【施設の正体】一億円のトイレはどこにある?2026年3月の完成までを解説

目次

📌 【この記事の重要ポイントまとめ】

【検証資料 1】一億円のトイレの当時の様子・関連報道写真(出典:Yahoo!ニュース)
  • 完成日:2026年3月22日に完成記念式典を開催。JR鬼無駅前にアートを融合した公衆トイレが誕生した。
  • 建設費:総事業費は約9,900万円。トイレ本体・上下水道などに約7,200万円、アート関連に約2,800万円を計上。
  • 注目点:桃太郎の壁画、松盆栽を題材にした映像、プロジェクションマッピングを導入。観光振興と若手芸術家の育成も目的としている。

一億円のトイレがあるのは、香川県高松市鬼無町佐藤に位置するJR予讃線の鬼無駅前です。駅舎の反対側にある県道沿いの敷地に整備され、駅利用者だけでなく、一般の人も利用できる公衆トイレとして設置されました。

特徴は、男女別のトイレに加えて多目的トイレを備えていること。そして建物の外側に、地域の歴史や文化を取り入れたアート作品が設置されていることです。

2026年3月22日には香川県主催の完成記念式典が開催され、壁画とデジタルアートが初披露されました。オープニングでは、地元に伝わる民俗芸能「鬼無佐料編笠神楽」とデジタルアートの共演も行われています。単なる設備の更新ではなく、地域文化を発信する施設としてスタートしたことが分かります。

香川県の公式発表では、式典は午後6時30分から午後7時30分までの予定で実施されました。

鬼無駅のトイレ整備はいつ決まった?完成までの時系列

一億円のトイレ

この事業は2026年に突然持ち上がったものではありません。地元からの改修要望や政治家による働きかけがあり、数年をかけて予算化・設計・制作が進められました。

- 2021年:平井卓也衆院議員が街頭演説で鬼無駅のトイレ改修を訴える。
- 2024年2月:香川県が駅周辺のにぎわい確保などを理由に整備を検討。JR四国側は無人駅のトイレ改修に慎重な姿勢を示す。
- 2024年度:香川県が鬼無駅トイレの整備費を当初予算に計上。
- 2025年8~10月:40歳未満を対象にデジタルアート作品を募集。
- 2025年12月~2026年1月:デジタルアート制作業者の選定を実施。
- 2026年3月:新しい公衆トイレが完成。
- 2026年3月22日:完成記念式典を開催。
- 2026年6月:瀬戸内海放送が約1億円の事業費や制作経緯を詳しく検証。
- 2026年9月:香川県がデジタルアートの夜間投影スケジュールを公表。

特に注目したいのは、2024年度の予算化から2026年3月の完成まで、交通政策と文化芸術の2つの行政分野が連携して進められた点です。

【なぜ香川県が整備?】JR四国と高松市が抱えていたトイレ問題

一億円のトイレ

そもそも、なぜ鉄道会社ではなく香川県が約1億円を投じることになったのでしょうか。

背景にあったのは、JR四国の厳しい経営状況と、地方の無人駅における公共トイレの維持管理問題です。

以前の鬼無駅トイレは男女共用のくみ取り式

一億円のトイレ

改修前の鬼無駅のトイレは、男女共用の和式・くみ取り式でした。利用者や地域住民から長年にわたり改善要望が出ていたものの、JR四国は無人駅のトイレ改修に必要な投資資金が乏しいとして、改修を行わない方針を示していました。

2024年2月、当時のJR四国社長だった西牧世博氏は、無人駅のトイレについて、改修に投資する資金が乏しく、できれば撤去したいという趣旨の発言をしています。

これは鬼無駅だけの問題ではありません。KSBの報道によると、2024年4月時点で香川県内のJR四国のトイレがある30駅のうち、12駅がくみ取り式でした。地方鉄道にとって、利用者数が限られる駅の設備更新は大きな負担となっていたのです。

