手話は世界共通ではない?日本手話・ASL・BSLと国際手話の違いを2026年最新解説
手話は世界共通なのでしょうか。日本で覚えた手話を使えば、アメリカやイギリス、ほかの国でも会話ができると思っている人は少なくありません。しかし、実際には手話は国や地域によって異なり、それぞれ独自の文法や歴史、文化を持っています。世界には300を超える手話言語が存在すると国連も紹介しています。
一方、国境を越えた交流では「国際手話(International Sign)」が使われることがあります。では、国際手話なら誰とでも通じるのでしょうか。2026年11月現在の公的資料や世界ろう連盟、各国の公的機関、国立国語研究所などの情報をもとに、日本手話・アメリカ手話(ASL)・イギリス手話(BSL)の違い、手話の文法、地域差、海外旅行での実用性、そして2025年に成立・施行された手話施策推進法の動向まで整理します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】 - 手話は世界共通ではない: 国連は世界に300を超える手話言語があると紹介しており、国や地域によって語彙や文法が異なります。 - 国際手話は万能の共通語ではない: 国際会議や国際交流で使われますが、固定された世界統一の手話言語ではありません。 - 日本でも制度が前進: 2025年6月25日に手話施策推進法が公布・施行され、2026年は手話の習得・使用環境や文化の継承を支える施策が進められています。
【結論を先に解説】手話は世界共通ではない!国によって違う理由とは?
手話は世界共通ではありません。
日本で使われている日本手話と、アメリカのASL、イギリスのBSLは、それぞれ異なる言語です。日本語と英語が別の言語であるように、手話にも独立した言語体系があります。
世界ろう連盟(WFD)の公式FAQでも、手話は普遍的なものではなく、国や地域によって異なる文化を持つと説明されています。
国連の「手話言語の国際デー」に関する解説でも、世界には300を超える異なる手話言語があると紹介されています。なお、世界ろう連盟のFAQでは200を超える国・地域の手話言語が紹介されており、集計対象や分類方法によって数字には違いがあります。いずれも、単一の世界共通手話が存在しないことを示しています。
なぜ手話は国によって違うのか

大きな理由は、手話が単純なジェスチャーの集合ではなく、ろう者のコミュニティの中で自然に発展してきた言語だからです。
音声言語が地域の歴史や文化、生活習慣によって変化するように、手話も学校や家庭、地域社会での交流を通じて発展してきました。
例えば、同じ意味を表す場合でも、国によって使う手の形や動き、表情が異なります。
さらに、手話は音声言語をそのまま手で再現したものではありません。日本語を話す人が日本手話を使い、英語を話す人がASLを使うという単純な対応関係も成立しません。
実際、ASLは英語とは異なる独自の文法を持ち、BSLも英語の単語を手で置き換えただけの言語ではありません。
同じ英語圏でも手話は同じではない
特に分かりやすい例がアメリカとイギリスです。
両国では英語が広く使われていますが、手話は異なります。
- アメリカ:アメリカ手話(ASL)
- イギリス:イギリス手話(BSL)
ASLを流ちょうに使える人でも、BSLを初めて見れば理解できないことがあります。
これは、手話が音声言語の翻訳版ではなく、独自に発達した言語であることを示す代表例です。
世界の手話言語は一つに統一できない
手話の国際的な普及を考えるとき、世界共通の手話を作れば便利ではないかという発想が生まれます。
実際、1970年代には世界ろう連盟などが「Gestuno」と呼ばれる国際的な統一手話の構想を進めました。しかし、現在の国際交流で使われる国際手話は、Gestunoのように固定された人工言語として確立されたものではありません。
世界ろう連盟や世界手話通訳者協会(WASLI)は、各国の手話言語の維持と発展を重視しており、国際手話が地域の手話言語に取って代わるものではないとしています。
【日本手話・ASL・BSLを比較】世界の手話言語は何が違う?
手話の国別の違いを理解するには、代表的な3つの手話言語を比較すると分かりやすくなります。
日本手話とは?日本独自の文法を持つ言語
日本手話は、日本のろう者コミュニティの中で自然に発展してきた視覚的な言語です。
手の形や位置、動きに加え、顔の表情や視線、身体の向きなどを組み合わせて意味を表現します。
日本語と同じ意味を伝える場合でも、必ずしも日本語の語順に沿って手を動かすわけではありません。
例えば、時間や場所、話題となる対象を先に示し、その後に説明を続けるような表現があります。また、空間の中に人物や物の位置を設定し、それらの関係を示すこともできます。
日本手話は日本語の身振り版ではなく、独立した文法体系を持つ言語です。全日本ろうあ連盟も、手の形・位置・動きと表情を活用する独自の文法体系を持ち、音声言語と対等な言語であると説明しています。
アメリカ手話(ASL)とは?
