【赤字の理由と自治体財政への影響】補助金依存・借入金・損失補償の問題
第三セクターの経営問題を理解するには、赤字の発生原因だけでなく、赤字を誰が補填しているのかを確認する必要があります。
特に重要なのが、自治体からの補助金、自治体による貸付金、損失補償、債務保証の4つです。
なぜ第三セクターは赤字になりやすいのか

主な原因は次の5つです。
1.需要予測と実際の利用状況に差が生じる
観光施設やリゾート開発では、開業前に想定した利用者数を確保できないと、売上高が計画を大きく下回ります。
特に大規模施設は初期投資が大きく、建設費や設備費の回収に長期間を要します。利用者が減っても、施設の維持費や固定費は簡単には削減できません。
2.人口減少と少子高齢化によって需要が縮小する
地方鉄道や地域商業施設では、人口減少が経営を直撃します。
通勤・通学客が減少すれば運賃収入が減り、商業施設なら地域住民の購買力低下が売上に影響します。
観光事業も、旅行者の行動変化や競合施設の登場によって集客が難しくなる場合があります。
3.公共性を優先して料金を上げにくい
民間企業なら採算改善のために値上げや不採算事業の撤退を検討できます。
しかし、第三セクターが生活交通や公共施設を運営している場合、料金の引き上げは住民負担に直結します。
公共サービスの維持と経営改善を同時に実現しなければならない点が、一般企業との大きな違いです。
4.経営責任と監督体制が不明確になる
自治体は株主として関与し、民間企業は経営や運営に関与するものの、両者の役割分担が曖昧なまま事業を進めるケースがあります。
赤字が発生した際に、経営陣の責任なのか、自治体の政策判断なのか、事業環境の変化なのかが整理されていなければ、抜本的な改善が進みません。
5.赤字事業の整理や撤退が遅れる
自治体の出資や支援があることで、経営不振に陥っても事業が継続される場合があります。
しかし、追加支援を続けるだけでは、事業そのものの採算性が改善するとは限りません。
内閣府の過去の経済分析でも、第三セクターでは公的部門が民間経営に依存し、民間企業が公的部門の後ろ盾に安住するという相互依存の危険性が指摘されています。
補助金依存の実態は?8,310億円が収益に計上

2024年度の調査で、地方公共団体から補助金を交付された第三セクター等は2,823法人でした。
決算が判明した5,926法人のうち、47.6%に相当します。
さらに、補助金を受け取った法人のうち2,632法人が補助金を収益として計上しています。
その金額は合計8,310億3,100万円です。
収益総額7兆4,045億円に対する割合は11.2%に達しています。
なお、地方公共団体から交付された補助金の総額は8,842億9,200万円であり、収益計上額とは異なります。
この数字から分かるのは、第三セクター等の経営が自治体の財政支援と密接に結び付いていることです。
ただし、補助金が交付されているからといって、すべてが経営失敗を意味するわけではありません。
例えば、地域の交通機関に対する補助金は、住民の移動手段を維持するための政策的な支出という側面があります。
医療・福祉施設への補助金も同様です。
問題は、補助金によって提供される公共サービスの価値が、支出額に見合っているかどうかです。
補助金がなければ維持できない事業については、自治体が公共サービスとして直接負担する場合との費用比較も必要になります。
借入金3兆4,397億円と損失補償・債務保証1兆9,360億円

2024年度の調査で特に注目されるのが、自治体と第三セクター等の金融面での結び付きです。
東京商工リサーチの集計によると、地方公共団体からの借入金残高は3兆4,397億円でした。
一方、自治体が金融機関などに設定している損失補償・債務保証の残高は1兆9,360億円です。
両者を合わせると、5兆3,757億円に達します。
この2つは、同じように扱ってはいけません。
- 借入金: 第三セクター等が自治体から直接借りている資金。返済義務は借入法人側にある。
- 損失補償: 第三セクター等の借入金などに関して、契約に基づき自治体が損失を補う仕組み。
- 債務保証: 第三セクター等が債務を返済できなくなった場合などに、保証契約に基づいて自治体が責任を負う仕組み。
損失補償や債務保証は、設定した金額がそのまま直ちに税金から支出されるという意味ではありません。
しかし、法人の経営が破綻すれば、自治体に追加的な財政負担が発生する可能性があります。
つまり、第三セクターの財務問題は、法人の貸借対照表だけでなく、自治体側の将来負担も含めて検証する必要があります。
第三セクターの赤字は自治体の財政破綻につながる?