香川県が整備することになった3つの理由

香川県が鬼無駅を整備対象に選んだ背景には、次のような事情があります。

1.県立高松西高校の最寄り駅だったこと

鬼無駅は県立高松西高校への通学に利用される駅です。学生が日常的に使う公共交通の拠点である以上、衛生面や利便性の改善が求められていました。

2.松盆栽を目的とする観光客が訪れる地域だったこと

鬼無地区は松盆栽の産地として知られ、海外からも盆栽を目的に訪れる人がいます。駅前の公衆トイレを整備することは、地域の観光環境を改善する意味も持っていました。

3.JR四国と高松市の役割分担が難しかったこと

JR四国は経営上の理由から無人駅のトイレ改修に消極的でした。一方、高松市は駅構内の設備について基本的にJR四国が主体となって対応するべきという立場を取っていました。

2026年5月12日の高松市長定例会見でも、大西秀人市長は、駅構内の設備は基本的にJR四国が対応し、そのうえで公共性を踏まえた市の補助が考えられる場合には対応するという市の基本姿勢を説明しています。

つまり、鬼無駅の整備は単純な自治体間の競争ではなく、鉄道事業者と市町村だけでは解決しにくかった公共設備の更新を、県が担った事例なのです。

鬼無駅は利用者が極端に少ない駅なのか?

「無人駅なのだから、ほとんど人が利用していないのでは」という疑問もあります。

しかし、KSBが紹介した2024年のデータでは、鬼無駅の1日平均乗車人員は594人。香川県内48駅のうち14番目に多い駅でした。

無人駅であることと、利用者が極端に少ないことは同じではありません。鬼無駅は高松駅から2駅目に位置し、通学や地域住民の移動に使われています。

県が整備理由として高校へのアクセスや地域の観光資源を挙げたことにも、こうした駅の役割が関係しています。

【関係者・事業一覧】一億円のトイレを実現した人と組織の役割

この施設には行政、鉄道会社、政治家、アーティスト、専門学校など、複数の関係者が関わっています。誰が何を担当したのかを整理すると、事業の全体像が見えてきます。

関係者・組織 役割・関係 香川県 トイレ整備の主体。交通政策と文化芸術の2事業を実施。 池田豊人知事 県の整備方針を説明。地域の新しいシンボルになることに期待。 JR四国 駅の運営主体。無人駅のトイレ改修に関する経営上の課題を抱えていた。 高松市 駅構内設備は基本的にJR四国が主体となるという立場。 平井卓也氏 2021年の街頭演説で鬼無駅トイレの改修を訴えた。 大山一郎県議 地元側から整備予算の実現に向けて働きかけた。 朝際イコ氏 桃太郎をモチーフにしたウォールアートを制作。 穴吹デザインカレッジ 松盆栽や桃太郎を題材にした学生のデジタルアートを制作。 株式会社一旗 プロジェクションマッピングなどのデジタルアート制作を担当。 鬼無地区 松盆栽や桃太郎伝説、地域の民俗芸能などの文化的背景を提供。

この関係図で重要なのは、交通政策を担う部署と文化振興を担う部署が、それぞれ異なる目的で事業に参加していることです。

施設そのものの整備とアートの制作を一体的に進めたことで、従来型の駅トイレとは異なる特徴が生まれました。

【建設費の内訳】約9,900万円は何に使われた?7200万円と2800万円を検証

一億円のトイレをめぐって最も関心を集めているのが、約1億円という事業費です。

KSBは契約書や見積書などについて情報公開請求を行い、事業費の内訳を検証しました。その結果、総事業費は約9,900万円で、主に2つの事業に分かれていることが明らかになりました。