アメリカ手話は、American Sign Languageの略称で、主にアメリカやカナダの一部地域で使われています。
ASLの歴史には、フランス手話(LSF)とアメリカ国内の地域的な手話が関係しています。
アメリカ国立衛生研究所の国立聴覚・コミュニケーション障害研究所(NIDCD)によると、ASLは19世紀初頭より前の時期に、フランス手話や地域の手話が交わる中で発展したと考えられています。
ASLは英語とは独立した言語です。
疑問文では眉を上げたり、目を大きく開いたり、身体を前に傾けたりするなど、顔や身体の動きが文法的な役割を果たします。
また、ASLにも地域差や世代による表現の違いがあります。
イギリス手話(BSL)とは?
イギリス手話は、British Sign Languageの略称です。
主にイングランド、スコットランド、ウェールズで使われています。
BSLも英語とは異なる独自の語彙や文法を持つ自然言語です。
イギリス政府が公表した「The British Sign Language (BSL) report 2022」では、BSLは英語の音声や文章をそのまま手で表したものではなく、語彙と統語構造が異なると説明されています。
また、2022年には英国でBSL法が成立し、BSLをイングランド、スコットランド、ウェールズの言語として法的に認める枠組みが整備されました。
代表的な手話言語・方式の比較表
それぞれの特徴を整理すると、次のようになります。
この比較で注目したいのは、同じ英語圏のASLとBSLでさえ別の言語であることです。
手話を学ぶときは、国の公用語だけで使用する手話を判断しないことが大切です。
【意外と知らない仕組み】手話の文法・地域差・日本語対応手話との違い
手話が世界共通ではない理由を理解するには、手話そのものの仕組みを知る必要があります。
手話を単語の暗記だけで捉えると、実際の会話で意味を取り違えることがあります。
手話の文法は手の動きだけで決まらない
手話の表現には、主に次のような要素があります。
- 手型: 指の形や開き方、握り方など。
- 位置: 顔や胸、身体の前など、どこで表現するか。
- 動き: 手を動かす方向、速さ、回数など。
- 手の向き: 手のひらや指先がどの方向を向くか。
- 非手指動作: 表情、視線、口の形、頭や身体の動きなど。
これらが組み合わさることで、単語だけではなく、疑問・否定・強調・人物関係なども表現できます。
特に重要なのが、顔の表情です。
例えばASLでは、疑問文を表す際に眉を上げたり、目を大きく開いたりする動きが文法的な役割を果たします。
つまり、手だけを見ていても、伝えられている情報のすべてを理解できるとは限りません。
空間を使って文法を組み立てる
手話の特徴として、空間を文法的に活用する仕組みがあります。
例えば、会話の中で登場人物Aを右側、人物Bを左側に設定した場合、その後の動きや視線によって、誰が誰に何をしたのかを表現できます。
また、物の大きさや形、動き方を手の動きで描写することもあります。
こうした表現は、単に身振りで説明しているのではありません。言語として意味を組み立てる仕組みの一部です。
日本手話と日本語対応手話の違い
日本で手話を学ぶ際に混乱しやすいのが、日本手話と日本語対応手話の違いです。
一般的には、次のような傾向があります。
日本手話
- 日本のろう者コミュニティで自然に発展した言語。
- 日本語とは異なる独自の文法構造を持つ。
- 表情や視線、空間表現などを文法に活用する。
日本語対応手話
- 日本語の語順や文法に沿って手話単語を組み合わせる傾向がある。
- 日本語の助詞などを意識した表現が使われることがある。
- 音声日本語と手話を同時に用いる場合もある。
ただし、実際の使用にはさまざまな中間的な表現があり、すべての人を二つのカテゴリーに分けられるわけではありません。
全日本ろうあ連盟は2018年6月19日の見解で、聞こえなくなった年齢や育った環境、手話を習得した時期によって使用する表現が異なることを説明しています。
そのため、日本手話と日本語対応手話の違いを理解することは大切ですが、どちらかを使う人を一律に分類したり、優劣を付けたりする考え方は適切ではありません。
日本手話にも地域差や方言がある
手話には、国ごとの違いだけでなく、同じ国内でも地域による違いがあります。
国立国語研究所の「ことば研究館」が2025年12月23日に公開した解説では、日本手話にも日本語と同じように方言があることが紹介されています。
例えば、数字の「10」を表す手型は、東京を含む一般的な表現、大阪、京都、群馬などで違いが確認されています。
また、「名前」を表す手話にも東日本と西日本で異なる表現があります。
興味深いのは、こうした地域差が単純に地理的な距離だけで決まるわけではないことです。
国立国語研究所の解説によると、ろう学校の歴史や教員の異動、学校間の交流などが手話の伝播に影響しています。
大阪と函館の間にも、ろう教育を通じた歴史的なつながりがあり、地域独自の共通表現が使われてきました。
さらに、同じ手型でも地域によって意味が異なる場合があります。
これは手話も生きた言語であり、地域社会や世代の変化とともに語彙や表現が発展していることを示しています。
【海外では通じる?】国際手話とは何か、世界共通語にならない理由
海外で手話を使いたい人にとって、最も気になるのが国際手話の存在でしょう。
国際手話は、英語のように世界中で同じルールを使う言語なのでしょうか。
答えは、必ずしもそうではありません。
国際手話(International Sign)とは?
