【逮捕の境界】立ちんぼはどこから違法になる?売春防止法第5条を解説

目次

立ちんぼの取り締まりで中心となる法律が、売春防止法第5条です。

ポイントは、売春をする目的があり、法律が定める勧誘・客待ちなどの行為をしたかどうかです。

売春防止法第2条が定める「売春」とは?

立ちんぼ犯罪

売春防止法第2条では、売春を次のように定義しています。

- 対償を受ける、または受ける約束をすること
- 不特定の相手方と性交すること

つまり、金銭などの対価を受け取る約束で、不特定の相手と性交する行為が法律上の売春に該当します。

ここで注意したいのは、一般社会で使われる「売春」という言葉と、法律上の定義は必ずしも一致しないことです。売春防止法第2条の定義は性交を対象としており、あらゆる有償の性的サービスが一律に同条の売春に該当するわけではありません。

第5条で処罰される3つの行為

立ちんぼ犯罪

第5条は、売春目的で次のいずれかに該当する行為をした場合を処罰対象としています。

1.公衆の目に触れる方法で勧誘する

売春の相手方になるように、公然と人を勧誘する行為です。

2.道路などで立ちふさがる、つきまとう

相手を売春に誘う目的で、道路その他の公共の場所において、人の身辺に立ちふさがったり、つきまとったりする行為です。

3.公衆の目に触れる方法で客待ちをする

いわゆる立ちんぼ問題で特に重要なのが、この第3号です。

売春目的で公衆の目に触れるような方法で客待ちをすることや、広告などによって相手を誘引することが禁止されています。

つまり、必ずしも自分から積極的に声をかけなければ違法にならない、ということではありません。

客待ちそのものが処罰対象として規定されています。

単に路上に立っているだけでも逮捕される?

立ちんぼ犯罪

ここは誤解されやすい部分です。

路上に立っているという事実だけで、直ちに売春防止法違反が成立するわけではありません。

問題になるのは、売春目的の有無と、実際の行動が第5条の要件に該当するかどうかです。

例えば、単に人を待っている人と、売春目的で公然と客を待っている人では、法律上の評価が異なります。

警察による捜査では、本人の説明だけでなく、行動の状況や周辺事情などを総合的に判断することになります。

また、売春行為そのものが成立する前でも、第5条に定められた客待ちや勧誘を行えば処罰対象になり得ます。

このため、実際に客と性交したか、金銭を受け取ったかだけで違法性を判断することはできません。

【罰則を比較】拘禁刑・罰金はいくら?買う側と周旋する側の違い

立ちんぼ犯罪を理解するうえで、売春する側、買う側、仲介する側を区別することが欠かせません。

同じ売買春に関係していても、法律上の責任は異なります。

売春防止法の主な罰則一覧

条文・対象 主な行為 法定刑
第5条 売春目的の勧誘・客待ち 6か月以下の拘禁刑または2万円以下の罰金
第6条 売春の周旋・仲介 2年以下の拘禁刑または5万円以下の罰金
第7条 欺罔・困惑・脅迫などによる売春の強制 3年以下の拘禁刑など
第8条 第7条の犯罪に伴う対償の収受など 5年以下の拘禁刑および20万円以下の罰金
第9条 売春させる目的での前貸しなど 3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金
第10条 売春させる契約 3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金

2025年6月から「懲役」ではなく「拘禁刑」に変更

2025年6月1日、刑法等の改正に伴い拘禁刑が導入されました。

これにより、従来の懲役・禁錮という刑罰が拘禁刑に一本化され、売春防止法の条文も変更されています。

2026年現在、売春防止法第5条の刑罰は、次のとおりです。

- 6か月以下の拘禁刑
- 2万円以下の罰金

第6条の周旋については、2年以下の拘禁刑または5万円以下の罰金です。

拘禁刑への変更は刑罰の名称・制度を改めたものであり、2025年6月に買春そのものが新たに処罰対象になったわけではありません。

立ちんぼを買う側にも罰則はある?