約9,900万円


鬼無駅前トイレの総事業費・報道ベース


トイレ本体・設備
約7,200万円





アート関連
約2,800万円





金額は概算。各区分の合計は約1億円。

① トイレ本体・設備に約7,200万円

約7,200万円は、香川県の交通政策課が担当する「地域公共交通確保維持改善事業」に関係する予算です。

主な対象は次のとおりです。

- トイレ施設の設計
- 建物の建築工事
- トイレ設備の整備
- 上下水道の整備

つまり、この費用は建物を新設し、従来のくみ取り式トイレから水洗式の公衆トイレへと更新するためのものです。

② 壁画・デジタルアートに約2,800万円

残る約2,800万円は、文化振興課が担当する「未来の芸術家育成のためのパブリックアートプロジェクト事業」に関係する予算です。

こちらには以下の費用が含まれています。

- 壁画・デジタルアートの制作業務委託
- 壁画の額装
- プロジェクターや音響機材
- デジタルアート投影設備の設置工事
- 新聞広告などのPR費用

特に注目されるのが、プロジェクターや音響機材、その設置工事に約2,200万円が計上されている点です。

約2,800万円のアート関連費の大部分を、映像を投影するための設備が占めています。アート関連費がすべて絵画や作品の制作報酬というわけではありません。

また、約200万円という数字も報道されています。これは株式会社一旗とのデジタルアート制作契約に関する金額であり、約2,800万円のアート関連予算とは別枠で加算するものではありません。

他の駅の整備費と比べると高い?

費用の規模を理解するには、香川県内で自治体が整備したほかの駅との比較も参考になります。

駅・施設 整備費 整備対象
JR引田駅 約4,300万円 駅舎・トイレ
JR高瀬駅 約1億3,400万円 駅舎・駐輪場・パブリックスペース・トイレ
JR鬼無駅 約9,900万円 トイレ・アート関連設備

ただし、これらは工事対象の範囲が異なるため、金額だけで単純比較することはできません。

鬼無駅の場合は、建物の整備に加え、デジタルアートを投影する設備まで含まれています。一般的な駅トイレの改修費と同じ条件で比較するのは適切ではありません。

【光るトイレの見どころ】桃太郎の壁画・松盆栽・プロジェクションマッピング

鬼無駅前の施設が通常の公衆トイレと大きく異なるのは、地域の文化や風景を取り込んだアート作品です。

桃太郎をモチーフにしたウォールアート
朝際イコ氏が制作した、鬼無地区の桃太郎伝説を題材とする壁画。

夜間のデジタルアート
ガラス面に映像を投影する仕組み。鑑賞や写真撮影も楽しめる。

朝際イコ氏が制作した桃太郎の壁画

トイレ南側の壁面には、漫画家・イラストレーターの朝際イコ氏が制作した桃太郎モチーフのイラストが描かれています。

鬼無地区には桃太郎にまつわる伝説が残されています。その地域性を壁画に反映させることで、単なる設備ではなく、土地の歴史や物語を感じられる施設に仕上げています。

桃太郎という全国的に知られた題材を使いながら、鬼無という地域の個性を発信する狙いがあります。

穴吹デザインカレッジが制作したデジタルアート

高松市にある穴吹デザインカレッジも、このプロジェクトに参加しました。

学生が制作したデジタルアートには、地域の特産品である松盆栽や桃太郎にちなんだモチーフが取り入れられています。

ここには、地元の教育機関と公共施設を結びつける意味があります。学生にとっては、自分たちの作品が実際の公共空間で発表される機会となり、地域にとっては若い世代の感性を取り入れた文化発信の場になります。

株式会社一旗によるプロジェクションマッピング

名古屋市の株式会社一旗は、デジタルアートやプロジェクションマッピングの制作に携わった企業です。

鬼無駅前では、トイレ西側のガラス面に映像を投影する仕組みが採用されています。ガラスの背後から光を当てることで、映像が浮かび上がるように見える演出です。

このガラスの前に立って写真を撮影できるため、トイレとしての機能だけでなく、フォトスポットとしての活用も想定されています。

平日には天使の羽をモチーフにしたデジタルアートも投影されます。

2026年最新・光るトイレの投影時間

2026年9月1日に香川県が公表した投影スケジュールによると、夜間の映像投影は毎日2回です。


19:15~20:00


第1回・45分間

20:20~21:00


第2回・40分間
香川県が2026年9月に公表した投影スケジュール。

ただし、投影時間中ずっと同じプロジェクションマッピングが流れるわけではありません。

曜日・期間 投影内容
平日 通常は単色表示。途中で天使の羽のアートが数回登場
日曜日 通常は単色表示。途中で天使の羽のアートが数回登場
土曜日 穴吹デザインカレッジの作品、プロジェクションマッピング、天使の羽を順番に再生
連休・特別期間 特別コンテンツをループ再生する場合がある

