マーガリンは体に悪い?2026年最新データで検証する危険説の真相とバターとの違い
「マーガリンは体に悪い」「食べ続けると血管が詰まる」「バターより危険な食品だ」――。こうした話を聞いて、毎朝パンに塗っているマーガリンをやめるべきか、迷っている人も多いのではないだろうか。
実際、マーガリンが健康面で問題視されてきた背景には、製造過程で発生するトランス脂肪酸がある。過剰摂取によって悪玉コレステロール(LDL)が増加し、善玉コレステロール(HDL)が減少するなど、心血管疾患との関連が科学的に指摘されている。一方、2026年現在の日本で販売されているマーガリンは、かつての製品と同じように考えることはできない。製造技術の改善によってトランス脂肪酸の含有量が大幅に低下しているためだ。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 現在のマーガリン: 日本で販売される製品は製造技術の進歩によってトランス脂肪酸が大幅に低減されている。
- 健康リスク: トランス脂肪酸の過剰摂取は冠動脈疾患のリスクを高めるが、日本人の平均的な摂取量では健康影響は小さいと評価されている。
- 選び方: マーガリンかバターかという二択ではなく、トランス脂肪酸、飽和脂肪酸、総摂取量、原材料を確認することが大切。
【健康への影響】マーガリンが体に悪いといわれる本当の理由はトランス脂肪酸

マーガリンの危険説を理解するには、まずトランス脂肪酸という成分を知る必要がある。
トランス脂肪酸は脂質を構成する脂肪酸の一種で、天然由来のものと、食品の加工・精製工程で発生するものがある。マーガリンの場合、かつて製造時に使用されていた部分水素添加油脂が主要な問題となった。
LDL増加とHDL減少が心血管疾患につながる

トランス脂肪酸を過剰に摂取すると、血液中のLDLコレステロールが増加し、HDLコレステロールが減少することが知られている。
LDLコレステロールは、増えすぎると血管壁に蓄積し、動脈硬化を進行させる要因となる。一方、HDLコレステロールには余分なコレステロールを回収する働きがある。そのため、LDLの増加とHDLの減少が重なると、冠動脈疾患のリスクが高まる。
厚生労働省も、トランス脂肪酸を過剰摂取した場合、心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患が増加する可能性が高いと説明している。
世界保健機関(WHO)は、トランス脂肪酸の摂取量を総エネルギー摂取量の1%未満に抑えるよう勧告している。1日2,000kcalを摂取する場合、約2.2g未満が目安となる。
糖尿病や認知症にも関係するのか

トランス脂肪酸については、糖尿病、認知症、肥満などとの関連を調べた研究も存在する。しかし、すべての疾患について因果関係が確立しているわけではない。
厚生労働省のQ&Aでは、糖尿病、がん、胆石、脳卒中、認知症などについて、トランス脂肪酸との関連は分かっていないと説明されている。
したがって、マーガリンを食べると認知症になる、あるいは糖尿病を発症すると断定するのは適切ではない。現時点で特に注意すべきなのは、トランス脂肪酸の過剰摂取と冠動脈疾患の関係である。
【製造方法の真相】部分水素添加が危険説を生んだ歴史と現在の変化
なぜマーガリンにトランス脂肪酸が含まれるようになったのか。その理由は、植物油の性質と食品製造技術にある。
液体の植物油を固めるために使われた水素添加
大豆油や菜種油などの植物油は、常温では液体のものが多い。しかし、パンに塗るマーガリンには、適度な硬さと伸びやすさが求められる。
そこで以前から使われてきたのが水素添加という加工技術だ。
水素添加は、油脂に水素を加えて脂肪酸の二重結合を減らし、油脂の融点や硬さを調整する方法である。この工程で部分的に水素添加すると、脂肪酸の構造が変化し、トランス脂肪酸が生成されることがある。
つまり、マーガリンそのものが毒性物質だから問題になったのではない。従来の製造方法によって、健康への影響が懸念される脂肪酸が比較的多く含まれていたことが問題だった。