読者が特に気になるのが、客側の責任でしょう。

売春防止法第3条には、次の規定があります。

何人も、売春をし、又はその相手方となってはならない。

つまり、売春する側だけでなく、相手方となる買う側も禁止の対象です。

ところが、重要なのは第3条違反そのものに対する直接の刑罰が設けられていないことです。

2025年5月28日の衆議院法務委員会では、法務省の政府参考人がこの点について説明しています。

売春行為とその相手方になる行為は禁止されている一方、それ自体は処罰対象ではなく、周旋や場所の提供など、売春を助長する行為が処罰対象になっているという趣旨です。

したがって、成人同士の売買春について、客が金銭を支払ったという事実だけで、売春防止法第5条違反として処罰されるわけではありません。

ただし、これは買う側がどのような場合でも無罪になるという意味ではありません。

相手が18歳未満の場合は、児童買春・児童ポルノ禁止法などが適用される可能性があります。

同法第4条では、児童買春をした者について、5年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金を定めています。

また、不同意の性的行為、脅迫、暴行、人身取引などがあれば、別の犯罪が成立する可能性もあります。

売春の周旋・仲介をした人はどうなる?

売春防止法第6条は、売春の周旋をした者を処罰します。

例えば、第三者が女性と客を引き合わせ、売春を成立させるために仲介するような行為が問題になります。

また、実際に周旋を完成させていなくても、周旋目的で第6条第2項に定める勧誘や誘引などを行った場合、処罰対象になることがあります。

ここで重要なのは、単に知人を紹介したというだけで直ちに周旋罪が成立するわけではない点です。

売春を仲介する目的や、実際の行為内容などが判断されます。

さらに、売春をさせるために人を欺いたり、困惑させたり、脅迫したりした場合には、第7条などの適用も検討されます。

【摘発の実態】大久保公園・歌舞伎町で何が起きてきたのか

立ちんぼ問題を象徴する場所として知られるのが、東京都新宿区の歌舞伎町にある大久保公園周辺です。

2019年ごろから、路上で売春目的の客待ちをする女性と、相手を探す男性が集まる状況が続いてきました。

警視庁による摘発は、2023年以降、継続的に行われています。

大久保公園周辺の逮捕者数の推移

2026年3月16日、警視庁保安課が公表した2025年の摘発実績が報道されました。

その内容を過去の報道と合わせると、次のようになります。

年 客待ちによる逮捕者数 主な状況
2023年 140人 大久保公園周辺で大規模な摘発
2024年 97人 集中的な取り締まりを継続
2025年 112人 前年から15人増加

2023年の140人は集英社オンラインの報道、2024年と2025年の数字は警視庁の公表を伝えた共同通信の報道に基づきます。

2025年の112人について、さらに詳しく見ると、次の特徴がありました。

- 平均年齢は25歳。
- 最年少は16歳。
- 10代は14人。
- ホストクラブやコンセプトカフェなどの費用を目的とした人は48人。
- 80人、約71%が初犯。

これらの数字から分かるのは、摘発対象が特定の年齢層や常習者だけに限られていないことです。

特に10代の逮捕者が前年より11人増加した点は、若年層への支援という観点からも見過ごせません。

2024年秋には2か月弱で50人を逮捕

警視庁は2024年10月から、大久保公園を中心とする環境浄化総合対策の一環として、売春目的の客待ちに対する集中取り締まりを実施しました。

2025年5月28日の衆議院法務委員会で、警察庁の政府参考人は、次の実績を明らかにしています。

2024年10月から11月末までに、売春防止法第5条第3号違反で50人を逮捕。

これは、いわゆる立ちんぼの客待ち行為が、どの法律のどの条文によって摘発されているのかを示す具体的な事例です。

単なる迷惑行為として処理されたのではなく、売春目的の客待ちという刑事上の被疑事実で逮捕されています。

【2026年最新動向】大久保公園の立ちんぼは消えたのか?

