【なぜ執行猶予なし?】懲役8年6か月の実刑が確定した理由
- 執行猶予なし: 最終的に懲役8年6か月・罰金800万円の実刑判決が確定。 - 6か月の減刑: 控訴審では、被害者への謝罪やホストクラブ側による一部弁済の動きなどが考慮された。 - 判決確定日: 最高裁第3小法廷が2025年1月14日付で上告を棄却。1月16日に報道され、刑が確定した。
【なぜ執行猶予なし?】懲役8年6か月の実刑が確定した理由

渡辺真衣氏に執行猶予が付かなかった最大の理由は、最終的な懲役刑が8年6か月という長期に及んだからです。
日本の刑法では、初犯であっても、言い渡された刑が一定の上限を超えると、刑の全部の執行猶予を付けることはできません。
刑法25条が定める執行猶予の条件

刑法25条は、刑の全部の執行猶予について規定しています。
2024年の判決当時は、原則として次の条件が設けられていました。
- 前に禁錮以上の刑に処せられたことがないことなど、法律上の要件を満たすこと。
- 言い渡される懲役・禁錮刑が3年以下であること。
- 犯罪の内容や反省状況などを踏まえ、裁判所が執行猶予を相当と判断すること。
つまり、初犯であれば必ず執行猶予になるわけではありません。
渡辺氏の場合、名古屋地裁が懲役9年、名古屋高裁が懲役8年6か月を言い渡しています。どちらも3年を大幅に超えているため、刑法25条による全部執行猶予の対象にはなりません。
また、刑の一部執行猶予についても、原則として3年以下の刑が対象です。今回の刑期では適用できません。
反省や謝罪があっても執行猶予にならないのか

ここは誤解されやすいポイントです。
裁判では、被告人の反省、謝罪、被害弁償、前科の有無などが量刑判断に影響します。
しかし、これらの事情が認められたからといって、法律上の刑期の上限を超えて執行猶予を付けられるわけではありません。
今回の控訴審でも、謝罪や被害弁償に関する事情は考慮されました。その結果、懲役9年から8年6か月へ減刑されています。
ただし、実刑そのものを避けるほどの事情とは判断されませんでした。
減刑されたことと、執行猶予が付いたことはまったく別の意味です。
【事件の全体像】詐欺・詐欺幇助・所得税法違反の3つの罪
渡辺真衣氏の事件は、単純に男性から大金を受け取ったというだけの事件ではありません。
裁判で問題となったのは、自ら行った詐欺、詐欺の手法を第三者に教えた行為、そして所得税の申告をしなかった行為です。
1.男性3人から約1億5580万円を詐取した詐欺罪
2021年3月から2023年8月まで、渡辺氏はマッチングアプリなどで知り合った男性3人から、合計約1億5580万円をだまし取ったと認定されました。
報道された事件の内容によると、男性に恋愛感情を抱かせたうえで、経済的に困窮しているなどと説明し、金銭を要求する手口でした。
携帯電話料金の滞納や借金など、具体的な事情を伝えることで、相手に金銭を渡す必要があると思わせていました。
被害額の大きさだけでなく、相手の好意や信頼を利用して繰り返し金銭を受け取った点も、裁判で厳しく評価された部分です。
2.頂きマニュアル販売による詐欺幇助
もう一つの重要な争点が、通称「頂きマニュアル」の販売です。
渡辺氏は、自身の詐欺の手法をまとめた文書を女性に販売していました。
報道で確認されているマニュアルには、次のような名称があります。
- 「1ヶ月1000万円頂く頂き女子りりちゃんの『みんなを稼がせるマニュアル』」
- 「頂き女子の参考書」
このマニュアルを購入した女性は、男性2人から合計1065万円をだまし取る行為に及びました。
渡辺氏には、その犯行を手助けした詐欺幇助の罪が成立しています。
ここで重要なのは、単に詐欺の方法について文章を書いたことだけが問題になったのではないという点です。
実際に第三者が詐欺を行い、その犯行を助けたことが刑事責任の対象になりました。
3.約4000万円の所得税を免れた所得税法違反
さらに、渡辺氏は詐欺によって得た収入などを適切に申告せず、所得税約4000万円を免れた所得税法違反にも問われました。