なお、トランス脂肪酸は植物油の精製時にも微量に発生するほか、牛や羊などの反すう動物の体内でも天然に生成される。マーガリンだけに存在する成分ではない。
2026年のマーガリンはエステル交換などで製造
現在は、従来の部分水素添加に依存しない製造方法への転換が進んでいる。
農林水産省によると、食品メーカーはエステル交換や油脂の分別などの技術を活用し、トランス脂肪酸の生成を抑えながら、製品の硬さや口どけを調整している。
エステル交換は、油脂を構成する脂肪酸の結合位置を組み替えることで、油脂の物理的性質を調整する技術だ。トランス脂肪酸を大量に生成する部分水素添加とは異なる方法で、マーガリンに必要な性質を実現できる。
また、パーム油など原料油脂の見直しや、複数の油脂を組み合わせる技術も低減に役立っている。
2026年10月29日付のオリコンニュースでは、雪印メグミルクへの取材を通じて、家庭用マーガリンの製造技術の変化が紹介された。同社は2018年に家庭用マーガリン類すべてで部分水素添加油脂の使用を終了したという。
同記事によれば、同社の「ネオソフト」は、トランス脂肪酸の含有量が2004年時点の10g当たり0.8gから、現在は0.05gに減少した。約16分の1という大幅な低減である。
これは一企業の特定商品に関する実績だが、かつてのマーガリンと現在の商品を同じ基準で評価できないことを示す具体例となっている。
【2026年最新データ】マーガリンのトランス脂肪酸含有量はどこまで減った?
現在のマーガリンの安全性を考えるうえで、最も参考になるのが農林水産省による食品中のトランス脂肪酸含有実態調査だ。
2026年11月時点で確認できる同省の直近の調査結果は、令和4・5年度(2022・2023年度)に実施され、2024年10月30日に公表されたもの。国内で市販されている食品522点を対象に、トランス脂肪酸や飽和脂肪酸などが調査された。
マーガリン100g当たりの含有量は0.65g
調査によると、マーガリンのトランス脂肪酸含有量の中央値は100g当たり0.65gだった。
これを家庭で使う量に置き換えてみよう。食パン1枚にマーガリンを10g塗ると仮定すると、トランス脂肪酸の摂取量は約0.065gとなる。農林水産省の試算では、これは総摂取エネルギーに占める割合で約0.03%に相当する。
かつての調査と比較すると、含有量が大きく低下していることが分かる。
年代別の含有量と健康評価の関係は次のとおりだ。
| 時期・項目 | トランス脂肪酸量・基準 | 意味・背景 |
|---|---|---|
| 2006・2007年度 | 8.7g/100g | 初期調査のマーガリンの中央値 |
| 2014・2015年度 | 0.99g/100g | 製造技術の改善によって低減 |
| 2022・2023年度 | 0.65g/100g | 直近の農林水産省調査の中央値 |
| 家庭での使用量10g | 約0.065g | 直近調査の中央値から換算 |
| 日本人の平均摂取量 | 総エネルギー比約0.3% | 2012年の食品安全委員会による評価 |
| WHOの目標 | 総エネルギー比1%未満 | トランス脂肪酸の摂取目標 |
なお、調査結果の比較には注意点もある。農林水産省は、調査ごとに試料の採取方法や対象商品の銘柄が異なるため、数値の変化がそのまま市場全体の製品改良率を表すわけではないと説明している。
2022・2023年度の調査では、マーガリン60試料の中央値が0.65gだった一方、範囲は0.33~1.3gと幅がある。すべての商品が同じ含有量というわけではない。
日本人の平均摂取量はWHOの目標を下回っている
食品安全委員会が2012年3月に公表した食品健康影響評価では、日本人のトランス脂肪酸の平均摂取量は総エネルギー摂取量の約0.3%と推定された。
さらに、摂取量が多い人から上位5%の層でも、男性0.70%、女性0.75%とされ、WHOの目標である1%未満に収まっていた。
ただし、この0.3%という数値は2012年の評価に基づく推定値であり、2026年に実施された新しい全国平均調査の数値ではない。食品中の含有量がその後も減少傾向にあることと合わせて理解する必要がある。
【日本で販売される理由】アメリカの規制と日本の安全性評価は何が違う?