2026年の歌舞伎町では、取り締まりと地域の防犯対策によって、大久保公園周辺の状況に変化が生じています。

ただし、路上売春そのものがなくなったと判断することはできません。

2026年夏の現地報道で見えた変化

2026年8月14日、集英社オンラインは「新宿立ちんぼ・2026夏」と題した現地取材記事を掲載しました。

記事では、以前は大久保公園周辺に多く見られた女性の客待ちが目立たなくなっていると報告しています。

一方、女性たちが完全に歌舞伎町から姿を消したわけではありません。

翌15日の続報では、一部の女性が周辺のラブホテル街に移り、歩きながら相手を探す形で客待ちを続けている実態が紹介されました。

いわゆる「歩きんぼ」と呼ばれる形態です。

同記事の現地取材では、公園前で女性を探す男性の姿も確認されています。

この報道が示すのは、特定の場所から客待ちが減少しても、需要や仲介の構造が残っていれば、活動場所や形態が変化する可能性があるということです。

新宿区も2026年度から巡回時間を拡大

警視庁の取り締まりだけでなく、新宿区も地域の安全対策を進めています。

2026年2月17日に公表された吉住健一区長の令和8年度区政基本方針では、大久保公園周辺地域の防犯対策について具体的な方針が示されました。

新宿区によると、2025年7月から、17時~22時の時間帯に青色防犯パトロールカーによる巡回活動を実施しています。

さらに2026年度からは、巡回時間を次のように拡大する方針です。


大久保公園周辺の青色防犯パトロール

2025年7月から

17:00~22:00


1日5時間


2026年度から

16:00~23:00


1日7時間・2時間拡大

新宿区「令和8年度 区政の基本方針説明」に基づく

これは警視庁の刑事捜査とは別に、自治体が地域の安全や秩序を維持するために取り組む対策です。

2026年の歌舞伎町では、警察による摘発と自治体による巡回の両面から、環境改善が進められています。

ただし、巡回時間の拡大と逮捕者数の減少は同じ意味ではありません。

現場の人数が減ったとしても、それだけで問題が解消されたとは判断できないのです。

【背景を検証】立ちんぼとホストの売掛金問題、女性支援の課題

立ちんぼ問題を犯罪の側面だけから見ていると、なぜ客待ちが繰り返されるのかという背景を見落とします。

2025年の警視庁の摘発データでは、ホストクラブやコンセプトカフェなどの費用を目的とした女性が48人いました。

この数字は、路上売春と夜の繁華街の消費構造が無関係ではないことを示しています。

ホストクラブの売掛金が問題になる理由

ホストクラブの売掛金問題とは、女性客が飲食代などを後払いにし、多額の債務を抱える状況を指します。

警察庁は、悪質なホストクラブの問題について、女性客に好意を抱かせて多額の債務を負わせ、その返済のために売春や性風俗店での稼働を余儀なくさせる営業行為があると説明しています。

この問題では、単に女性が自分の意思で路上に立っているという説明だけでは不十分なケースがあります。

例えば、借金の返済を迫られ、売春を強要されている場合には、売春をする本人だけでなく、強要した側の責任も問われます。

売春防止法第7条では、欺いたり、困惑させたり、脅迫や暴行を加えたりして売春をさせる行為を処罰しています。

さらに、こうした犯罪に伴って対償を受け取った場合などには、第8条による加重処罰が問題になります。

ホスト側の取り締まりも強化されている

2025年5月には、悪質ホストクラブ問題への対応を含む風営法改正が成立・公布されました。

警察庁によると、関連規定は2025年11月28日までにすべて施行されています。

警察は風営適正化法だけでなく、売春防止法や職業安定法なども活用し、悪質な営業行為への取り締まりを進めています。

特に、ホストクラブの利用料金を返済させるために売春をさせたり、性風俗などの有害な業務を紹介したりする行為は、関連法令による処罰の対象になり得ます。

実際、2023年には、ホストクラブの女性客に売掛金を返済させるため、大久保公園で客待ちをさせたとして男性が逮捕された事例もありました。

報道によると、女性客には約20万円の売掛金があり、男性が売春をして返済するよう求めた疑いが持たれていました。

ただし、この事件では東京地検が2024年3月に男性を不起訴処分としており、その理由は公表されていません。

逮捕されたことと有罪が確定したことは、明確に区別する必要があります。

摘発だけでは解決しない女性支援の問題

2025年に逮捕された112人のうち、80人は初犯でした。

また、警視庁が公表した動機には、ホストやコンセプトカフェなどの費用だけでなく、生活困窮も含まれています。

中には若年者もおり、2025年の最年少逮捕者は16歳でした。

こうした状況では、逮捕や取り締まりだけで問題を解決することは困難です。

必要になるのは、経済的な自立、借金問題の解決、住居の確保、就労支援、精神的なケアなどを組み合わせた支援です。

警視庁保安課も、2025年の摘発実績の発表に際して、困難な問題を抱える女性への支援を充実させる考えを示しています。

相談先としては、次の公的窓口があります。

相談内容 窓口
女性が抱える生活上の問題 女性相談支援センター #8778
ホストによる売春強要などの犯罪被害 警察相談専用電話 #9110
ホストクラブとの契約・消費者トラブル 消費者ホットライン 188
売掛金などの法的トラブル 法テラス 0570-078374
性犯罪・性暴力被害 ワンストップ支援センター #8891