映像を目当てに訪問するなら、土曜日や特別期間が狙い目です。通常の平日・日曜日は単色表示が基本となるため、訪問する曜日によって鑑賞できる内容が変わります。

なお、投影スケジュールや特別期間は変更される可能性があります。訪問前に香川県の公式案内を確認するのがおすすめです。

【費用対効果を検証】約1億円の投資は地域活性化につながるのか

約1億円の整備費については、評価が分かれています。

衛生面や利便性が改善されたことを歓迎する声がある一方、駅の利用者数や観光客の増加を考えたとき、これだけの公費を投じる必要があったのかという疑問も出ています。

香川県が期待する観光振興と地域のにぎわい

香川県が目指したのは、トイレの老朽化を解消することだけではありません。

池田豊人知事は完成記念式典で、次のような期待を示しました。

「人がここを目的に来るような、そういう施設であったらいいなというふうに願っております」

2026年3月22日の完成記念式典での池田豊人知事の発言。KSB報道より。

つまり、トイレそのものを観光の目的地にするという発想です。

鬼無地区には松盆栽という地域産業があり、桃太郎伝説という文化的な題材もあります。こうした資源をアートとして見える形にすることで、駅周辺を訪れるきっかけを増やそうとしています。

また、夜間の映像投影によって、日中の観光だけではなく夜の観光コンテンツとしても活用する構想があります。

実際に何人が映像を見ているのか?

費用対効果を考えるうえで興味深いのが、KSBが2026年4月25日に実施した現地調査です。

同日の午後7時15分から午後9時まで、途中の20分間の休止を除いて定点観測したところ、映像投影中にトイレ前を通過した人は61人でした。一方、前面の県道を通過した車は877台でした。




61人


トイレ前を通過した歩行者


877台


前面の県道を通過した車


2026年4月25日のKSBによる定点観測。観測日1日の結果であり、年間利用者数や観光客数を示すものではない。

この数字から分かるのは、道路を通過する車両が一定数ある一方、投影時間中に施設前を通った歩行者は限られていたということです。

ただし、61人全員が映像を鑑賞したわけではなく、通過人数だけで施設の集客効果を判断することもできません。観光目的で訪れた人の数や、地域店舗への立ち寄り、再訪率なども確認する必要があります。

また、SNSで施設を知り、徳島県から立ち寄った人もKSBの取材で紹介されています。県外から訪れるきっかけが生まれたことは、観光施設としての可能性を示す材料です。

年間約65万円の維持費も県が負担

建設費だけを見て終わることはできません。

KSBの報道によると、電気代や水道代として、年間約65万円を見込んでおり、この費用も香川県が負担します。

さらに、2026年度には新たなデジタルアートの公募などに向けて約290万円の予算も計上されています。

公共施設は完成した時点で事業が終わるわけではありません。設備の点検、故障時の修理、映像コンテンツの更新、電気代など、継続的な支出が発生します。

したがって、約9,900万円という初期投資だけでなく、今後の維持費と追加制作費も含めて評価する必要があります。

アート制作をめぐる「無償協力」の問題

費用対効果と並んで注目したいのが、若手芸術家の育成という事業目的と、実際の制作体制との間に生じた問題です。

香川県は2025年8月から10月にかけて、40歳未満を対象にデジタルアート作品を公募しました。大賞には15万円、優秀賞には若干名に3万円の副賞を設定していました。

