【FODと視聴率の現在】テレビ局からコンテンツ企業への転換は進んでいる?

目次

フジテレビが広告収入への依存を減らすために力を入れているのが、動画配信、映画、アニメ、海外向けコンテンツ販売である。その中心にあるのが、動画配信サービスのFODだ。

FODの売上は前年同期比約54%増

フジテレビ現在

2026年9月25日の社長会見では、FODの売上が前年同期比で約54%増加したことが明らかになった。

成長の背景には、次のような要素がある。

  • F1中継の開始による有料会員の増加。
  • 配信プラットフォーム向けのコンテンツ販売の拡大。
  • デジタル事業における収益基盤の強化。
  • フジテレビが保有する番組や作品の二次利用。

また、FODの会員数は2026年8月末時点で過去最高を更新した。売上と会員規模の両面で成長している点は、再生を進めるフジテレビにとって大きな材料だ。

ただし、公式会見で公表されたのは前年同期比の売上成長率と会員数の過去最高更新であり、会員の絶対数や具体的な売上金額は示されていない。数字を推測して会員数を断定することはできない。

FOD SHORTは海外13の国・地域に進出

2026年10月7日には、縦型ショートドラマアプリ「FOD SHORT」の海外展開が発表された。

2026年4月にアメリカとカナダ、8月に英国へ進出し、10月には台湾、香港、マカオ、シンガポール、マレーシア、タイ、ミャンマー、インド、フィリピン、ブルネイでも提供を開始。これにより、海外展開先は13の国・地域となった。

フジテレビは今後、100カ国以上へのサービス拡大を目指している。現地の視聴データを作品開発に活用するほか、海外制作会社との共同制作や日本発IPの海外展開支援も構想に含まれている。

なお、FOD SHORTはFODの通常の動画配信サービスとは異なる縦型ショートドラマ専用アプリである。両者を混同せず、配信事業の成長を複数のサービスから評価する必要がある。

フジテレビの視聴率は回復しているのか

視聴率については、すべての時間帯で一律に好調になったわけではない。

2026年4~6月期のゴールデン帯の世帯視聴率について、ビデオリサーチ調べの関東地区データを紹介したマイナビニュースによると、フジテレビは4.5%で在京局5位だった。テレビ東京の4.7%を下回り、前年同期から0.9ポイント低下している。一方、個人全体では2.9%で、テレビ東京の2.8%を上回った。

この結果からは、ゴールデン帯の視聴者獲得に課題が残っていることが分かる。広告回復が進んでも、番組を見てもらえるかどうかという競争は別に存在する。

一方、2026年9月の社長会見では、好調な番組やスポーツ中継の実績も紹介された。

  • 『めざましテレビ』第2部:コア視聴率で2026年8月まで18カ月連続、同時間帯の横並び単独トップ。
  • FIFAワールドカップ2026・ブラジル戦:個人視聴率8.2%、コア視聴率7.9%。
  • バレーボールアジア選手権2026男子:平均個人視聴率7.1%、コア視聴率4.9%。
  • キリンチャレンジカップ2026・ウルグアイ戦:個人視聴率5.9%、コア視聴率5.2%。

特にスポーツ中継は、リアルタイムで視聴する価値が高く、テレビ広告との相性もよい。FODによる配信と地上波中継を組み合わせることで、コンテンツの収益機会を広げられる。

フジテレビの視聴率を評価する際は、ゴールデン帯の平均値だけでなく、個人視聴率、コア視聴率、番組ごとの支持、配信での視聴状況を分けて見ることが重要だ。

【ガバナンス改革の実態】清水賢治社長は何を変えたのか

2026年のフジテレビを理解するうえで、清水賢治社長による経営改革は避けて通れないテーマである。

清水氏は問題発覚後の2025年1月28日にフジテレビ社長に就任し、再生・改革プロジェクトを率いてきた。改革の中心に置かれているのは、人権尊重、経営監督機能の強化、社内のコンプライアンス意識の改善である。

取締役会を小規模化し、社外の監視機能を強化

2026年3月27日の社長会見で清水社長は、1年間のガバナンス改革について説明した。

主な変更点は次の通りだ。

  • 取締役会の人数を従来の半分以下に縮小。
  • 女性取締役の比率を30%以上に引き上げ。
  • 独立社外取締役を過半数とする体制に変更。
  • 各セクションにコンプライアンス・オフィサーを設置。
  • コンプライアンス委員会とサステナビリティ経営委員会を設置。
  • 外部の人権専門家や人的資本経営の専門家を組織運営に参加させる。

