です。そのため、家庭や飲食店で「シャケ」という呼び方が定着しやすかった可能性があります。
ただし、これは食文化と言葉の使用習慣に関する説明であり、加工によって発音が変化するという規則があるわけではありません。
実際、焼いた鮭を「焼きサケ」と呼ぶこともあれば、生の切り身を「シャケ」と呼ぶ人もいます。北海道立総合研究機構の説明でも、両者は同じ意味の読み方として整理されています。
加工品説についての最終判定
【魚の種類も整理】白鮭・銀鮭・紅鮭とサーモンの違い
「サケ」と「シャケ」の読み方を理解したところで、もう一つ混同されやすい問題を整理しておきましょう。
それは、白鮭、銀鮭、紅鮭、サーモンの違いです。
これらは単なる呼び方の違いではありません。実際に魚の種類や流通上の名称が異なる場合があります。
白鮭・銀鮭・紅鮭は何が違う?
白鮭(シロザケ)・秋鮭
日本近海で獲れる代表的な鮭。秋に獲れるものは秋鮭と呼ばれ、比較的あっさりした味わい。鍋料理やちゃんちゃん焼きにも向いている。
紅鮭(ベニザケ)
身の赤みが強く、味が濃いのが特徴。ロシアやアメリカなどから輸入される天然物が多く、塩焼きにも適している。
銀鮭(ギンザケ)
体表が銀色をしていることから名付けられた魚。チリなどで養殖されるものが多く、脂のりがよい。日本では宮城県産の養殖銀鮭も知られている。
ウェザーニュースが2026年10月25日に掲載した鮭の特集では、船橋地方卸売市場の水産関係者への取材を通じて、これら3種類の違いが紹介されています。
同記事によると、秋鮭は白鮭のうち秋に獲れるものを指します。春から初夏に獲れる白鮭は、時鮭・時知らずなどと呼ばれます。
紅鮭は身の赤みと味の濃さが特徴で、銀鮭は脂のりのよさが特徴です。つまり、白鮭・銀鮭・紅鮭は、魚の種類として区別する必要があります。
サーモンと鮭は別の魚なのか
英語の「Salmon(サーモン)」は、基本的に鮭を意味します。そのため、言葉としてはサーモンと鮭は対立する名称ではありません。
ただし、日本の食品売り場では、商品としての使い分けが見られます。
- 鮭:日本で昔から食べられてきた天然のシロザケなどを指す商品名として使われることが多い。
- サーモン:輸入されたアトランティックサーモンや養殖魚などの販売名として使われることが多い。
- トラウトサーモン:一般的には海面養殖などで育てられたニジマスを指す流通上の名称。
ただし、「国産なら鮭、外国産ならサーモン」「天然なら鮭、養殖ならサーモン」という単純な分類は成立しません。国産の養殖銀鮭もあれば、天然のサーモンも存在するためです。
また、天然の鮭と養殖サーモンでは、生食に関する取り扱いも異なります。刺身として販売されているかどうかは、魚の名前だけで判断せず、商品表示や生食用の表示を確認する必要があります。
一般社団法人大日本水産会の魚食普及推進センターによると、日本でノルウェー産のアトランティックサーモンが生食用途で消費され始めたのは1985年です。この食文化の広がりも、現在の鮭とサーモンの呼び分けに影響しています。
なお、鮭の身が赤く見えることから赤身魚と思われがちですが、農林水産省の説明では、鮭は白身魚に分類されます。身の赤い色は、餌などに由来するアスタキサンチンという色素によるものです。
【プロの結論】しゃけとさけを間違えずに使い分ける3つの判断基準
ここまでの辞書、歴史資料、水産研究機関の説明を整理すると、しゃけとさけの違いは魚の種類ではなく、日本語の読み方と使用習慣にあることが分かります。
実際の会話や文章では、次の3つを判断基準にすると迷いません。
1. 正式な説明や文章では「サケ」を使う
魚の生態、分類、漁業、水産業などを説明する場合は「サケ」が適しています。
新聞記事、学術的な文章、商品説明などでも「サケ」という表記が一般的です。特に、白鮭や銀鮭など魚種を正確に区別したいときには、正式な魚種名を使うことが大切です。
2. 日常会話では「シャケ」でも問題ない
家庭での会話や食事の場面では、「シャケ」という表現を自然に使えます。
「今日の夕飯はシャケにしよう」「おにぎりはシャケがいい」といった言い方は、一般的な日本語として定着しています。
相手が「サケ」と言っても「シャケ」と言っても、同じ魚を話題にしているのであれば、無理に訂正する必要はありません。
3. 食品を選ぶときは読み方より魚種と加工状態を見る
スーパーで鮭を購入する場合は、サケかシャケかという表記よりも、白鮭・紅鮭・銀鮭のどれなのか、塩漬けなのか、生鮮品なのかを確認するほうが役立ちます。
料理に合わせて選ぶなら、次のような考え方ができます。
- あっさりした味で鍋やちゃんちゃん焼きを作りたい:白鮭・秋鮭
- 鮭の味をしっかり楽しみたい:紅鮭
- 脂のりのよい切り身を食べたい:銀鮭
- 刺身を食べたい:生食用として適切に販売されている商品
言葉の違いと魚の違いを分けて考えることが、最も実用的な判断方法です。
【しゃけとさけの違い】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:しゃけとさけはどっちが正しい読み方ですか?