マーガリンの危険説が再び広がるきっかけの一つとなったのが、アメリカでの規制だ。
「アメリカではマーガリンが販売禁止になった」という説明を見かけることがある。しかし、これは正確ではない。アメリカで規制されたのは、トランス脂肪酸を多く生成する原因となる部分水素添加油脂(PHOs)であり、マーガリンという食品全体ではない。
アメリカでは2018年から部分水素添加油脂を規制
米国食品医薬品局(FDA)は2015年、部分水素添加油脂について、一般に安全と認められる食品成分(GRAS)ではないとの最終決定を発表した。
その後、原則として2018年6月18日以降、食品メーカーが新たに食品へ部分水素添加油脂を使用することが認められなくなった。一定の例外的用途には別の経過措置が設けられている。
重要なのは、規制対象が特定の製造原料である点だ。マーガリンそのものや、天然由来のトランス脂肪酸まで一律に禁止したわけではない。
日本が一律禁止ではなく低減を進めている背景
日本では、食品安全委員会によるリスク評価で、一般的な食生活におけるトランス脂肪酸の健康影響は小さいと判断されている。
その理由は、日本人の平均摂取量がWHOの目標を下回っていることにある。日本では、海外のように食品への使用を一律に禁止するのではなく、食品事業者による含有量の低減や消費者への情報提供を進めてきた。
厚生労働省や農林水産省の説明を踏まえると、日本でマーガリンが販売されているのは、危険性が存在しないからではなく、国内の摂取実態を踏まえたリスク評価と規制方針が異なるためだ。
この問題については、ダイヤモンド・オンラインの森勇磨氏による2024年10月20日の記事「『マーガリンは体によくない』→ではなぜ日本で売られている?」も話題となった。トランス脂肪酸の健康影響を取り上げ、日本での規制のあり方を問い直した内容だ。
また、Aiプラスクリニックたまプラーザの解説も、マーガリンが体に悪いとされる背景として、製造過程で生じるトランス脂肪酸を挙げている。こうした医療・健康情報を読む際には、危険性そのものと、現在の日本製品に含まれる量を分けて考えることが大切だ。
【バターとの比較】マーガリンとバターはどちらが健康的?選び方も解説
マーガリンを避けてバターに切り替えれば健康的になるのだろうか。実は、必ずしもそうとは限らない。
マーガリンとバターは、原料も脂肪酸の構成も異なる食品だ。どちらにもメリットと注意点がある。
バターは飽和脂肪酸が多く、マーガリンは不飽和脂肪酸が多い傾向
バターは牛乳から分離した乳脂肪を主原料とする。一方、マーガリンは植物油などの食用油脂を中心に、水などを加えて乳化した食品だ。
国立循環器病研究センターが示す一般的な食品の比較では、13g当たりの栄養成分は次のようになっている。
- 有塩バター:飽和脂肪酸6.6g、不飽和脂肪酸2.6g、コレステロール27mg
- ソフトタイプマーガリン:飽和脂肪酸3.0g、不飽和脂肪酸6.8g、コレステロール0.7mg
この比較では、マーガリンの方が飽和脂肪酸とコレステロールが少なく、不飽和脂肪酸が多い。植物油を主体とする食品ならではの特徴といえる。
ただし、これは特定の食品成分データに基づく比較であり、すべてのマーガリンに当てはまるわけではない。パーム油などを多く使用する製品では、飽和脂肪酸が多くなる場合もある。
マーガリンの成分表示で確認したい5つのポイント
購入時に確認したいのは、単に「マーガリン」という商品名だけではない。裏面の原材料名と栄養成分表示をチェックすることで、商品の特徴を把握しやすくなる。
- トランス脂肪酸の含有量:メーカーが数値を公開している場合は、100g当たりだけでなく、実際に使う10g当たりの量も確認する。
- 飽和脂肪酸:トランス脂肪酸だけに注目せず、飽和脂肪酸の量も比較する。