国際手話は、異なる手話言語を使う人たちが、国際的な場面で意思疎通するために活用する表現方法です。
英語表記ではInternational Sign、略してISと呼ばれます。
主に次のような場面で使われています。
- 国際的なろう者の会議や大会
- 世界ろう連盟の関連イベント
- デフリンピックなどの国際スポーツ交流
- 国際的なろう者コミュニティの交流
- 国境を越えたオンライン交流
国際手話では、特定の国の手話だけに依存せず、複数の手話の語彙や視覚的に理解しやすい表現、身振りなどを組み合わせて意思疎通します。
例えば、相手が知らない表現を使ってしまった場合には、別の手話に置き換えたり、動きを大きくして意味を説明したり、文字や指文字を併用したりします。
重要なのは、相手に合わせて表現を調整することです。
国際手話は世界共通なのか?
国際手話も、厳密な意味での世界共通語ではありません。
世界手話通訳者協会(WASLI)が世界ろう連盟と共有する国際手話に関する解説では、国際手話は固定された語彙や文法を持つ独立した言語というより、複数の言語資源を組み合わせるコミュニケーション実践として説明されています。
また、国際手話は使用する人や交流する相手によって表現が変わります。
ヨーロッパを中心に発展してきた経緯があり、国際会議ではヨーロッパ由来の表現がよく使われます。ASLの影響も受けています。
そのため、国際手話を使えば世界中のろう者と必ず会話できる、という理解は正確ではありません。
特に、国際交流の経験が少ない人や、国際手話に触れたことがない人にとっては、理解するのが難しい場合があります。
国際交流ではどのように意思疎通している?
国際的なろう者の交流では、国際手話だけに頼っているわけではありません。
実際には、次のような方法が組み合わされています。
1. 相手が理解できる手話表現を探す。
2. 視覚的に意味を想像しやすい表現を使う。
3. 身振りや指さしで対象を説明する。
4. 必要に応じて文字や指文字を使う。
5. 表情や身体の動きでニュアンスを補う。
こうした相互調整は、国際手話を使った交流の大切な特徴です。
WASLIは、国際手話を学ぶための前提として、まず少なくとも一つの手話言語を身につけ、実際に国際的な交流の場で使われる表現に触れることを勧めています。
海外旅行で日本手話は通じる?