これらは単に取締役の顔ぶれを変えるだけの改革ではない。社内だけで判断を完結させず、外部の視点から問題を発見し、経営判断を監督する仕組みをつくる狙いがある。

2026年3月には8つの強化策の進捗を公表

フジテレビとフジ・メディア・ホールディングスは、2025年4月に公表した再生・改革の具体策について、定期的に進捗状況を開示してきた。

2026年3月31日の公表資料では、次のような取り組みが紹介されている。

  • ジェンダー課題に関するコンテンツ発信と学習プログラムの実施。
  • 制作会社や芸能事務所などとの対話を通じた制作現場の改善。
  • AI企画書評価ツールへのコンプライアンス違反やけがのリスク項目の追加。
  • グループ通報窓口の周知状況の調査。
  • 被害者救済メカニズムの実効性の検証。
  • デジタル戦略統括室の新設によるAI・DX投資とデジタルガバナンスの強化。

これらは制度面だけでなく、企画段階からリスクを検証し、被害が発生した後の対応を改善するための仕組みづくりでもある。

制度改革と組織風土の改善は別の問題

ただし、取締役会や委員会を整備すれば、社内の問題がすべて解消されるわけではない。

2026年3月18日に開かれたサステナビリティ経営委員会の外部アドバイザリーボードでは、清水社長から社内の意識改革は進んでいる一方、人的資本経営には課題が残り、心理的安全性の高い組織を実現する必要があるとの問題意識が共有された。

この指摘は重要だ。社員が問題を感じたときに上司へ意見を伝えられるか、不利益を恐れずに通報できるか、経営陣に都合の悪い情報も適切に共有されるか。こうした日常的な行動の変化こそ、ガバナンス改革が実際に機能しているかを測る材料になる。

フジテレビの改革は、経営制度の変更から組織文化の変革へと重点が移りつつある。しかし、社員が安心して働ける環境が定着したかどうかは、今後も継続して確認する必要がある。

【フジテレビの今後と将来性】2026年以降の経営方針はどう変わる?

フジテレビは従来の地上波放送中心の経営から、IP・コンテンツを軸にした事業モデルへの転換を進めている。

2026年5月12日、フジ・メディア・ホールディングスは今後5年間の経営指針となる「グループビジョン2026-2030 Ver.1.0」を発表した。フジテレビも新しい企業理念を策定し、経営改革と事業成長を結びつける方針を示した。

2030年度に向けた経営目標

グループビジョンで掲げられた主な目標は次の通りである。

  • 2030年度のROE目標:6%
  • 2030年度のメディア・コンテンツ事業営業利益目標:350億円
  • 2033年度のROE目標:8%
  • 2033年度のメディア・コンテンツ事業営業利益目標:450億円

目標達成に向けて、映画やドラマ、アニメなどの制作力を強化し、国内外での配信・販売を拡大する計画だ。番組制作費とは別枠で合計500億円を投じ、2025年度の実績から540億円の営業増益を目指す方針も示された。

ここで重視されているのは、作品を制作して地上波で放送するだけではなく、配信、映画、イベント、海外販売など複数の経路で収益を生み出す仕組みである。

都市開発・観光事業の外部資本導入も検討

フジ・メディア・ホールディングスは、都市開発・観光事業への外部資本導入も検討している。

これは不動産や観光関連の事業を含むグループ全体の資本構成を見直し、メディア・コンテンツ事業とその周辺領域に経営資源を集中させる狙いがある。

2026年6月の社長会見では、外部資本導入について多数の事業会社やファンドから問い合わせがあると説明された。手法、規模、時期については企業価値と株主共同利益を踏まえて検討するとしている。

2027年にはテレビ広告の取引基盤も変わる

2026年10月13日には、フジテレビ、日本テレビ、TBSテレビの3社がテレビ広告取引基盤「Ad Reach MAX」を運営する新会社への出資を発表した。

新会社は2027年2月の事業開始を予定しており、データやテクノロジーを活用して広告枠の購入や効果検証を高度化する計画だ。フジテレビのシステム接続は2028年春頃を予定している。

この取り組みは、従来のタイム広告やスポット広告に加え、テレビ広告をデータに基づいて柔軟に販売する仕組みを整えるものだ。スポンサー企業にとって広告効果を評価しやすくなれば、テレビ広告市場全体の競争力向上にもつながる可能性がある。