必ずしもそうではありません。
第三セクターが赤字になった場合でも、自治体が自動的にすべての損失を負担するわけではありません。
株式会社などの法人では、原則として株主の責任は出資額の範囲にとどまります。
ただし、自治体が損失補償や債務保証を設定している場合、契約内容によっては出資額を超える負担が生じる可能性があります。
また、地方公共団体の財政健全化に関する法律では、第三セクターや地方公社の負債・債務のうち一定の部分が、将来負担比率の算定に反映されます。
宮城県も、第三セクターの負債や債務が自治体の財政状況に影響することを公式資料で説明しています。
したがって、住民が確認すべきなのは、単年度の赤字額だけではありません。
出資金、貸付金、損失補償、債務保証、追加支援の実績を合わせて見ることが重要です。
第三セクター等改革推進債とは?
経営改善が見込めない第三セクター等の整理を促すために設けられた制度が、第三セクター等改革推進債、通称「三セク債」です。
政府は2009年度から2013年度までの5年間を基本とする時限措置として制度を設け、経過措置の対象団体については2016年度まで対応しました。
自治体が第三セクター等の抜本的な整理・再編・清算などを進める際、そのための財政負担に地方債を活用できるようにした制度です。
単に赤字を埋め合わせるのではなく、経営改善が困難な法人を整理し、自治体の財政リスクを減らすことが目的でした。
この改革を通じて、第三セクター等の法人総数は2008年度の8,729法人から2024年度の7,113法人へ減少しています。
ただし、2013年度の減少率が前年度比3.8%だったのに対し、2024年度は前々年度比1.0%の減少にとどまりました。
抜本的な整理が一巡した後も、経営健全化の課題が残っていることがうかがえます。
【成功・失敗事例と2026年最新動向】第三セクターの未来はどうなる?
第三セクターの評判を考えるとき、赤字法人ばかりに注目するのは適切ではありません。
実際には、地域と連携して利用者を増やした事業者もあれば、民間株主の撤退によって解散する法人もあります。
2026年の動向を理解するうえで、成功事例と再編事例の両方を確認する必要があります。
成功事例:ひたちなか海浜鉄道は地域連携で利用者を増加
茨城県ひたちなか市・2008年4月開業
地域交通の維持と沿線活性化を両立させた代表的な事例。
ひたちなか海浜鉄道は、経営難に陥った茨城交通の湊線を引き継ぎ、2008年4月に第三セクター鉄道として開業しました。
開業後は、自治体と地域住民、鉄道会社が連携し、利用者を増やすための施策を実施しました。
主な取り組みは次のとおりです。
- 運行本数の増加
- 通学定期の割引
- ダイヤやサービスの改善
- 沿線観光地との連携
- ファンクラブによる地域住民の参加促進
- 新駅の設置や路線延伸の検討
国土交通省の資料によると、年間利用者数は第三セクター化前の2007年度の約70万人から、2019年度には約106万人に増加しました。
同年度には単年度収支でも289万円の黒字を達成しています。
この事例のポイントは、自治体が資金を投入するだけでなく、利用者を増やすための具体的な施策を実施したことです。
鉄道を単なる移動手段として捉えるのではなく、学校、観光地、地域商店などと結び付けたことが、利用者増加につながりました。
ただし、黒字化した年度の実績だけで、将来にわたる経営の安定性が保証されるわけではありません。設備更新や人口動態への対応は引き続き必要です。
2026年の再編事例:生野銀山を運営するシルバー生野が解散へ
兵庫県朝来市・観光施設
民間株主の事業撤退をきっかけに運営主体が変わる事例。