A1:「さけ」が辞書の基本的な読み方ですが、「しゃけ」も同じ鮭を指す正しい読み方です。日常会話ではどちらを使っても問題ありません。
Q2:しゃけとさけは別の魚ですか?
A2:別の魚ではありません。どちらも鮭を指す言葉です。魚種を区別する場合は、白鮭・紅鮭・銀鮭などの名称を確認してください。
Q3:生はサケ、焼いたらシャケになるのですか?
A3:そのような決まりはありません。生の切り身をシャケと呼ぶ人もいれば、焼いたものをサケと呼ぶ人もいます。加工状態によって読み方が変わるという説には、明確な言語学的根拠がありません。
Q4:シャケの語源はアイヌ語ですか?
A4:アイヌ語に由来するシャケがサケになったという説があります。一方、サケからシャケになったという説もあり、北海道立総合研究機構は語源を特定していません。
Q5:日本国語大辞典ではシャケはいつから登場しますか?
A5:『精選版 日本国語大辞典』では、『喰物生類むり問答』(1833~1844年)の用例が初出の実例として掲載されています。一方、サケは『新撰字鏡』(898~901年ごろ)に記録があります。
Q6:北海道ではサケとシャケのどちらを使いますか?
A6:北海道立総合研究機構では一般的な名称として「サケ」を使用しています。ただし、シャケも同じ意味の読み方であり、地域や個人によって使い方は異なります。
Q7:サーモンと鮭は同じ魚ですか?
A7:サーモンは英語で鮭を意味します。ただし、食品としての名称には、アトランティックサーモン、銀鮭、トラウトサーモンなど、異なる種類や流通上の区分が含まれています。
まとめ:しゃけとさけの違いは読み方!正しく理解して使い分けよう
「しゃけ」と「さけ」は、どちらも同じ鮭を指す言葉です。
歴史を振り返ると、「さけ」は平安初期の『新撰字鏡』に記録があり、「しゃけ」は江戸後期の『喰物生類むり問答』に確実な用例が確認できます。辞書では「さけ」が基本の読み方として扱われる一方、「しゃけ」も同じ意味を持つ言葉として認められています。
また、「生はサケ、加工品はシャケ」という説は、日常生活での使い分けから生まれた説明と考えられますが、言葉の正式な規則ではありません。地域差や家庭での習慣、食文化などが複合的に関係しています。
2026年現在、覚えておきたいポイントは次の3つです。
- 魚の名前や学術的な説明には「サケ」を使う。
- 日常会話やおにぎりの具材には「シャケ」を使ってもよい。
- 魚の種類を区別するときは、呼び方ではなく白鮭・紅鮭・銀鮭などの魚種を確認する。
日本語には、同じものを指していても地域や時代、生活習慣によって異なる呼び方が残っている言葉が数多くあります。しゃけとさけの違いも、その一例です。どちらか一方を間違いと決めつけず、言葉の歴史と使われる場面を理解すれば、日常のちょっとした疑問もすっきり解決できます。
主な参考資料・出典
- 小学館『デジタル大辞泉』
- 小学館『精選版 日本国語大辞典』
- ジャパンナレッジ「第330回『鮭』を何と呼ぶか?」
- 北海道立総合研究機構「第48回 サケ・マス」(2015年8月28日)
- 国立国語研究所「漢字にも方言のような地域による違いがありますか」(2018年10月9日)
- 一般社団法人大日本水産会・魚食普及推進センター「鮭、鱒、サーモン、トラウトの違い」
- 農林水産省「サケは赤身の魚ですか、白身の魚ですか」
- ウェザーニュース「秋鮭は今が旬!『秋鮭』『紅鮭』『銀鮭』の違いは何?」(2026年10月25日)