2024年1月には、名古屋国税局が所得税法違反の疑いで名古屋地検に告発したと毎日新聞が報じています。
報道によれば、2021年から2年間に得た約1億1000万円の所得を申告していなかったとされます。
つまり、この事件では詐欺によって金銭を得た行為だけでなく、その所得に関する納税義務を果たさなかったことも処罰の対象になりました。
【裁判の経緯を時系列で整理】名古屋地裁から最高裁まで
渡辺真衣氏の裁判は、2024年4月の第一審判決から、同年9月の控訴審、2025年1月の最高裁決定へと進みました。
各裁判所の判断を比較すると、どこが変更され、何が維持されたのかが分かります。
判決と関係者の動きを一覧で比較
名古屋地裁の第一審は懲役9年・罰金800万円
2024年4月22日、名古屋地裁は渡辺氏に対して懲役9年、罰金800万円を言い渡しました。
検察側の求刑は懲役13年、罰金1200万円でした。
第一審判決では、恋愛感情を抱かせて金銭をだまし取った手口の悪質性や、詐欺マニュアルによって第三者の犯罪まで助長した点などが問題視されました。
スポニチの判決報道によると、大村陽一裁判長は犯行について「誠にこうかつな犯行」と評価しています。
詐欺の被害額が約1億5580万円に達したことに加え、マニュアル販売によって被害が本人以外にも広がったことが、厳しい刑につながった重要な要素です。
最高裁の上告棄却で判決確定
控訴審の判決後、渡辺氏側は上告しました。
しかし、最高裁第3小法廷は2025年1月14日付の決定で上告を棄却しました。
これによって、名古屋高裁が言い渡した懲役8年6か月・罰金800万円の刑が確定しました。
ここで押さえておきたいのは、最高裁が懲役9年に戻したわけでも、執行猶予を付けたわけでもないということです。
確定したのは、あくまで控訴審の懲役8年6か月・罰金800万円という判決です。
【なぜ6か月減刑された?】名古屋高裁が考慮した被害弁償と謝罪
第一審の懲役9年から、控訴審では懲役8年6か月へと変更されました。
では、なぜ半年だけ減刑されたのでしょうか。
大きなポイントは、第一審判決後に生じた被害弁償に関する事情と、渡辺氏の謝罪の意思です。
ホストクラブ側による一部弁済の動き
2024年9月30日の名古屋高裁判決では、詐取金の使い道となったホストクラブ側から被害者への弁済が進められていたことが考慮されました。
当時の報道では、ホストクラブ側が被害者に対して約3000万円を支払う予定があることなどが減刑の理由として伝えられています。
ここで注意したいのは、約1億5580万円の被害額が返済されたという意味ではないことです。
被害弁償に関する一定の進展があったことが、量刑を見直す事情になったということです。
また、弁済に関する事情は、渡辺氏自身が被害総額を全額返済したことを意味するものでもありません。
被害者への謝罪も量刑判断の対象に
控訴審では、渡辺氏が第一審判決後に改めて被害者に謝罪の意思を示したことも考慮されたと報じられています。
一方で、名古屋高裁は犯行の動機について厳しい評価を維持しました。
つまり、謝罪や弁済の事情は刑を軽くする材料になったものの、詐欺の悪質性そのものを打ち消すものではなかったのです。
罰金800万円が減額されなかった理由
今回の控訴審で変更されたのは懲役刑の期間です。
罰金800万円は第一審と同額のまま維持されました。
これは、懲役刑と罰金刑がそれぞれ異なる刑罰として判断されているためです。
所得税法違反という別の犯罪についても有罪とされているため、懲役刑が6か月減ったからといって、罰金まで自動的に減額されるわけではありません。
控訴審の判断は、犯罪の成立や責任を否定したものではなく、判決後の事情を踏まえて刑期を一部見直したものと理解するのが適切です。
【2026年最新の法律解説】実刑確定と執行猶予の違い
2026年現在、この事件を理解するうえでは、執行猶予と実刑の違いだけでなく、罰金刑の位置付けも押さえておく必要があります。
実刑判決が確定するとどうなる?