2026年5月、兵庫県朝来市の観光施設「生野銀山」を運営してきた第三セクター、シルバー生野の解散方針が報じられました。
サンテレビなどの報道によると、生野銀山は1973年に閉山した後、三菱側が90%、旧生野町が10%を出資し、1974年にシルバー生野が設立されました。
坑道の一般公開、土産物店、レストランなどを運営し、2017年には坑道作業を再現したマネキンを「銀山ボーイズ」として展開するなど、独自の集客施策にも取り組んでいました。
しかし、コロナ禍や観光需要の変化などによって来場者が減少。筆頭株主である三菱マテリアルが観光事業から撤退することになりました。
2026年度いっぱいでシルバー生野は解散し、観光施設は朝来市に無償譲渡される予定です。三菱マテリアルが所有する坑道については、市が借り受ける方針とされています。
この事例は、第三セクターが必ずしも経営破綻によって解散するわけではないことを示しています。
民間株主の撤退という経営環境の変化を受け、法人を解散したうえで、自治体が公共的な観光資源を引き継ぐ形です。
第三セクターの評価では、法人の存続そのものと、地域に必要なサービスや施設を維持できるかを区別する必要があります。
2026年最新動向:自治体による経営健全化計画が継続
2026年は、第三セクターの経営管理を見直す自治体の動きも確認できます。
その一例が秋田県です。
秋田県は2026年3月25日、「第三セクターの経営の健全化等に関する行動計画(第5次)」を公表しました。
計画の主な内容は次のとおりです。
- 対象:県の出資比率が25%以上の法人
- 対象法人数:26法人
- 計画期間:2026年度から2029年度まで
- 実施内容:各法人の事業推進、経営改善目標の設定、県の関与のあり方の検討
- 評価:毎年度実施し、結果を議会に報告
2026年度の取り組みについては、2027年に評価を実施し、必要に応じて計画を見直す予定です。
これは、第三セクターの経営を単年度の決算だけで判断するのではなく、中期的な目標と定期的な評価によって管理しようとする取り組みです。
2026年の第三セクターをめぐる動向は、大きく次の3つに整理できます。
1. 経営改善が難しい法人の整理・解散・事業承継。
2. 自治体による出資法人の経営健全化と財政リスクの管理。
3. 公共サービスを維持しながら民間の経営能力を活用する新しい官民連携への移行。
今後は、従来の第三セクター方式だけでなく、PFI、指定管理者制度、コンセッション方式などを含め、事業に適した運営方式を選択する動きが重要になると考えられます。
第三セクターを評価するときに確認したい5つのポイント
第三セクターの経営状態を判断する場合、単純な黒字・赤字だけでは不十分です。
特に自治体や住民が確認したいのは、次の5項目です。
① 本当に地域に必要な事業なのか
交通、医療、観光、文化など、事業が地域社会に提供している公共的価値を確認します。
② 利用者数や売上高に現実的な見通しがあるか
人口動態や観光需要、競合施設、将来の利用者数などを検証します。
③ 補助金を除いた収益力があるか
補助金を収益に計上した後の黒字だけでなく、補助金を除いた事業収支も把握します。
ただし、公共サービスの対価として正当な補助金まで一律に排除する必要はありません。
④ 自治体の財政リスクが明確になっているか
出資金、借入金、損失補償、債務保証、追加支援の可能性を確認します。
⑤ 経営改善や撤退の判断基準があるか
改善目標、評価期限、事業縮小や解散の条件が明確であることが重要です。
この5点が整っていれば、第三セクターの事業価値と財政負担を分けて評価しやすくなります。
【第三セクターに関するよくある質問(FAQ)】
Q1:第三セクターとは簡単にいうと何ですか?