しかし、応募された7作品はいずれも穴吹デザインカレッジの学生によるもので、審査の結果、大賞・優秀賞ともに該当者なしとなりました。

その後、県は作品制作の見本を作る必要があるとして、2025年12月から2026年1月にかけて制作業者をコンペ方式で募集。応募したのは株式会社一旗1社で、約200万円で契約しました。

一方、穴吹デザインカレッジの学生作品については、学校側が学生の発表の場や学校のPRにつながるとして協力を申し出て、無償で制作する形になりました。

この点についてKSBは、契約書や見積もりなどの公開文書に学校への支出を示す資料が見当たらなかったことも報道しています。

香川大学の三野靖名誉教授は、若い人の意欲を搾取したような印象を受けると批判的な見解を示しました。これに対して県の文化振興課は、学校側から無償で協力したいとの提案があったと説明しています。

ここには、公共事業として若手芸術家を育成することと、教育機関が学生の学習機会として作品を提供することの境界という、重要な論点があります。

今後、同様の事業を実施する場合には、学生の制作時間や指導にかかる負担、作品の利用条件、報酬や教育的な還元の方法を明確にすることが求められます。

県のモデル事業はほかの駅にも広がるのか

香川県は、鬼無駅の整備をモデルケースとして、事業者や市町に取り組みが広がることを期待していました。

しかし、2026年6月時点で、県はほかの老朽化した駅のトイレを県主体で整備する予定はないと説明しています。

JR四国も、利用者が少ない無人駅については自治体に公衆トイレの整備をお願いする方針を継続すると説明しています。また、高松市も駅のトイレを順次改修する方針は現時点で持っていないとしています。

つまり、鬼無駅の事例が、そのまま県内のほかの駅に適用される段階には至っていません。

約1億円を投じたモデル事業が本当に成功したと評価されるには、設備の完成だけでなく、ほかの自治体が参考にできる費用負担の仕組みや、維持管理のモデルまで示せるかが重要です。

【プロの結論】一億円のトイレは成功か失敗か?評価すべき5つの視点

JR鬼無駅前の施設を評価するとき、「トイレに1億円もかけた」という金額だけで判断するのは不十分です。

一方で、アートがきれいだからという理由だけで、約1億円の公費投入を正当化することもできません。

公共施設としての価値を判断するには、次の5つの視点が必要です。

1.衛生環境と公共性が改善されたか

男女共用のくみ取り式から、男女別・多目的トイレを備えた公衆トイレへと改善されたことは、明確な成果です。

特に、通学利用者や地域住民にとって、毎日使う設備の衛生環境が改善されたことには、観光客の数だけでは測れない価値があります。

2.観光客を継続的に呼び込めるか

桃太郎の壁画や松盆栽の映像は、鬼無地区の文化を発信する手段になります。

しかし、SNSで一度話題になるだけでは、長期的な地域活性化にはつながりません。周辺の盆栽関連施設や地域店舗への回遊、観光ルートへの組み込みなどが必要です。

3.維持管理費に見合う利用があるか

年間約65万円の電気・水道代に加えて、映像設備の修繕や更新も考慮する必要があります。

投影機材の故障やコンテンツの陳腐化にどう対応するのか。完成後の運営計画が、施設の長期的な価値を左右します。

4.若手アーティストの育成につながっているか

穴吹デザインカレッジの学生が作品を公共空間で発表できたことは、教育面で意味があります。

ただし、若手育成を掲げる以上、学生の制作活動に適切な対価や学習環境が用意されているかも検証すべきです。作品を展示するだけでなく、継続的な発表機会につなげられるかがポイントです。

5.事業の成果を数字で公開できるか

今後は、施設の利用者数、映像の鑑賞者数、県外からの来訪者数、周辺観光への波及効果などを継続的に公表することが望まれます。

公共事業の評価は、完成時の話題性ではなく、数年後にどれだけ地域に価値を生み出したかで決まります。

鬼無駅の事例は、老朽化した公共設備の更新と観光・文化政策を組み合わせた興味深い取り組みです。その一方で、維持費や制作体制、成果測定など、今後検証すべき課題も残っています。

【よくある質問】一億円のトイレに関するFAQ

Q1:一億円のトイレはどこにありますか?