実刑とは、言い渡された刑の執行を猶予されていない判決を指します。
検察庁の説明によると、執行猶予が付いていない拘禁刑の判決が確定した場合、刑の執行手続きに進みます。
判決確定時に身柄を拘束されていない場合は、検察庁から呼び出しを受け、刑の執行のために出頭することになります。
渡辺氏の判決は実刑であるため、懲役8年6か月という刑期が執行されることになります。
2025年6月の拘禁刑導入と今回の判決
2025年6月1日には刑法改正によって、従来の懲役刑と禁錮刑が一本化され、「拘禁刑」が導入されました。
そのため、2026年現在の刑法25条では、執行猶予の条件が「3年以下の拘禁刑」などと表記されています。
ただし、渡辺氏の判決は2025年1月に確定したものです。
したがって、確定した刑の表記は、従来の制度に基づく「懲役8年6か月・罰金800万円」となります。
実刑と罰金は別々に考える必要がある
今回の確定判決は、懲役8年6か月と罰金800万円の両方を科すものです。
懲役刑は身体の自由を制限する刑罰であり、罰金刑は金銭の納付を命じる刑罰です。
罰金800万円を支払えば懲役刑がなくなるわけではありません。
反対に、懲役刑を終えれば罰金の支払い義務まで自動的になくなるわけでもありません。
この2つは別々に執行される刑罰です。
【よくある疑問を解決】頂き女子りりちゃんの判決と執行猶予に関するFAQ
Q1:頂き女子りりちゃんに執行猶予は付きましたか?
A1:付きませんでした。最終的に懲役8年6か月・罰金800万円の実刑判決が確定しています。
Q2:懲役9年から8年6か月に減刑されたのはなぜですか?
A2:控訴審では、渡辺氏が改めて謝罪の意思を示したことや、ホストクラブ側による被害弁償の動きなどが考慮されました。ただし、詐欺の悪質性に対する評価は維持されています。
Q3:判決が確定したのはいつですか?
A3:2025年1月14日付で最高裁第3小法廷が上告を棄却しました。1月16日に報道され、懲役8年6か月・罰金800万円が確定しました。
Q4:頂きマニュアルの販売も判決に影響しましたか?
A4:影響しています。自ら男性3人から金銭をだまし取った詐欺だけでなく、マニュアルを販売して別の女性による詐欺を手助けした詐欺幇助も有罪となっています。
Q5:被害総額はいくらですか?
A5:渡辺氏自身が男性3人から詐取した金額は約1億5580万円です。さらに、マニュアルを購入した女性が男性2人から詐取した約1065万円について、渡辺氏には詐欺幇助の責任が認定されています。
Q6:罰金800万円を支払えば刑務所に入らなくて済みますか?
A6:いいえ。罰金刑と懲役刑は別の刑罰です。罰金を納付しても、確定した懲役8年6か月の実刑がなくなるわけではありません。
【プロの結論】執行猶予の有無を判断する3つの重要ポイント
頂き女子りりちゃん事件の判決から読み取れる重要なポイントは、次の3つです。
1. 執行猶予は反省の有無だけで決まらない。 刑法25条に定められた刑期の上限があり、懲役8年6か月という判決では全部執行猶予の対象にならない。
2. 被害弁償は減刑につながる場合がある。 ただし、弁済が進んだからといって、犯罪の成立や実刑の必要性まで否定されるわけではない。
3. 詐欺の実行だけでなく、他人の犯罪を助けた行為も重大な責任を伴う。 マニュアル販売によって第三者の被害を生じさせた点も、今回の事件の重要な特徴である。
この事件は、恋愛感情や信頼を利用した詐欺が、巨額の経済的被害だけでなく、別の詐欺事件へと波及した事例です。
被害者への謝罪や弁済の動きが量刑に反映されても、犯罪によって生じた責任がなくなるわけではありません。
まとめ:2026年現在も懲役8年6か月の実刑判決が確定
「頂き女子りりちゃん」こと渡辺真衣氏に執行猶予は付いていません。
2024年4月の名古屋地裁では懲役9年・罰金800万円、同年9月の名古屋高裁では懲役8年6か月・罰金800万円となり、2025年1月の最高裁による上告棄却で最終的な刑が確定しました。
6か月の減刑には謝罪や被害弁償に関する事情が考慮されましたが、実刑という結論は変わっていません。
2026年11月現在、判決確定情報として押さえておくべき内容は、懲役8年6か月・罰金800万円、執行猶予なしという3点です。
主な参照資料:毎日新聞(2024年4月22日、2024年9月30日、2025年1月16日)、スポニチ(2024年4月23日)、TBS NEWS DIG(2025年1月16日)、e-Gov法令検索・刑法25条、検察庁「裁判の執行等について」。