海外旅行で日本手話を使った場合、相手が同じ日本手話を知らなければ、十分な意思疎通ができない可能性があります。
ただし、まったくコミュニケーションが成立しないというわけでもありません。
視覚的に意味が伝わりやすい表現や、指さし、身振り、筆談などを組み合わせることで、簡単な意思疎通ができる場面もあります。
海外旅行で手話を使いたい場合は、次の準備がおすすめです。
- 渡航先で使われている手話言語を調べる。
- 現地の基本的な挨拶や自己紹介を覚える。
- 国際手話の基本的な表現にも触れておく。
- スマートフォンの文字入力や翻訳ツールを併用する。
- 重要な説明や医療・行政手続きでは専門の手話通訳を依頼する。
特に、病院や警察、契約、行政手続きなど、正確な意思疎通が必要な場面では、簡単なジェスチャーだけで済ませないことが大切です。
【歴史と文化を解説】手話はどのように発展してきた?世界と日本の歩み
手話の違いを理解するには、歴史的な背景も欠かせません。
手話は誰か一人が考案したものではなく、ろう者のコミュニティの中で受け継がれ、発展してきた言語です。
日本手話の歴史は1878年の京都から
日本のろう教育の歴史を語るうえで重要なのが、1878年(明治11年)に京都で開設された京都盲唖院です。
全日本ろうあ連盟の歴史紹介や京都府立聾学校の沿革によると、京都盲唖院は日本で最初期の本格的なろう教育機関として設立されました。
その後、1880年には東京、1895年には函館にも盲唖学校が設立され、ろう者同士が集団生活を送る教育環境の中で手話が発展していきました。
こうした学校間のつながりや教員の移動は、地域ごとの手話表現にも影響を与えています。
1880年のミラノ会議と手話教育への影響
世界の手話史において大きな転換点となったのが、1880年のミラノ会議です。
この会議では、ろう教育における口話法を重視する方針が推進され、手話を教育から排除する動きが広がりました。
イギリスろう者協会(BDA)の歴史資料でも、ミラノ会議が手話教育の衰退や、ろう学校からのろう教員の排除につながった経緯が説明されています。
日本でも大正時代以降、口話教育が広がっていきました。
一方、ろう者たちは仲間同士の交流を通じて手話を守り、次の世代へと伝えてきました。
全日本ろうあ連盟も、手話が長い間、教育や社会の中で使用を制限されてきた歴史と、ろう者自身が言語と文化を守ってきた経緯を紹介しています。
手話は単なる意思疎通の手段ではない
手話には、独自の表現や語彙、地域文化、歴史的な背景があります。
例えば、同じ出来事を説明する場合でも、手の動きや視線の使い方、身体の向きなどによって伝わるニュアンスが変わります。
また、ろう者同士の交流を通じて生まれた表現や、学校生活の中で受け継がれてきた言い回しもあります。
そのため、手話を単なる福祉上のコミュニケーション手段としてだけ捉えると、その言語的・文化的な価値を見落としてしまいます。
2017年には国連総会で9月23日を「手話言語の国際デー」とする決議が採択されました。この日は、1951年9月23日に世界ろう連盟が設立されたことに由来しています。
【2026年最新】手話に関する施策推進法で日本はどう変わる?
2026年の日本で、手話をめぐる大きな制度上の動きとして注目されるのが、2025年に成立した「手話に関する施策の推進に関する法律」です。
一般に「手話施策推進法」と呼ばれるこの法律は、手話を使用する人の生活や社会参加を支えるため、国と地方公共団体の責務や基本施策を定めています。
手話施策推進法は2025年6月25日に公布・施行
内閣府の公式資料によると、同法は次の経過をたどりました。
- 2025年6月18日: 国会で全会一致により成立。
- 2025年6月25日: 令和7年法律第78号として公布。
- 2025年6月25日: 同日施行。
- 2026年: 国や地方公共団体による施策の推進が継続。
この法律では、手話が使用者にとって日常生活や社会生活を営むうえで重要な意思疎通の手段であり、言語であることが明記されています。
また、手話の習得や使用環境の整備、手話文化の保存・継承・発展、国民の理解と関心の増進が基本的な方向性として掲げられています。
2026年に進められている主な施策
令和8年版障害者白書では、手話施策推進法に基づく政府の取り組みとして、次の項目が示されています。
1.子どもと保護者への手話習得支援
手話を必要とする子どもや保護者に対して、情報提供や学習機会の確保を進めます。
2.手話で学べる教育環境の整備
学校において、手話による教育や教材、教員、通訳などの支援体制を整えることが盛り込まれています。
3.日常生活や職場で手話を使える環境づくり
学校だけではなく、職場や地域でも手話を使って生活できる環境の整備が求められています。
4.災害時の情報保障
災害が発生した際に、手話による情報提供を受けられる体制の整備も重要な施策です。
5.手話通訳者の養成と確保
手話通訳者の人材確保や研修、処遇の改善などが課題となっています。
6.手話文化の保存と情報発信
手話に関する理解を広げ、文化を次世代へ引き継ぐための取り組みが進められています。
手話通訳者はどれくらいいる?