第三セクターとは、自治体などの公的機関と民間企業が出資して設立する法人、またはその事業方式です。公共性の高い事業に民間企業の経営ノウハウを取り入れることを目的としています。
Q2:第三セクターとPFIの違いは何ですか?
第三セクターは自治体と民間企業が同じ法人に出資して事業を運営する仕組みです。一方、PFIは民間の資金や技術力を活用し、契約に基づいて公共施設の整備や運営を行う事業方式です。自治体との資本関係やリスク分担の仕組みが異なります。
Q3:第三セクターが赤字になると税金で補填されますか?
必ずしも自動的に補填されるわけではありません。ただし、自治体が補助金を交付したり、追加出資を行ったり、損失補償・債務保証を設定している場合は、自治体の財政負担につながる可能性があります。契約や支援内容の確認が必要です。
Q4:第三セクターの赤字率は何%ですか?
総務省の2024年度調査では、第三セクター等の決算判明5,926法人のうち2,352法人が経常赤字で、赤字率は39.6%でした。なお、第三セクター法人だけに限定すると39.3%です。
Q5:第三セクター等改革推進債は現在も利用できますか?
第三セクター等改革推進債は、2009年度から2013年度までの時限措置を基本とし、一定の経過措置が2016年度まで設けられた制度です。2026年現在、新たな一般的な利用制度として継続しているものではありません。
Q6:第三セクターには成功事例もありますか?
あります。代表例の一つが、地域連携によって利用者を増やし、2019年度に単年度黒字を達成したひたちなか海浜鉄道です。公共サービスの維持と利用促進を両立させた事例として知られています。
まとめ:【プロの結論】第三セクターは公共性と経営責任の両立が鍵
第三セクターは、自治体と民間企業が共同で事業を運営し、公共サービスと民間の経営能力を組み合わせる仕組みです。
地方鉄道、観光施設、地域開発、医療・福祉など、民間企業だけでは十分に担いきれない事業を支える役割を果たしてきました。
一方、2024年度の総務省調査では、第三セクター等の決算判明5,926法人の経常赤字率が39.6%となり、補助金、借入金、損失補償・債務保証を通じた自治体との財政的な結び付きも明らかになっています。
特に押さえておきたい数字は次の4つです。
- 経常赤字法人率:39.6%
- 自治体からの補助金収益計上額:8,310億円
- 自治体からの借入金残高:3兆4,397億円
- 損失補償・債務保証残高:1兆9,360億円
ただし、第三セクターを一律に失敗した仕組みと評価するのは適切ではありません。
ひたちなか海浜鉄道のように、地域の需要を捉え、自治体・民間企業・住民が連携することで経営改善を実現した事例もあります。一方、生野銀山のシルバー生野のように、民間株主の撤退を契機として運営主体を変更する事例もあります。
【プロの結論】
第三セクターの本当の評価基準は、黒字か赤字かという一点ではありません。
重要なのは、次の3つです。
1. 公共的な価値: 地域住民にとって必要なサービスを提供できているか。
2. 経営の持続可能性: 補助金や追加支援に依存しすぎず、長期的に運営できるか。
3. 財政の透明性: 自治体の出資、借入金、損失補償などのリスクが明確になっているか。
2026年以降は、人口減少、物価上昇、施設の老朽化、人手不足などが第三セクターの経営に影響し続けると考えられます。
自治体には、事業を存続させることだけを目的とせず、改善、再編、民間移管、解散を含めて最適な運営方法を選ぶ姿勢が求められます。
第三セクターは、地域の公共サービスを守るための有効な選択肢です。しかし、その価値を持続させるには、公共性を理由に経営責任や財政リスクを曖昧にしないことが欠かせません。