警察庁も、悪質ホストクラブの被害に遭った場合は一人で悩まず、警察や関係機関に相談するよう呼びかけています。

【プロの結論】立ちんぼ犯罪は取り締まりだけで解決できるのか

立ちんぼ問題を理解するためには、3つの視点を分けて考える必要があります。

第一に、法律上の違法性です。

売春防止法第3条は売春と買春を禁止していますが、それ自体には直接の刑罰がありません。

一方、第5条は売春目的の客待ちや勧誘を処罰します。

この法律構造を知らないと、「売春した人は逮捕されるのに、買った人はなぜ逮捕されないのか」という疑問に正確に答えられません。

第二に、第三者による搾取です。

ホストクラブの売掛金や売春の周旋など、本人以外の第三者が利益を得る構造が問題になります。

強要や困惑によって売春をさせている場合は、単なる客待ちとは異なる犯罪として処理される可能性があります。

第三に、支援の必要性です。

大久保公園周辺での摘発者が年間100人前後で推移していること、初犯者や10代の逮捕者が存在することは、犯罪の取り締まりだけではなく、生活環境や経済的な問題への対応も必要であることを示しています。

現地から姿が消えたように見えても、周辺地域に移動しているのであれば、問題の本質は解消されていません。

今後の対策を評価する際には、次の点を見る必要があります。

- 客待ちや勧誘の摘発だけでなく、周旋する側の取り締まりが進んでいるか。
- 買春する側への対応や法制度のあり方が議論されているか。
- ホストクラブの不当な債務負担や売春強要への対策が機能しているか。
- 若年者や生活困窮者が再び路上に戻らないための支援があるか。
- 大久保公園以外の周辺地域でも実態把握が進んでいるか。

立ちんぼ問題は、単純な風紀問題ではありません。売春防止法の制度設計、夜の繁華街の経済構造、若年女性の貧困、性的搾取、買春需要が重なった社会問題です。

【立ちんぼ犯罪】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:立ちんぼは路上に立っているだけで逮捕されますか?

売春目的で公衆の目に触れるような客待ちをするなど、売春防止法第5条の要件に該当すれば処罰対象になります。ただし、単に路上に立っているという事実だけで直ちに犯罪が成立するわけではありません。

Q2:立ちんぼを買った男性にも罰則はありますか?

成人同士の売買春については、売春防止法第3条で禁止されていますが、買春行為そのものに対する直接の刑罰はありません。ただし、児童買春や性犯罪など、別の法律に違反すれば処罰されます。

Q3:売春防止法第5条の罰金はいくらですか?

6か月以下の拘禁刑または2万円以下の罰金です。売春の仲介をする第6条の場合は、2年以下の拘禁刑または5万円以下の罰金となります。

Q4:2026年現在、大久保公園の立ちんぼはなくなりましたか?

2026年8月の現地報道では、大久保公園前の客待ちは以前より目立たなくなった一方、周辺のラブホテル街などに活動場所を移した女性もいると伝えられています。問題が完全に解消したわけではありません。

Q5:ホストの売掛金を返すために売春を強要された場合、誰が罪に問われますか?

売春を強要した側には、行為の内容によって売春防止法第7条や第8条、職業安定法などが適用される可能性があります。被害を受けている場合は、警察や女性相談支援センターなどへの相談が重要です。

まとめ:2026年の立ちんぼ問題は法律と支援の両面から考える

立ちんぼ犯罪の中心となるのは、売春防止法第5条が定める売春目的の勧誘・客待ちです。公衆の目に触れる形で客を待つ行為は、実際に売春が成立していなくても処罰対象になる可能性があります。

【検証資料 1】立ちんぼ犯罪の当時の様子・関連報道写真(出典:Yahoo!ニュース)

一方、売春防止法第3条は買う側も禁止していますが、成人同士の売買春そのものには直接の刑罰がありません。周旋や売春の強要など、第三者による助長・搾取行為には別の罰則が設けられています。

2025年の大久保公園周辺の逮捕者は延べ112人。2026年には新宿区の防犯巡回が拡大され、現地の客待ちにも変化が見られています。しかし、場所を移しただけでは問題の根本的な解決にはなりません。

今後注目すべきなのは、警視庁の摘発実績だけではなく、ホストの売掛金問題への対応、仲介業者への取り締まり、買春需要への対策、そして困難を抱える女性や若年者への継続的な支援です。法律の適用と人権・生活支援の両方が機能することが、歌舞伎町の環境改善につながる課題です。