令和8年版障害者白書の概要には、手話通訳に関する人材の公的な数字も掲載されています。
- 都道府県の養成事業における手話通訳者の登録者数:10,080人(2024年3月31日現在)
- 厚生労働大臣が認定する手話通訳士の有資格者数:4,258人(2025年3月14日現在)
この2つは集計時点と資格・登録の区分が異なります。同じ人材を単純に足し合わせることはできません。
それでも、手話による情報保障を支える専門人材の存在と、安定的な養成が必要であることが分かります。
9月23日は「手話の日」
手話施策推進法では、毎年9月23日を「手話の日」と定めています。
この日は国連の「手話言語の国際デー」と同じ日です。
内閣府は2026年度も、手話に対する理解と関心を深めるため、国や関係団体、自治体などによる関連行事を紹介しています。
また、子ども向けの学習教材や手話を使った情報発信なども進めています。
手話施策推進法で世界共通の手話ができるわけではない
ここで注意したいのは、手話施策推進法が世界共通の手話を定める法律ではないことです。
この法律の目的は、日本国内で手話を必要とする人が手話を学び、使い、文化を受け継げる環境を整えることにあります。
国際的な手話の統一ではなく、国内の言語的な権利や社会参加を支える制度です。
この点を理解すると、2026年の手話政策が目指す方向性も明確になります。
【プロの結論】手話の世界共通化より大切なのは言語の多様性を守ること
手話は世界共通ではありません。しかし、それは国際交流ができないという意味ではありません。
日本手話、ASL、BSLなどの異なる手話言語を使う人たちは、国際手話や視覚的な表現、身振り、文字などを組み合わせながら交流しています。
専門的な視点から見ると、手話を理解する際に大切なのは、次の3つです。
第一に、手話をジェスチャーの集合として扱わないこと。
手話には独自の語彙や文法、歴史があります。単語の意味だけを覚えるのではなく、表情や視線、空間表現を含めた言語体系として理解する必要があります。
第二に、国際手話を万能の共通語だと思わないこと。
国際手話は異なる言語背景を持つ人同士の交流を助けますが、誰もが知っている言語ではありません。複雑な内容や重要な手続きでは、専門的な通訳や相手が使う手話言語への配慮が必要です。
第三に、手話の地域差や文化を尊重すること。
日本手話にも地域方言があり、同じ手話言語の中でも世代や生活環境による違いがあります。こうした多様性は、言語が生きている証拠でもあります。
世界共通の手話を一つ作ることだけを目指すのではなく、それぞれの地域で受け継がれてきた手話言語を尊重し、異なる言語を使う人同士が意思疎通できる仕組みを整えることが大切です。
【手話世界共通】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:手話は世界共通ではないのですか?
A1:世界共通ではありません。日本手話、アメリカ手話(ASL)、イギリス手話(BSL)など、国や地域によって異なる手話言語が存在します。国連は世界に300を超える手話言語があると紹介しています。
Q2:国際手話を覚えれば世界中のろう者と話せますか?
A2:必ずしも話せるとは限りません。国際手話は国際会議や交流で使われますが、すべてのろう者が習得しているわけではなく、表現も相手や状況によって変わります。
Q3:日本手話とアメリカ手話は似ていますか?
A3:基本的には別の言語です。語彙や文法が異なるため、日本手話を習得していてもASLをそのまま理解できるとは限りません。
Q4:アメリカ手話とイギリス手話は同じですか?
A4:異なる言語です。両国では英語が使われていますが、ASLとBSLの語彙や文法は異なります。ASLが分かる人でもBSLを理解できない場合があります。
Q5:日本手話と日本語対応手話は何が違いますか?
A5:日本手話は独自の文法体系を持つ自然言語で、日本語対応手話は日本語の語順や文法に沿って表現する傾向があります。ただし、実際の使用には多様な形があります。
Q6:手話にも方言はありますか?
A6:あります。日本手話にも東京、大阪、京都、群馬など地域ごとの表現があり、世代による違いも存在します。国立国語研究所も地域差を具体例とともに紹介しています。
Q7:2026年現在、日本で手話を保護する法律はありますか?
A7:あります。「手話に関する施策の推進に関する法律」が2025年6月18日に成立し、同月25日に公布・施行されました。手話の習得や使用環境の整備、手話文化の継承などを国と地方公共団体が推進するための法律です。
まとめ:手話は世界共通ではないからこそ文化と権利を尊重したい
手話は世界共通ではなく、日本手話、ASL、BSLなど、国や地域によって独自の言語体系が発展しています。
また、国際手話は国際交流や会議で活用される便利なコミュニケーション手段ですが、世界中の人が同じように理解できる統一言語ではありません。
今回のポイントを整理すると、次のとおりです。
- 世界には300を超える手話言語がある。
- 日本手話とASL、BSLはそれぞれ異なる言語である。
- 手話には独自の文法や表情、空間表現がある。
- 同じ国の中でも地域差や世代差が存在する。
- 国際手話は異なる言語背景を持つ人同士の交流に使われる。
- 2025年6月に手話施策推進法が施行され、2026年も国内の環境整備が進められている。
手話を学ぶ際には、単語を覚えるだけではなく、その言語が育まれてきた歴史や文化にも目を向けることが大切です。
世界共通ではないからこそ、それぞれの手話言語を尊重し、異なる言語を使う人同士が理解し合える社会を築いていく必要があります。