A1:香川県高松市鬼無町佐藤にあるJR予讃線・鬼無駅前です。駅舎の反対側にある県道沿いに整備された公衆トイレです。

Q2:一億円のトイレはいつ完成しましたか?

A2:2026年3月に完成し、3月22日に完成記念式典が開催されました。

Q3:建設費は本当に1億円ですか?

A3:正確には報道された総事業費は約9,900万円です。トイレ本体や上下水道などに約7,200万円、壁画やデジタルアート関連に約2,800万円が計上されています。

Q4:なぜJR四国ではなく香川県が建設したのですか?

A4:JR四国が無人駅のトイレ改修に必要な投資資金の確保に苦慮していたこと、高松市が駅構内設備は基本的にJR四国が主体となるという立場だったことなどが背景にあります。県立高校の最寄り駅であることや、松盆栽を目的とする観光客が訪れる地域であることも整備理由に挙げられています。

Q5:プロジェクションマッピングは毎日見られますか?

A5:夜間の投影時間は毎日19時15分~20時、20時20分~21時です。ただし、プロジェクションマッピングなどの特別な映像コンテンツは、基本的に土曜日や連休などの特別期間にループ再生されます。平日と日曜日は通常、単色表示と天使の羽のアートが中心です。

Q6:壁画を制作したのは誰ですか?

A6:東京の漫画家・イラストレーターである朝際イコ氏です。鬼無地区に残る桃太郎伝説をモチーフにした壁画を制作しました。

Q7:穴吹デザインカレッジと一旗は何を担当しましたか?

A7:穴吹デザインカレッジは松盆栽や桃太郎を題材にしたデジタルアートを制作しました。株式会社一旗はプロジェクションマッピングなどの制作を担当しています。

Q8:一億円のトイレは費用対効果が出ていますか?

A8:2026年11月時点で、長期的な費用対効果を判断できるだけの継続的な利用実績は明らかになっていません。衛生環境の改善という成果はありますが、観光客の増加や地域経済への波及効果については、今後の検証が必要です。

まとめ:一億円のトイレは地域の新しい観光資源になれるのか

JR鬼無駅前の「一億円のトイレ」は、老朽化した公衆トイレの更新に、地域文化とデジタルアートを組み合わせた香川県の公共事業です。

総事業費は約9,900万円。約7,200万円がトイレの建築・設備関連、約2,800万円が壁画やデジタルアート関連に使われています。桃太郎伝説を取り入れた朝際イコ氏の壁画、穴吹デザインカレッジの学生作品、株式会社一旗によるプロジェクションマッピングなど、複数の主体が参加した施設です。

一方、年間約65万円の電気・水道代や、今後の映像更新費用、若手芸術家の育成をめぐる制作体制など、検証すべき課題もあります。

この事業の本当の価値は、豪華なトイレが完成したことだけではありません。公共設備を地域の文化発信や観光振興につなげられるかどうかにあります。

今後、松盆栽や桃太郎伝説と連動した観光ルートが生まれ、県外からも人が訪れるようになれば、鬼無駅前の施設は地域の新しいシンボルとして機能する可能性があります。

反対に、話題性が一時的なものにとどまり、利用者や観光客が増えなければ、約1億円の投資に対する疑問は残り続けます。

「一億円のトイレ」が成功したかどうか。その答えは、これから何年にもわたって地域にどれだけ人を呼び、公共施設としての価値を生み出せるかにかかっています。


主な参照資料・報道

- 香川県「JR鬼無駅前トイレ完成記念式典」
- 香川県「JR鬼無駅前アートトイレデジタルアート作品の投影スケジュール」
- 香川県「ご提言等の内容(鬼無駅のトイレについて)」
- 高松市「市長定例会見(令和8年5月12日)」
- KSB瀬戸内海放送「検証『1億円の光るトイレ』JR鬼無駅前に香川県が整備した経緯は」(2026年6月23日)