将来性を判断するための4つの基準

フジテレビの将来性は、次の4つの観点から評価すると実態を把握しやすい。

1.放送収入が継続的に回復するか

第1四半期の広告収入は事案前の水準に近づいた。しかし、これが一時的な回復ではなく、通期の売上と利益に反映されるかが重要だ。

2.FODなどのデジタル事業が成長するか

FODの売上増加やFOD SHORTの海外展開は前向きな材料だ。今後は会員の継続率、収益性、海外での作品販売なども評価対象になる。

3.ガバナンス改革が現場に定着するか

外部取締役や委員会の設置だけでは不十分だ。内部通報の実効性、被害者救済、社員の心理的安全性、経営陣への適切な情報共有が継続して機能するかが問われる。

4.視聴者とスポンサーの信頼を維持できるか

話題性のある番組や映画を生み出す力に加え、企業としての透明性と説明責任を守れるかが、長期的なブランド価値を左右する。

業績の数字だけで判断するのではなく、コンテンツの競争力、組織改革、広告主との関係を合わせて評価することが必要だ。

【フジテレビの現在】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:2026年現在、フジテレビは経営危機から脱したのですか? A1:広告収入は大幅に回復し、2027年3月期第1四半期にはフジテレビ単体も黒字化した。ただし、2026年3月期は325億1,500万円の営業損失を計上しており、年間を通じた経営再建が完了したとはいえない。

Q2:フジテレビのスポンサーは現在どのくらい戻っていますか? A2:2026年1月のスポンサー数は前年同月比93%。また、6月の社長会見ではネットタイム広告が事案前の水準を超え、スポット広告も97.4%まで回復する見込みと説明された。指標や比較時点によって数字は異なる。

Q3:FNS27時間テレビは2026年も中止になったのですか? A3:2026年は放送されなかった。5月11日にスポニチが放送断念を報道し、スポンサー確保や制作費、人員配分などを背景として伝えた。ただし、翌12日に清水社長は放送について未決定と説明しており、公式な見送り理由の詳細発表とは区別する必要がある。

Q4:中居正広氏の問題で第三者委員会は何を認定しましたか? A4:2025年3月31日の報告書では、2023年6月の事案について性暴力と認定し、フジテレビの業務の延長線上で発生したと評価した。また、当日の会合に誘った行為へのフジテレビ社員の関与は認めなかった一方、会社側の事後対応や人権問題への認識を厳しく批判した。

Q5:フジテレビの今後の成長分野は何ですか? A5:FODなどの動画配信、映画、アニメ、IPの海外展開、スポーツコンテンツ、広告取引のデジタル化が中心となる。2030年度にメディア・コンテンツ事業の営業利益350億円を目指す経営計画が公表されている。

まとめ:フジテレビの現在は再生の途上、信頼回復が最大の課題

2026年11月現在のフジテレビは、2025年の危機的状況から業績面で明確な回復を見せている。2026年1月にはスポンサー数が前年同月比93%となり、6月にはネットタイム広告が事案前の水準を超え、スポット広告も97.4%まで戻る見込みが示された。

さらに、2027年3月期第1四半期にはフジテレビ単体が黒字化し、FODの売上も前年同期比約54%増となった。海外展開や映画・アニメ事業の強化など、地上波広告に依存しない経営モデルへの転換も進んでいる。

しかし、2026年3月期のフジテレビ単体の営業損失は325億円を超えていた。スポンサーの回復、デジタル事業の成長、視聴率の改善、ガバナンスの実効性など、解決すべき課題はまだ残されている。

【プロの結論】 フジテレビの再生を評価するうえで最も重要なのは、広告収入が戻ったかどうかだけではない。第三者委員会が指摘した人権問題への対応や組織風土が本当に変わり、社員、出演者、スポンサー、視聴者から継続的に信頼される企業になれるかどうかである。

次の大きな確認材料は、2026年11月6日予定の2027年3月期第2四半期決算だ。上期の広告回復が利益に結びついたか、デジタル事業の成長が続いたか、そして経営改革が数字と組織の両面で成果を上げているかが注目される。

かつてのテレビ局としての強みを残しながら、信頼を基盤とするコンテンツ企業へ生まれ変われるのか。フジテレビの本当の再生は、これからの経営判断と現場の変化によって証明されることになる。