- 原材料名:食用植物油脂など、使用されている油脂の種類を確認する。
- 脂質とカロリー:ファットスプレッドなど油脂含有率の違いにも注目する。
- メーカーの情報開示:商品別のトランス脂肪酸分析値や低減への取り組みが公開されているか確認する。
特に注意したいのが、トランス脂肪酸の表示制度だ。日本では、トランス脂肪酸の含有量について一律の義務表示は行われておらず、消費者庁が情報開示に関する指針を設け、事業者による自主的な情報提供を促している。
そのため、一般的な栄養成分表示にトランス脂肪酸の記載がないからといって、含有量が完全にゼロだとは判断できない。数値が必要な場合はメーカーの公式情報を確認したい。
マーガリンとファットスプレッドの違いも知っておきたい
スーパーで販売されている商品には、「マーガリン」だけでなく「ファットスプレッド」と表示されたものもある。
農林水産省のJAS規格では、油脂含有率80%以上のものをマーガリン、80%未満のものをファットスプレッドと定義している。
ファットスプレッドはマーガリンより油脂の割合が少なく、水分が多い傾向にある。また、果実やチョコレートなどの風味原料を加えた製品もある。
ただし、油脂含有率が低いからといって、必ずしも健康に優れているとは限らない。カロリー、飽和脂肪酸、糖類なども含めて判断する必要がある。
【マーガリンが体に悪いという説】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:マーガリンは毎日食べても大丈夫ですか?
A1:一般的な日本人の食生活では、トランス脂肪酸による健康影響は小さいと食品安全委員会が評価している。ただし、食べる量や商品によって含有量は異なる。毎日大量に使用するのではなく、適量を意識したい。
Q2:マーガリンとバターなら、どちらが体に悪いですか?
A2:一概にどちらが悪いとはいえない。マーガリンは商品によって不飽和脂肪酸が多く、バターは飽和脂肪酸が多い傾向がある。トランス脂肪酸、飽和脂肪酸、総摂取カロリーを比較して選ぶのがおすすめだ。
Q3:マーガリンにトランス脂肪酸が含まれていない商品はありますか?
A3:製造方法や原材料によって含有量は異なる。トランス脂肪酸を大幅に低減した商品も販売されている。商品別の分析値をメーカーが公開している場合は、その情報を確認するとよい。
まとめ:マーガリンは危険説だけで判断せず、現在の成分と摂取量で選ぶ
マーガリンが体に悪いといわれてきた最大の理由は、かつて製造過程で発生していたトランス脂肪酸にある。過剰摂取が冠動脈疾患のリスクを高めるという科学的根拠はあり、健康面で注意すべき成分であることに変わりはない。
しかし、2026年現在の日本で流通するマーガリンは、エステル交換などの製造技術の進歩によって、トランス脂肪酸の含有量が大幅に低下している。農林水産省の2022・2023年度調査でも、マーガリン100g当たりの中央値は0.65gだった。
一方、バターにも飽和脂肪酸が多いという別の注意点がある。マーガリンを避けてバターに変更するだけでは、食生活全体の脂質バランスが改善するとは限らない。
【プロの結論】健康を意識するなら、マーガリンを無条件に避けることよりも、次の3点を優先したい。
- トランス脂肪酸の含有量が少ない商品を選ぶ。
- バターも含めて飽和脂肪酸の摂取量を管理する。
- パンに塗る量を適量に抑え、食事全体の脂質バランスを整える。
かつての危険説には科学的な背景があった。しかし、製品の中身は技術の進歩によって変わっている。昔のイメージだけで判断せず、最新の公的調査と商品ごとの成分情報を確認することが、2026年の賢い食品選びにつながる。
編集上の補足: 記事内の2022・2023年度調査は、2026年時点で確認できる農林水産省の直近の公表調査として扱っています。